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#4 生き別れの「妹さん」?



 「お兄ちゃん! 久しぶり!」


 可愛らしい少女が僕の胸に飛び込んできた。


 「久しぶり!……?」


 誰だコイツ?

 まさか僕に生き別れの兄弟が⁈

 そんな訳ない。


 「ごめん、君誰?」

 「わたしだよ、わたし、あなたの妹のミミィ」

 

 そういい、僕を上目遣いで覗き込んできた。

 攻撃力は絶大。しかし僕はロリコンでもシスコン(妹いない)でもない、精神の一本の針金はそう簡単には歪まない。


 「まずは、種族の壁を破ってからきな」


 ぽんっと、頭に手を置いた。小さい子は無性に頭を撫でたくなる。


 獣人族的な奴なのか頭からは猫耳が生えていた。よく見ると尻尾もある。

 しかし、何日ぶりだろう、人間の姿した生き物を見たのは。


 「で、君はどうしたの?」

 「待って、その前にお兄ちゃん名前なんだっけ?」


 妹詐欺を突き通したいんだったら、素直に聞くなよ……。


 「えっと、僕は神代じn……」


 名前を言いかけたところで口を止めた。

 そうだ、ここでは僕の名前は


 「ジン・カシロ、って言う名前だよ」

 「なんか変わった名前だね」 


 こっちからするとミミィの方が変わっている。

 というか、疑問だが普通に話せてしまっている。言語とは?

 まあ、異世界に来た数少ない特典ということにでもしておくか。

 あとでヘルサに聞くが。


 「で、どうしたの?」

 「いや、特にお兄ちゃんに会えて嬉しいな、て思っただけ」


 と言うと共に、彼女の腹がグルルと音を立てた。

 

 「えへへ」


 彼女はほんのり顔を赤くさせて、後ろ髪をぽりぽり掻いた。


 「しょうがない、カエルしか無いけど文句は言うな」


 と告げると、ミミィの顔はやった! と言わんばかりの満面の笑みを浮かべた。


 そこら辺にいたカエルを仕留めて、内臓を取り出し、普段より柔らかく炙って与えた。


 するとミミィ我を忘れて食らいつき、途中途中においしいを連呼していた。

 

 そうやって言われるのも悪くは無い。


 たった数秒で食べ終わり、もっと食べたいと伝えるように僕をじっと見つめた。

 それに何故か逆らえなかった。


 やむを得ず、開発中のカエル干し肉をあげた。

 結局、食料全てを平らげられてしまった。

 全くよく食う娘だな。


 「じゃあ僕はここで」

 

 と言い、その場を立ち去ろうとする僕に、ミミィは僕の服を引っ張った。

 そして目をキラキラさせてこちらを見つめた。

 

 「こんなに可愛い妹を置いてくの?」

 「ぐっ、」

 「あのな、第一僕は君の兄ちゃんでも家族でもない、それに本当に可愛い奴なら自分のこと可愛いって言わないから」


 そう告げると、ミミィの手を振り払った。


 「わからないじゃん。この世界に生きている限り生命は皆兄弟だよ」

 「知らないよ、そんなこと言ったら君さっき、弟食べたことになるけど、それに僕はこの世界の……」


 この世界で生まれた訳じゃないと言い掛けたがやめた、こういうのは言わない方が良いという暗黙のルールがある。


 「そういうことだ、それじゃ」


 そしてその場から離れようとしたが、ずっとついてくる。


 「どうして付いてくるんだ?」

 「……だって」


 ミミィは瞳をウルウルさせていた。


 「僕は君のためを思っているんだ、君が付いてくるメリットなんてないぞ」

 「実は……」


 あれ? たった今否定したはずなのになんか話始めてるぞ?


 「わたし、みんなと逸れちゃったの」

 「は、はぁ」


 ミミィは僕をチラチラ見ながら泣き真似をしていた。流石に白々しい演技なので見透かしてしまった。


 「ごめん、僕は今ギルドに向かってるから、路線を変える訳には言わないんだ」


 しかし、ミミィの表情はパァー! っと明るくなった。

 なにか言ってはまずいことを言った気がする。


 「わたしの村もギルドの近くなの!! これでメリットはできたね!」

 「はぁ……」


 深いため息をついた。

 認めざるを得ないか……。


 「わかった、着いてきたいんだったら勝手にしな」

 「やった!」


 

◇◇◇◇



 「仲間にするにあたって、君の素性をはっきりさせておかなきゃな」


 しかしそれを聞いてミミィは頬をぷーっと膨らませた。

 まじで何考えてるかわからん。


 「ちゃんとわたしにはミミィって名前があるのだからミミィって呼んで!」

 「ごめん、ミミィね、ミミィ。で、さっきのことなんだけど」

 「ああ! えっとわたしの名前はミミィ! えっと、獣人族の12歳! えっーと得意なことは食べること、苦手なことは運動と勉強と魔法!」


 この世界の12歳の精神年齢は地球の5歳くらいなのか? 申し訳ないが少し馬鹿じゃないのか?

 運動、勉強、魔法、この世界の大切な三つのことをコンプリートしているじゃないか。


 「困ったな、勉強、魔法はまだしも、運動ができないとなると……。獣人族は運動得意な種族じゃないのか?」

 「そんなのただの偏見だよ」

 「自分で言うのもあれだが、僕は結構運動得意な方なんだ。……そうだ試しにミミィは運動どれくらいできるのか見せてよ」


 そう得意気に語った。


 「……笑わないでよ」

 「大丈夫だって」


 ……絶対笑ってやろ。大声で。


 そしてミミィは腰を引くして、ピョンっと飛び跳ねた。

 ……まだ空中にいる。

 そしてミミィは大きな木の、枝に着地した。

 その後、恥ずかしそうにしながら僕のところへ降りてきた。

 

 …………はっ?

 コイツ嘘ついただろ、絶対、おかしいって。


 「どうだった……?」

 「ミミィさん、冗談きついっすよホントは得意なんでしょ……」


 その反応をした僕にポカンとした表情を浮かべた。


 「お世辞はいいよ〜。わたし村で子供たちに落ちこぼれって言われてたんだよ」


 この世界の運動能力水準高すぎぃ!


 「そんなことより、ジンくん? あなたの運動能力見せて欲しいなー」

 「いや、ちょっと」

 「欲しいなー」

 「……….」

 「ほしーな」

 「……」


 異世界コワイ。日本カエリタイ。

 

 



 

 

 



 

明日痛い

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