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#2 Reムセンから始める異世界生活


 「ガチでやらかした!」


 僕はこの異世界生活初の重要な失態を侵してしまった。


 真っ暗だった洞窟に、朝日が照らし込んでいた。

 目をパチパチと瞬きをさせて、目を薄くして空を見上げた。


 それでは本題に移るとしよう。

 僕の侵した失態とは……

 スマホの電源を全て使いきってしまった。

 おそらく、昨日使ったライト機能を付けっぱなしにしてしまったのだろう。

 

 スマホはインターネットが繋がっていなくても、沢山のサバイバルに役立つ機能がある。それを全て、たった一夜に使い切ってしまった。

 さっそく自分の首を自分で締めてしまった。


 スマホがない今、これからはただのサバイバル生活が始まる。

 目的は100km先の冒険者ギルド。

 

 さて、切り替えて朝食を食べるとするか、しかし朝食を調達した訳ではない。

 なにを食えばいいのか、なにを食べてもいいのか、異世界にいる今、地球で培った知識も意味をなさない。

 しかし、僕の手元には食べてもいいと確実にいい切れるものがあった。

 それは僕の給料、そう、イクラだ。


 まさかイクラがこんな所で役に立つとは、店長、実はいい奴だったのかもしれない。(多分そんなことない)

 給料袋には、イクラが詰め込まれていたが、多くは潰れていた。まあ仕方がない。


 イクラというものは、それそのもので食うものなのか? いや違うなイクラは米とセットで美味い。単品だと、味がちと濃いものだ。

 

 僕は封筒の中のイクラを、口に流し込んだ。

 ついには、イクラがなくなってしまった。

 

 なくなってしまうと、だんだん不安になってしまう。これからなにを食っていけば良いのやら。

 

 なにも考えず、とりあえず僕は南の方へ歩き出した。




 腹が減った、それに疲れた。これは僕の望んでいた冒険とは違う、もっと心躍る冒険があると思っていた。腹は鳴るが……。


 すると足元にウシガエルのふた周り程の大きさのカエルが現れた。


 たしか、カエルって中国とかでは普通に食べるんだよな……。

 曖昧な知識を頭に浮かばせ、よだれを垂らした。

 めっちゃ食いてえ、筋肉ぶりぶりやん。

 体型だけ見れば、それはもう美味そうに見える。

 ただ、色が……なんかカラフルでクレイジーな色をしている。自ら自分、猛毒持っているよ感を醸し出している。

 でも、人は外面で判断してはいけないってお母さん言ってたし。

 よし食うか、捕まえて、食うわ。


 「そこ、動くなよ」


 手でカエルを囲み、パッとカエルを捕まえる作戦だ……。


 見事に失敗した。

 終いには、カエルに後ろ足で蹴られて、ウンコしてかれた。

 しかも、これが臭いんだわ。まじなに食ったらこうなるんだよ。今にも鼻が曲がりそうだ。

 腹立つカエルだな、ちょっと賢いからって調子に乗りやがって。

 だが人間というもの、一度した失敗はもう2度としない……次会ったらまじでしばいてやる。


 「ヘルサあいつの名前なんていうんだ?」


 逃げ去っていくカエルを指指して言った。


 『ウルグルログム、ト呼バレル、カエルデスネ、知能ガ低イ動物トシテ、ヨク挙ゲラレル動物ノ一種デス』

 「また、僕のこと煽ってんの?」


 「まあ、いいや。とりあえず、そいつの名前ウンコバカエルに変えとけ」

 『了解シマシタ』

 「……」

 「…………嘘だよ、じょーく、じょーく」


 コイツめんどくさい奴だ、冗談との区別がつかない場の空気を壊しがちなタイプだ。

 

 そして一歩踏み出そうとすると、足がずるりと地面に埋まった。

 よくみると地面が柔い。

 まさか、ここ、沼地なのでは?


 沼地と言ったら! カエル!

 つまり、あのウンコバカエルがいる可能性が高い。

 ふ、ふふふ。カエル如きが人間を苔にしたことを後悔するといい。

 カエル如きに一方的に火花を散らす仁であった。

 

 見つけた! 

 間違いない、ウンコバカエルだ。

 ウンコバカエルは数匹かで集まっていた。

 

 服をぬぎ、布を広げるように手に持った。

 今度は服を網代わりにして捕まえる作戦だ。

 僕はカエルの集団に飛びついた、それに気づいた多くのカエルは逃げて行ったが、中心にいて逃げ遅れたカエルを捕まえることができた。

 そして布の隙間に手を入れて、カエルを鷲掴みにしてやった。

 異世界に来て以来の食糧確保!

