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08

「なんか、すっげぇ寝た気がする」


 気分爽快で目覚めた浩之は、自身が保健室のベッドで横になっているという現状を踏まえて、完全に寝過ごしたのだと直ぐさま把握。


 先ほどまであった気怠さなど一切なく体調は万全。つまり六時間以上は寝ていたのだろうと優に予想がつく。


 それはつまり、朝のHR(ホームルーム)すら受けずに放課後を迎えたであろう浩之は、学生の本分を完全にスキップしてしまったわけで。これでは何のために無理をしてまで学校に来たのか全く分からなくなってしまったわけだが、


「とりあえず、帰るか」


 過ぎたことは仕方がないと、唯花以外は諦め上手な浩之は緩々と上半身を起こす。すると、浩之の目に映ったのは、


「わお、マジ眠り姫」


 ベッド脇の椅子に座りながら、浩之の足に体を預けて、自分の腕を枕にしてスウスウと可愛らしい寝息を立てている童話系の幼馴染──藤堂唯花(とうどうゆいか)の姿。


 サラサラな亜麻色の髪は光を受けてキラキラと煌めき、閉じていてなおその大きさが伺える目には長いまつ毛が影を落とし、整った柳眉がそれに彩りを添え、筋の通った高い鼻筋はツンとして可愛らしく、少し朱に染まる柔らかそうな頬は可憐そのもので、ぷっくりとしたピンク色の小さな唇はついキスをしたくなるほど魅力的で、透き通った白亜の如き肌はきめ細やか、そしてその全てが調和した存在が唯花なわけで、


「うん、控えめに言って最高だな」


 顎に手を当てて鑑定士の如く唯花を吟味した浩之は感嘆の声を漏らす。その表情は真剣そのものだが、不躾にジロジロと見過ぎであり、相手が起きていたら、ぶん殴られても仕方がない行為である。とはいえ、ヘタレな浩之にはこれが限界であり、寝ているとはいえ唯花に触れることなど出来はしない。


「さて、どうしたもんかな」


 本日はバイトが休みな浩之としては、寝ている唯花をこのまま堪能し続けるのが本懐なわけだが、唯花にはバイトが入っていると記憶しており、起こすべきだろうと苦渋の決断を余儀なくされていた。


 しかし、放課後だからといって直ぐにバイトに向かう時間になるわけではなく、まだ猶予はあるはずで。しかし、周囲のカーテンが全て閉め切られているため、時計が見れずで現在時刻が分からない。


 せめてスマホを持っていれば時間を確認できたのだが、浩之は基本的に鞄に入れているため、それも叶わずじまいで。


「あれ? ひょっとしてスマホがあれば唯花の寝顔が撮れたんじゃね?」


 唯花の愛らしい寝顔を網膜に焼き付け中な浩之なわけだが、そもそもスマホという文明の利器を用いれば劣化に悩むことなく生涯楽しめたのでは? ──という盗撮プラス永久保存という、ほぼストーカーな発想に思い至る。


「クソッ……なんで俺は携帯すべき物を携帯していないんだッ……!」


 両手で顔を覆って悲痛な面持ちの浩之。言っている事は至極真っ当だが、目的は軽犯罪である。ただ、これからはスマホを必ず持ち歩こうと浩之が心に固く誓った瞬間ではあった。


「はあ……勿体無いけど、時間が分からないし起こすしかないか……」


 バイトに遅刻させるわけにはいかないため、渋々ながらも唯花を起こそうと決断。声を掛けようと浩之が顔を近づけると、


「んん……」


 浩之が動いてくすぐったかったのか、唯花はむにゃりと唇を動かして、顔の向きを少しだけ下にする。すると、髪が一房顔にかかってしまい、ほんのりと眉根を寄せた。


「うーん、このままだと起きた時に気分が良くないよな」


 顎に手を当てた浩之は何を優先すべきか真剣に悩み始める。


 現在時刻が分からないため早めに起こした方が無難ではある。が、そこまで差し迫っているとは考えづらい。であれば、唯花ファーストな浩之としては、やはり気分良く目覚めてもらいわけで。となると、まずは顔から髪を退かしてあげるべきだろうと判断。


