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公爵令嬢オルタシアの最後の切り札  作者: 桜井正宗


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2/11

切り札は何度でも

 言葉はいらない。

 必要なのは愛と憎しみだけ。


 フェリックス……。フェリックス……よくも、わたしを殺してくれたわ。


 二度と許さないけど、それでも愛し続ける。



 流れた血はやがて、わたしの中に還ってきた。魂さえも再び宿り、現世へ舞い戻ってきた。



 起き上がると、わたしは土の中だった。

 そうか、フェリックスが埋めたんだ。


 証拠隠滅というわけね。



「……今すぐ貴方の元へ」



 この場所は知っている。

 わたしのお屋敷から少し離れた場所にあるベルリオーズ庭園。その林の中。普段はあまり人が立ち寄らない場所。


 こんな場所にわたしを埋めるだなんて。


 お屋敷へ戻ると、誰かが立ち話をしていた。


 木の陰に隠れて聞き耳を立てた。



「フェリックス様……オルタシアお姉様を本当に殺したのですか!」

「ああ……ビアトリス。君の姉は死んだ。次は君もあの世に送ってあげよう」


 彼は、冷血な表情でビアトリスに歩み寄っていく。

 けれど、フェリックスは彼女の目の前で足を止めた。


「……ッ。フェリックス様、わたくしも殺すのですか」

「しかし、幸運だった。なぜなら、君は義理の妹……血の繋がりのない他人だ」


「な、なぜそれを」

「知っているさ。なぜなら君は……」



 フェリックスが何を言おうとしているのか知らないけれど、わたしはもう我慢ならなかった。



「止めなさい、フェリックス」

「――なっ! オルタシア! なぜ生きて……!」



 死人を見たかのようにフェリックスは驚いていた。そう、わたしは最後の切り札を使って死の世界から這い上がってきた。



「お姉様……生きていたのですね!」

「ええ、ビアトリス。わたしは死んではいません。その男、フェリックスに刺さ――」



 気づけば、わたしの胸にはナイフが刺さっていた。


 ……え。


 なんで……どうして、ビアトリス。



「やっぱり、お姉様には特別な力があったのですね。……お父様がおっしゃっていました。オルタシアは、切り札(・・・)を持っているって。だから、一度殺したくらいじゃ死なないって思っていました。でも、それは一度切り」



 微笑みながら、わたしを見下すビアトリス。



 …………フェリックスとビアトリスが手を取り合う。



 そう、二人とも……そういうことだったの……。



 再び意識を失うわたし。

 死んでしまった。



 でも、切り札は何度でも(・・・・)使える。



 こうなったら、邪魔なビアトリスを排除しなければ。

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