第41話 要らないものは捨てちゃいましょう♪
「あっ! あの時のガキ! おい、あの商人ここにいるのか! あいつ俺達を置いてけぼりにしやがる悪徳商人だ!」
「おっ! マジあの時のガキじゃん! お前あの商人達どこにいるか知らねえか!」
あちゃー、ぐるぐるしちゃいましょうか。あはは……。
「おい! 村長も悪徳商人の居場所を教えろ! 教えねえと魔法ぶっ放すぞ!」
村長に詰め寄る二人と僕に気付いた三人。
「ねえライ、もうぐるぐるしちゃいましょうよ。商人さん達が荷を積み終わって出て行く前に」
テラが耳たぶをクイクイ引っ張りながら、小声で囁きます。
「ダヨネ~アハハ~」
五人の魔力を一気にぐるぐる発散させます。
「おいコラ、何ぶつぶつ言ってんだガ、キ……」
ドサッ
「なっ? どうしたんだおま……」
ドサッ、ドサッ、と次々に気絶し倒れていきます。
「おいみんなどうしたんだよ、何ふざけ……」
村長さんの胸ぐらを掴んでいた手が離れ、その場に崩れるように気絶しました。
「こ、これは……。これはライ君、君がやってくれたのかい?」
「はい。このお兄さん達は、商人さんの護衛依頼を請けていたのですが、何もせず依頼の護衛をしないでお酒は飲んじゃうし、夜警もしないで寝ちゃうような人達だったので、途中で辞めてもらったのですよ」
「ふむ、ではそれを逆恨みして、ここまで追いかけてきたと言う事でしょうか、それはなんとも災難ですね……」
心底呆れましたって顔で、ひきつった笑顔の村長さん。
そうだ! 良いこと思い付きました。
「村長さん。商人さん達は東の森に素材を収穫に行ったと言っておいてもらえませんか? そして、そのまま海沿いを通って隣の国に行った事にしましょう!」
「ふむ、そうすれば、月に二回も通って下さる商人さん達に迷惑はかかりませんね」
「はい。お願い出来ますか?」
「あははは! 良いでしょう。この者達の話を聞いている限り、迷惑にしかならないようですので、隣の帝国には悪い気もしますが、行ってもらいましょう」
村長さんと頷き合い、近くに有った荷台に五人を乗せ、門の脇に移動させておきます。
すると、鉱物を仕入れた商人さん達が馬車でやって来ました。
そして速度を落とし、門前、僕達の前で止まりました。
「ライ君、この広場から続く通りの石畳も敷いたのですね! 快適に走れましたよ!」
御者台に座る商人さんがにこやかに話しかけてきました。
「えへへ。頑張っちゃいました。それに、このお兄さん達も撃退しておきましたよ」
商人さん達とドワーフおじさんはうんうんと頷き、お兄さんパーティーと、なぜか馬車を降りてくるアマラは誰これって顔をしてます。
「ねえライ、あのね、この依頼が終わったら私達とパーティー組んでくれないかな? 一月後にまたこの村に護衛で来る時になるんだけどダメ? 私今回お兄さん達のパーティーにいれて貰ったから一緒にどうかなって」
首をコテンと傾げ、返事を待つアマラ。
「ん~、それって護衛を続けるって事ですか?」
「うん。そうなるわ、専属よ! 駆け出しの私が中々なれるものじゃないし」
それだと旅が続けられませんね。
「ごめんなさい。僕はいろんな所に行きたいのですよ。今はこの王国をぐるりと一周するつもりで、この東の端まで来たんです」
「そうなんだ……残念です」
「坊主は、中々デカイ目標を立てたんだな。良いぞ、若い内はその目標に向かって突き進むのが良い。頑張れ」
「ありがとう。おじさんもお仕事頑張って下さいね。このお兄さん達みたいな人に会わないように」
「まったくだ。あはははは!」
「ライ君、君に会えて良かったです。君が居なければまだ開拓村に到着していなかったでしょうね。その冒険者に足を引っ張られてね」
「ですね。あっ、このお兄さん達には商人さん達は東の森を抜けて隣の帝国に行ったと伝えてもらいますから、たぶん会うことはもう無いはずですよ」