「とはいえ、触ったら流石に事案だよな」


 どうにかして髪を退けてあげたい浩之だが、勝手知ったる幼馴染とはいえ、寝ている間に触れたら即アウトだろうと二の足踏み。


 しかし、代案を考えようにも、浩之の下半身は唯花に阻まれており、可動範囲は上半身のみ。そのため、取りうる選択肢が少なすぎて途方に暮れ中。


 ただ、下半身を唯花に阻まれてるって表現がちょっとエロいよな──と思う浩之だったが、それ以上考えると起きた唯花に直立(エレクチオン)した姿を見られて人生終了なので煩悩退散。


 この触ったら社会的に抹殺ゲームに勝ちたい浩之なのだが、中々どうして難しい。浩之の上半身の可動範囲にある道具はワイシャツとインナーくらいなもので。


 布越しならセーフだろうか──と悩む浩之だったが、もしセーフだとしても、半袖なので脱いで手に巻く必要があり、ベッドで寝ている女子の前で服を脱いでるとか、もはや刑事事件の域。事案回避のために事件性が増すとか、リスクヘッジれてない。


 ならば、と浩之が思いつくのは、触らずに対処すればいいという逆転の発想。つまり、風や静電気を用いて対処するのだ。


 とはいえ、今は初夏で湿気っているし、下敷きもないしで、静電気は無理ゲーなので、ここは風の出番だろうと浩之は一人でウンウンと頷く。


 ただ、もし浩之に発電機能があれば、風力発電という合わせ技もいけたわけだが、残念ながら、そのような機能は搭載していない標準仕様のヒューマンタイプなため、浩之に出来るのは精々息を吹きかける程度。


 というわけで、早速やってみることにした浩之は、唯花に顔を近づけて髪に向かってフウと息を吹きかけた。すると、唯花の髪はサワサワと揺れるものの、


「んうッ……」


 唯花は体を震わせながら艶めかしい吐息を漏らし、その姿を間近で見た浩之は緊急停止──






     *






「マジでショック死するかと思った……」


 暫くして、ようやく再起動した浩之は、未だにバクバクいってる心臓に手を当てて深呼吸を繰り返す。


 耳経由で顔に掛かった髪を退かすには耳に息を吹きかける必要があり、耳に息を吹きかけると唯花が身悶えて直立(エレクチオン)。逮捕待ったなしのピタゴラ装置だと判明した。


 結果、色々と考えてみた浩之だが、全部ダメだった上に禁断の扉を開きかけるおまけ付き。収支は完全にマイナスである。


「やっぱ手で退けるしかないか」


 腕を組みながら首を捻る浩之は、他に方法が思いつかないので正攻法でいくしかないかと腹を括る。唯花からはよく触れてくるし、一度くらいお触りがバレても五体投地で謝罪すれば、頭を踏み潰される程度で済むだろうと予想する浩之。


 覚悟を決めた浩之は恐る恐る唯花に手を伸ばして、顔に掛かっていた髪をすくう。すると、その手触りに感動して頬が自然と緩み、


「すっげぇサラッサラ。絹糸って本当にこんななんだろうな」


 手の内にある亜麻色の髪は艶やかな光沢を放っており、キューティクルケアに非の打ち所がない。感触もしっとりと滑らかなのにサラサラで、何故これで癖っ毛なのか浩之には不思議で仕方がない。


「ヤバイ、やみつきになりそう」


 時間とリスクが比例関係だと理解している浩之だが、久しぶりに触れる唯花の髪に魅了され、結局手放せない意志の弱さ。


 ついつい手首を前後に動かして、髪がサラサラと掌の中で流れる感触を堪能しながら破顔に至る。


 三年前まで気軽に触れていたこれを、こんなにも愛おしく思うなど、あの頃の浩之は考えたこともなかった。いるのが当たり前で、特別なのが当たり前。


 けれど、その特別は同じではなく。いくら浩之が異性として求めても、唯花にとって浩之はあくまでも仲の良い友人でしかない。


「こんな事してるなんてバレたら、間違いなく嫌われるな」


 手の内にある髪を優しく撫でながら、浩之は苦笑を浮かべてそう自嘲する。


 フラれてからの三年間、浩之はこうして唯花に触れるのをずっと我慢してきた。隣にいれるだけで幸せ。見てもらえるだけで幸せ。そう思い込むことで唯花との関係を守ってきた。