 カエルはゲコゲコと泣き叫んている。

 僕はテレビで取材されていた、先住民の動きを思い出しながら、その辺にあった枝をカエルの後ろから刺し殺した。

 ……流石に抵抗はあった。


 『チロリン♪

 レベルガ1カラ2ニ上ガリマシタ』


 愉快な音と共にそう告げられた。

 レベルだって⁈


 「レベルなんてシステム、この世界にあったのか⁈」

 『ハイ、レベルトハ生キ物ヲ殺シタ経験値ヲ数値化シタモノデ、上ガルニ連レテステータスガ上昇シマス』

 「ステータス上昇ね……」


 よかった。このシステムが無ければただの遺伝子ゲーやん、と薄々思っていたが、やはりそれだけじゃないよね。

 ほっ。少し安心した。


 ということはレベルが高ければ、魔法が使えなくても多少ゴリ押しができるのか。

 よし、決めた。今日はここでレベル上げをしよう。


 腹も減ったしとりあえず、このカエル食べるか。

 僕は棒に突き刺さったカエルにかじりついた。

 表面はぬるぬるしている調理前のイカみたいだ。

 中身は、やばい、苦いし不味いし。

 でもこれもサバイバル仕方がない。


——数分後


 腹を壊した。下痢が止まらない。あと、嘔吐も。

 身体のもの全部出し切った気がする。

 

 僕はアホなのか? ばかなのか?

 普通、食べ物には熱を通すだろ。

 現在、火が扱えないにしても臓器くらいは取り出すモノだろ。

 骨ごとも食わないだろ、

 普通は洗うだろ。

 過去の自分の行動にツッコミを入れると、共に後悔が積もった。

 日本の食べものって綺麗なんだな。

 お陰でより腹が空いた。


 やはり、サバイバルで重要なのは「火」か。

 火属性の初級魔法とか、そう言ったお手軽な魔法はあるのだろうか。


 「ヘルサ〜。火属性の初級魔法的なライター代わりになるようなものないの〜?」

 『ソウデスネ、コレナンテドウデショウカ? 「ロウヒート」トイウ、火属性最弱魔法デス、比較的、取得難易度ガ低イデス。是非魔力ヲ溜メテヤッテミテワ?』

 「なるほどな……」


 すぐそこにあった比較的小さめな気に、手のひらをぺたんと付けた。

 そして、


 「『アブゾーブ』っっ!」


 と、詠唱した。

 するとゆっくりだが、だんだん木の太さが縮まって、枝ほどの大きさになってしまった。

 こうみると、恐ろしい魔法だな。

 やっていることは地味だが、それとは裏腹に生命の危険を秘めている。

 痛みを感じず、ただ魔力がなくなり、苦しみながら死んでいく。考えただけで鳥肌が立つ。


 「魔力を貯めたことだし。使ってみるか」

 

 魔法を使う時をイメージをしてポーズをとった。


 「たしか、『ロウヒート』? だったよな」


 そう言うと、手に少しだけ離れた所に火の玉が出現した。

 急いで燃料を入れなくては。

 態勢を崩さないように先程カエルに使った枝をその玉に、近づけて発火させた。

 それと同時に魔力は底をつき、『ロウヒート』は消えた。

 さらに、その火を保つため、燃える木の棒を手に持ってまま、足で枝や枯れ葉をかき集めた。

 集めた先に、枝を投げ捨てた。

 ついにそれは炎をあげた。


 サバイバル生活2日目、人類最大の発明”火”を手に入れた。

 これで、少しは食品の衛生面的に安全になるだろう。

 

 火が消えないうちに薪を入れよう。


 しかし、魔法というものはなんて便利なのだ。

 というかなぜ、『アブゾーブ』は魔力なしでつかえるのか? まさか特殊能力だったりして。

 まあ、そんな訳ないか。


 悲しい話、僕には特殊能力なんてものないのだと思う。

 もしあるのだとしたら、とっくに気づいているだろうし。

 くぅー! アニメとかで見るとんでも能力欲しぃー!

 まぁ実際にはアニメなんて見たことがない、というかそもそも、家にテレビがなかった。

 全て友達が話していたことを横耳で聞いて、想像したものだ。

 なんとなくしか、理解していない。

 

 先程もやった作戦で、難なくもう一匹カエルを捕まえた。

 今度は、泥まみれの爪を立てて、カエルの腹を裂いた。

 内臓を取り出して、先程つけた焚き火でカエルを軽く炙った。

 すると、いい匂いがプンプン漂った。

 しかし、さっきのトラウマが僕の動きを妨げる。

 食べたい。でも、怖い

 ……ついに僕は、口を大きく開けた。

 そしてカエルの身に齧り付いた。

 お味は如何に?

