#7 獣人村の謎
「ちょっ、まじで速いって」
「はやくー! お兄〜ちゃん!」
軽い足取りで急な斜面を登っていくミミィ。
そしてゼェゼェ息を切らしながら進む、僕、ジン・カシロ。
「うわあーーー!」
山の頂上まで辿り着き山下の景色を眺める、ミミィは笑顔をだった。
後からのしのしと辿り着いた僕も景色を眺めた。
「ここは……」
僕たちの山の麓には小さな村があった。
ついにミミィの村に着いたと思いきや、違うらしい。
あの村は、このドノウ大森林にある獣人族の村のうちの一つ、ミミィの村とは別物らしい。
はやくはやくと、嬉々としたミミィが僕の腕を引きながら山を下る。
突然、ミミィは木の根に足をつまずかせ二人の態勢が崩れた。
そしてコロコロと加速しながら、僕たち二人は山の麓へ転がって行った。
ドスんと大木に当たり、二人は止まった。
頭を抱えながら起き上がり、服についた埃を払った。
この服も、もう寿命かな? 数少ない地球から持ってきたもので随分思い入れがあるのだが、激しい動きのせいかビリビリに破けてしまっている。
ミミィを起こして、もう、すぐそばにある村に入ろうとする。
そこには簡易的なもんみたいなものがあり、門を行った先には獣人が顔を出していた。
軽く会釈をして門をくぐると、どこからか鐘の音がなった。
すると、その音を聞いた村人は一斉に家に帰って行った。
ぽかんとしながらも「すみませーん」と、声をかけるが誰も答えやしない。
村の大きな道の奥にある屋敷に訪ねてみようと向かうことにした。
もしかしたら、何も言わずに村に入るのは非常識だったのかもしれない。
しかし、この手の村に住んでいるというミミィも何も言わない。疑問を感じつつも進み続けた。
道の途中で一人の子供とその母親と見られる人がいた。
母親は子供を抱きしめながら地面に腰をかけていた。
その母親と目が合うと、すぐに逸らされた、かなり此方を警戒しているように見える。
ある時子供が母親の手を潜り抜け此方に向かってきた。
僕は歓迎するように笑った。
そしてその子供に抱かれると思いきや、僕を押し倒した、そしてミミィの前で大きく手を広げた。
僕はその予想外の行動に、お前の教育どうなってんだ、という思いに蓋をしながら母親を見つめた。
母親は自分の息子のした行動に嘆き悲しんでいるように見えた。
そして当の子供は、僕に怒りを露わにしていた。
周りをよく見渡してみると、皆僕を見ている。その目は怯える反面、怒りに震えていた。
どうしてそんな目で見るんだ? 僕は何もしていないはずだ。なんで、なんでだ。
するとその子供(少女)が
「この子をいじめないで!」
泣き叫びながらそう言った。
何を言っているんだ、ミミィをいじめる? 保護したの間違いだろ?
「僕はミミィを虐めてなんていないよ」
優しくそう言うと。
「嘘をつかないで。この傷は貴方がつけたんでしょ。人間はみんなグズなことぐらい知っているんだから」
人間がグズ? それはどういうことだ。
それにこの傷はミミィが自ら転んで負った傷だし、僕も巻き込まれたぐらいだ。
「それは誤解だよ」
そう誤解だ。
しかし少女は聞く耳を持たず、爪を立てて僕を引っ掻いた。
そのものに痛みは感じなかったが、なんだろう魂からの叫びを受けた感じだ。
「人間なんて大っ嫌い! みんな酷い事を……」
「お兄ちゃんはそんなことしない」
打ち消すように言った。それはミミィだった。
明らかにいつもと違う、ガチトーンだった。
少女は想定外のことを言われたのか、唖然としていた。
「頭までおかしくされちゃったの? やっぱり人間はグズ!」
「わたしの頭はおかしくないし、おかしくされてない」
「えっ?」
「おかしいのは、君だよ初対面で急にお兄ちゃんを蔑んで」
「だって、人間は……」
「他がそうでもお兄ちゃんは違う!」
僕も流石にこれは想定外だ、あのミミィでもこんなに怒ることもあるなんて。
「まあ、落ち着けミミィ」
「ねえ、君。僕は異世界の人間がどういう奴らなのかは知らないが、ミミィの言う通り潔白だ。それに僕は強靭な獣人族をどうこうできるほど強くはない」
少女は、身の潔白を証明した僕に何も言えないのか一歩引き下がった。
しかしまだ臨戦態勢にある。
いったいこの村では何が起こったんだ?
そこに一人の老人がゆっくり此方に歩みよってきた。
その風格からおそらく長老だろう。
「まあ、落ち着きなさいアサキ」
アサキ? ずいぶん日本風の名前だ。
そして長老は僕らを家へ招き入れた。
寿司食べます!