満員電車
今日も気が重いながら元気に登校だ。
クラスメイトと会いたくない俺は比較的早い電車で通学している。
いるのだが、今日は電車に乗るとその会いたくないクラスメイトがいた。
篠崎彩香。
容姿端麗、成績優秀でカースト上位に位置する人物だ。
目が合う。
俺は一応会釈するものの彼女はさっと目をそらしスマホをいじりだす。
…挨拶もないんかい!
と、いう俺ではない。もう期待しない事にしたのだから。
電車通学は高校になってからはじめた。だが、これが俺にとって地味につらい。
というのも俺の乗った次の駅で混み始めるからだ。人混みは好きじゃない。
(それにしても今日は混みすぎだ…)
ぎゅうぎゅうになって身動きも碌に取れない。
視線の先も観たくもないクラスメイトに固定されてしまう。
そこでふと気づく。
…なんか様子がおかしくないか?
顔が凄いこわばっている。さっきまで弄っていたスマホももう弄っていない。
そして、また俺と目が合う。
さっき目が合ったときに逸らされた目は今度は逸らされない。
明らかに助けを求めていた。
こんな時だけ都合がいい。とは思う。
けど、今それは些細な事だろう。
俺は人を割って篠崎に近づく。
篠崎の横まで割って入れば、彼女のお尻を触っている中年の手が見える。
「この人痴漢です!」
その手をつかみ取ると俺は大声を上げた。