 

 ……うまい……うまい。

 なんだこれホントにカエルか?

 さっきまでのギャップも相まってより美味しさが際立つ。

 この味を例えるなら、チキンだ。

 食感も良く似ている。

 やはり、少々塩を振りかけたいが、生きていくなら充分だろう。


 苦労して作った食品が、こうも美味いとは、病み付きになりそうだ。

 初めはただのカエルでも食品は食品。最初は誰でもそんなもんだろう。

 穴場を見つけた、ここは食糧庫。まだまだたくさんのカエルかいる。

 明日にはまた、ここに戻って来て、カエルをたくさんしてここら辺を去ろう。


 後の時間はレベル上げでもするか。

 これからの異世界生活がより有意義なものにするにはレベル上げは、基本だ。

 これが後に役立つというのなら、僕は頑張れる。知らんけど。


 今日の夜ご飯はきっとご馳走だ。

 そのためにカエルを狩まくる必要があるが。

 しかし根性なしの僕にとって、その作業は続けられるのか? できるだけ効率的にやりたい。

 だから僕は魔法を使おうと思う。しかしまたヘルサに頼るのも、なんか異世界感が抜けてしまう。

 そういうことで、僕は魔法を開発しようと思う。

 確かにこっちの方がよっぽど非効率だが、僕はそういう人間なのだということをお忘れなく。

 なにか自分だけの魔法持ってたらカッコイイし。


 ……だが碌に魔力を操れない、僕ができるのか?

 人間、考えるより先に行動に移した方がいい、と誰かが言ってたのを思い出した。

 そう言った矢先、早速考えてしまうが。

 開発している魔法はカエルの狩用だ。

 カエル狩りに必要な要素としては、より静かで、正確で、適度な威力がある、と言ったところか。そうだなできるなら、見えない攻撃の方が悟られずにいいな。

 おっと、重要な要素を忘れていた。魔力消費量が少ないのが望ましい。

 

 ようやく異世界らしくなって来た。

 そう考えるとさまざまなアイデアが頭の中に浮かび上がってきた。


 魔法についてはよく知らない。

 だが見えない攻撃だったら、風属性の魔法がめぼしい。火属性があるならきっと風属性だってあるはずだ。

 疑問が浮かんでも、決してヘルサには聞かない。なぜならここで言ってしまえばなんか、負けた気がするからだ。

 今まで撃ててきた魔法の感覚をもとに、試し打ちをしてみる。

 まあ、今まで撃てたのも3つくらいしかないんだけれども。


 すると空気中にポスっ、という音がなった。

 ……気のせいか? いやでも、聞こえたよな。

 完成の兆が見えてきた。

 同じような感覚でまた撃ってみる。


 ポスっ!


 今度ははっきり聞こえた。できたできた。

 このままでは所詮は威力は空気砲程度だろう。

 だがこれを応用していけば……魔法開発の夢は遠くない。

 後はこれに工夫を加えるだけ!


 ポスっ! ポスっ! ポスっ!


 何度も音を上げた。

 少しずつだが、なんとなく良くなっている気がする。

 しかし、ある時を境に音が鳴らなくなった。

 きっと魔力が切れてしまったのだろう。

 せっかくさっき貯めた魔力が、もうなくなってしまった。

 また木に手をつけて『アブゾーブ』と言った。

 木が枯れるのを見届けると、何かを掴んだのか、魔法の感覚が変わった。

 僕はふと思い的となるように、木をダーツの的のように掘った。

 こうすることで相手への意識を高めて、飛ばせるようにするという作戦だ。

 我ながらよく考えた思う。


 それが功を奏したのか、だんだんその的に範囲は広いが当たることが増えた。

 その範囲もだんだん縮まるように微調整されていき、中心を大きく外れるが、綺麗な点を描くようになった。

 

 パンっ! 

 ついに僕は中心を射抜くことができた。

 何度も試しても、中心に当たる。

 ついに完成した。


 僕はそれを丁度横切ったカエル目掛けて飛ばした。

 的中! 的中した、カエルは魔法に胸を貫かれて倒れていた。


 『チロリン♪

 レベルガ2から3ニ上ガリマシタ』


 最高のタイミングでレベルアップ。それは僕をさらに興奮するのに役立てた。


 魔法を作ったということは名前を命名しなくては。

 名前はそうだな……


 「『空槍(エアーランス)』なんてどうだろうか」


 「空槍」これが天才な僕が作った魔法として、いつか世界に轟く日が来るだろう。

 サイコー!

 両手を上に振り上げて、飛び上がった。

 

 異世界生活2日目、

 「僕は魔法を開発した」

 


  

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