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公爵令嬢オルタシアの最後の切り札  作者: 桜井正宗


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9/11

本当の計画

 お屋敷が安全ではない以上、どこかへ避難しないと……。


「フェリックス、どこかアテはある?」

「我が国へ……フィンガル王国へ逃げるしかないだろう」


 ここにいては、暗殺者集団が狙ってくるかも。わたしはともかく、フェリックスは不死ではない。だから。


「急いで逃げましょう」

「……そうだな。俺も命は惜しい。自分の雇った暗殺者に殺されるなんてごめんだ」


 必要なものだけ持って屋敷を出ていく。

 外へ出ると、そこには暗殺者が五人もいた。全身が黒い包帯で覆われて不気味。まるで怪物みたい。



「…………」



 暗殺者たちのリーダーらしき者が一歩前へ。



「……フェリックス、その女を殺すのではなかったのか」

「気が変わった。復讐なんて馬鹿な真似は止めたよ。オルタシアは、こんな俺を愛してくれている。だからもういい……暗殺はなしだ」


「そうか。だが、この計画はフェリックス、貴様も死んで成就されるのだ」


「な、なんだって!?」


 わたしも驚いた。

 てっきり、わたしだけが殺されるのだと思っていたのだから。


 暗殺者集団は、フェリックスが雇ったものではなかったの?


 注意深く警戒していると、暗殺者集団の背後から誰かが歩いてきた。



「なんだ、もう終わりかい」

「そ、その声……まさかヨハネス!!」



 口元を釣り上げるヨハネスは、邪悪に笑っていた。



「ヨハネス……お前」

「やあ、フェリックス」

「これはどういうことだ!!」


「君の復讐を手伝ってやったんじゃないか」


「なに?」


「復讐、といっても……偽りの復讐だけどね」


「偽り!?」


「そうさ。お前の殺したい相手は……この僕なのだからね」


「!?」



 ヨハネスは何を言っているの!

 わたしも混乱していた。


 だけど、次の説明でようやく全てが明らかになった。



「愚かなフェリックス、そして……オルタシアに教えてやろう!! いいか、フェリックス……貴様の一族と国を滅ぼしたのは、この僕だ!!

 その嘘を吹き込んだのは、この僕。そうさ、これは全て僕の計画だったのだ!!」



 そ、そんな……あの心優しいヨハネスが……。


 ぜんぶ、コイツが……なにもかも仕組んで……いたの……。ショックすぎて、わたしは倒れそうになった。



「ヨハネス、貴様ああぁぁァ!!!」


「ふははははは!! 愚鈍、ぶざま……フェリックス、貴様は道化としては最高だった。良いものを見せてもらったよ。不幸とはこんなに甘く、濃密なんだ」



 ニヤリと笑うヨハネス。

 満足にわたしとフェリックスの不幸を祝う。……最低な男だ。


 ずっと騙していたんだ。

 あの時の優しさも偽り。


 ずっと裏でほくそ笑んでいたんだ。



「覚悟しろ、ヨハネス。貴様を殺す」

「残念だが、相手をしている暇はない。暗殺者たちに任せるさ」


 くるっと背を向けるヨハネスは、そのままどこかへ消えていく。どっちが卑怯者よ。絶対に許さない。

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