本当の計画
お屋敷が安全ではない以上、どこかへ避難しないと……。
「フェリックス、どこかアテはある?」
「我が国へ……フィンガル王国へ逃げるしかないだろう」
ここにいては、暗殺者集団が狙ってくるかも。わたしはともかく、フェリックスは不死ではない。だから。
「急いで逃げましょう」
「……そうだな。俺も命は惜しい。自分の雇った暗殺者に殺されるなんてごめんだ」
必要なものだけ持って屋敷を出ていく。
外へ出ると、そこには暗殺者が五人もいた。全身が黒い包帯で覆われて不気味。まるで怪物みたい。
「…………」
暗殺者たちのリーダーらしき者が一歩前へ。
「……フェリックス、その女を殺すのではなかったのか」
「気が変わった。復讐なんて馬鹿な真似は止めたよ。オルタシアは、こんな俺を愛してくれている。だからもういい……暗殺はなしだ」
「そうか。だが、この計画はフェリックス、貴様も死んで成就されるのだ」
「な、なんだって!?」
わたしも驚いた。
てっきり、わたしだけが殺されるのだと思っていたのだから。
暗殺者集団は、フェリックスが雇ったものではなかったの?
注意深く警戒していると、暗殺者集団の背後から誰かが歩いてきた。
「なんだ、もう終わりかい」
「そ、その声……まさかヨハネス!!」
口元を釣り上げるヨハネスは、邪悪に笑っていた。
「ヨハネス……お前」
「やあ、フェリックス」
「これはどういうことだ!!」
「君の復讐を手伝ってやったんじゃないか」
「なに?」
「復讐、といっても……偽りの復讐だけどね」
「偽り!?」
「そうさ。お前の殺したい相手は……この僕なのだからね」
「!?」
ヨハネスは何を言っているの!
わたしも混乱していた。
だけど、次の説明でようやく全てが明らかになった。
「愚かなフェリックス、そして……オルタシアに教えてやろう!! いいか、フェリックス……貴様の一族と国を滅ぼしたのは、この僕だ!!
その嘘を吹き込んだのは、この僕。そうさ、これは全て僕の計画だったのだ!!」
そ、そんな……あの心優しいヨハネスが……。
ぜんぶ、コイツが……なにもかも仕組んで……いたの……。ショックすぎて、わたしは倒れそうになった。
「ヨハネス、貴様ああぁぁァ!!!」
「ふははははは!! 愚鈍、ぶざま……フェリックス、貴様は道化としては最高だった。良いものを見せてもらったよ。不幸とはこんなに甘く、濃密なんだ」
ニヤリと笑うヨハネス。
満足にわたしとフェリックスの不幸を祝う。……最低な男だ。
ずっと騙していたんだ。
あの時の優しさも偽り。
ずっと裏でほくそ笑んでいたんだ。
「覚悟しろ、ヨハネス。貴様を殺す」
「残念だが、相手をしている暇はない。暗殺者たちに任せるさ」
くるっと背を向けるヨハネスは、そのままどこかへ消えていく。どっちが卑怯者よ。絶対に許さない。