商人さん達は、大きく頷き笑顔です。
「そっかぁ、残念だけどいつかまた会えるよね! 元気でねライ」
アマラはそう言うと馬車に乗り込んでしまいました。
「はい、いつか会いましょう」
「「じゃあな!」」
「坊主、またいつか会おう!」
そう別れの挨拶をして、馬車は先日通った街道を走り、しばらくアマラ達は手を振っていましたが、徐々に小さくなり、見えなくなりました。
その後僕は通りを一通りまわり石畳を敷いてしまい、昨晩泊まれなかった宿に泊まり、翌日早朝東門から東の森に向けて出発しました。
その際、転移者のお兄さん達をもう一度ぐるぐるさせます。
だって、昨日は気絶して早くに寝たお陰で今朝は早くに起きて、村長さんに話を聞いたのか、東の森に出発するため開門しろって門番さんに詰め寄っていたので、さっさと気絶させてあげました。
「門番さん、この人達は適当に、外に放り出しておきますね」
「いや~、助かったよ。いきなり来て早く開けろとか言われてもなぁ」
「ですよね~、荷台は~、ありました! これに乗せて森の入口辺りに捨ててきますよ」
「そうだな、あの森の魔物はなぜか森から出ないから放っておいても大丈夫だ。頼むよ」
「は~い」
収納にあった荷台に五人を適当に乗せて、門が開くのを待ちます。
しばらくすると、農具を持った人達が集まりだして、門番さんが閂を外し始めました。
我先にと開きかけた門の隙間からぞろぞろと農具を持って出て行きますが、僕は後ろから荷台を引っ張り門をくぐります。
みんなは広げつつある畑に散らばり、草を刈る者、土をおこして出てきた石を取り除いたり、既に畑になっているところは畝を作り、作付けしていったりしています。
「ここ一面畑になって、麦畑とかになるのかな~、今は野菜を植えてるみたいだけど」
ガラガラガラガラ
「そのようね。もう夏だから秋から冬にかけて収穫する用ね」
「この国を一周してきたらここも大きくなってそうだね。楽しみができたよ」
そしてお昼過ぎに荷台の上で起きそうになったので、もう一度ぐるぐるさせて気絶してもらい、まだ日が高いうちに、森が遠くに見えてきました。
「ライ、もう結構走っているし、この辺りに捨てちゃわない? その荷台が無かったらもっと早く走れるでしょ? まあ、今でも普通の馬車より早いんだけど」
そうですね。ちょうど森が見えて、歩いて数時間くらいかな?
「よし♪! 荷台を~、収納!」
ズザザザザー!
走りながら荷台を収納したので、五人のお兄さん達は地面に投げ出され、数メートル地面を滑り、止まりました。
「あはははは! ライったら酷いっ! ズザザザザーって顔とか擦りむいてるわよあれ」
「だね~。なら回復で~す。ほいっと!」
一応回復をがっつり、お兄さん達の魔力を使い、擦り傷を直してあげました。
「うんうん、ちゃんと治しておいたよ」
「ぷふっ! あははははは!」
そのまま僕達は走り続け、東の森の入口で夜営をすることにしました。
一応ぐるぐるして気配を探ると、十キロ以内にいるのはゴブリンが主流で他の魔物がちらほらいるだけですし、安心して夜営が出来そうです。
翌朝、朝ごはんを食べながら気配を探るためぐるぐるしていると、転移者のお兄さん達がこちらに向かって近付いているのが分かりました。
「くふふ。テラ、あの人達狙い通りこの森に向かって来ていますよ。お昼くらいにはここに到着しそうですね~」
「そうなの? なら開拓村は安心ね。ん~じゃあ、今日はこの蔓にしようかしら! やっぱりこっちの荊棘にしましょう!」
そう言うと、棘をポキッと二つ取って頭に。……角が生えたテラ。……まあ、本人が満足そうですから何も言わずに置いておきましょう。
そして僕達は東の森に足を踏み入れたのです。
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