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公爵令嬢オルタシアの最後の切り札  作者: 桜井正宗


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8/11

猛毒の紅茶

「何者だとか、どうでもいいわ。そんなことより、今後のことを考えましょう。復讐だとか過去のしがらみだとか……そんなものは水に流してゼロからやり直すの」


 そう提案するとフェリックスは、地面に膝をつけて項垂れていた。


「オルタシア……君には敵わないな」

「考えを変えてくれた?」


「あぁ、分かった。君を殺せないのなら……諦める」


 良かった。フェリックスは話せば分かる人だと分かっていた。もう一度やり直せる。


 屋敷の中へ入って広間に腰掛けた。


 紅茶を淹れてくれるフェリックス。


 その表情は穏やかで、もう殺意はなかった。


「ねえ、教えてフェリックス。わたしを愛してる?」

「ああ……君を愛している。俺が間違っていたんだ……なにもかも」



 カップを手に取り、わたしは紅茶を飲んだ。


 その時だった。


 急に吐き気がして……寒気がした。



「……フェリックス、紅茶になにを……」

「な、なんのことだ? 俺はなにも淹れていないぞ。……! まさか、暗殺者共が余計なことを……」


「く、くるしい……」



 猛毒と聞いて即死かと思った。けれど、最後の切り札が勝手に発動して――わたしの毒は解毒された。


 ……ど、どうして?



「オルタシア! 大丈夫かい!?」

「ありがとう、フェリックス。貴方が入れたのではないのでしょう」

「入れていない。恐らく俺が雇った暗殺者集団が勝手に動いているのかもしれない。俺のせいだ……すまない。許してくれ」


 心からの謝罪だと感じた。

 フェリックスは、もう以前のフェリックスではない。復讐から解放され、今やわたしの味方をしてくれている。

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