 けれど、こうして触れてしまえば、やはり欲しくなってしまうのが浩之の弱さ。唯花の心も体も、その全てが欲しくて堪らないのだと本能が叫んでくる。


「はあ……そろそろ止めるか……」


 意思の弱い浩之ではあるが、流石にこれ以上は色々な意味で不味いと判断。未練タラタラで名残惜しむ心に蓋をして、すくっていた髪を唯花の背中へと流す。そしてそのまま唯花の顔に視線を移すと、


「────ッ!?」


 浩之の視界に映ったのは、閉じられているはずの──亜麻色の瞳だった。先ほどと同じく寝そべった姿勢のままで、だがいつの間にか開かれたそれが真っ直ぐ浩之を捉えているのだ。


 ──見られてしまった。


 そう理解した瞬間、浩之は瞠目して青ざめる。その脳裏によぎるのは最悪の想定。気持ち悪がられ、嫌悪され、今度こそ唯花に──拒絶される。


 そんな浩之の胸中を埋め尽くすのは今更な後悔。何故もっと早く止めなかった。何故我慢しなかった。そうすればこんな事態にはならなかったのに──と後悔ばかりが頭を駆け巡る。


 結果、カラカラと空回る思考は意味を成さず。けれど、諦め切れずに足掻き続け──それでもやはり何も思い浮かばず、ようやく絞り出した言葉は、


「髪、顔にかかってたぞ」


 ──そんな無様な言い訳だった。


 浩之が向けていた熱はそんなものではない。浩之が示していた態度はそんなものではない。そんなことは見られてしまえば一目瞭然で。浩之だって分かっている。


 けれど、最後まで唯花を諦められない浩之は、どんなに無様でも(もが)き足掻いてしまう──そんな愚か者が浩之だった。


 沙汰を待つ浩之が浮かべるのは懸命に取り繕ったいつもの苦笑。見間違いだと錯覚してほしい。気の所為だと誤認してほしい。そんな願望による最後の悪足掻き。


 そんな浩之の様子をジッと見つめていた唯花は、暫くして、フイと視線を逸らした。それを見た浩之は、ああ、やっぱりダメだったか──と胸中に絶望が渦巻く。


 ──しかし、次いで唯花から紡がれたのは、


「別に髪くらい、いくらだって触ればいいじゃない……」


「………………え?」


 拗ねたように零された、そんな赦しの言葉だった。


 理解が及ばぬ浩之は、(ほう)けた顔でただ呆然と唯花を見つめる。当の唯花は自らの腕に顔を少し沈めて隠すものの、垣間見えるその瞳には湿り気を帯び、頬には朱が差し、まるで恥じらうようなその姿は艶めかしささえ漂わせて──いっそ扇情的ですらあった。


 そんな姿を見てしまえば、息をするのも忘れて唯花に魅了され尽くしてしまい、鈍る頭で感情のままに唯花に向かって「好きだ!」と、つい叫んでしまった……ことだろう。


 ──が、そうはならなかった。


 理解が遠く及ばぬ浩之は、目の前に在る事象を認識することなく、及ばぬ理解を及ばせようと、ただひたすら脳を活性化させ続けていた。


 何故、あの愚行が赦された。何故、髪に触れることさえ許可された。そんな事はあり得ぬはずで。けれど、それがあり得てしまった。──であれば、そこには何かがあるはずで、その何かが分からない。


 グルグルと巡る思考は熱を持ち、浩之の頭には鈍い痛みが走り始める。けれど思考を止めることなく、答えを求めてただひたすら思考を深めていく。


 かつてない程の速度に到達した脳には激しい痛みが伴う。が、その全てを無視して浩之は思考の海へと没入し続ける。現在では見つからないそれを求めて、思考は次第に過去へと遡り、どこかにあるはずの綻びを手探る。


 それは一年前、二年前へと遡り、そして遂に三年前──唯花に告白した日に到達すると、浩之の思考は弾けるようにして一つの結論を導き出した。


 その結論を得た浩之は、そうだったのか──と、ようやく全てを理解した。


 異性に対する熱い視線を向けてもなお赦され、髪に触れてもなお赦された。その事象は、三年前に告白してもなお赦され、今も一緒にいてくれていることに酷似しており、そこにはある一つの共通点が存在した。


 唯花との三年間の思い出を総ざらいした浩之が導き出した理由。それは、


 ──そっか! 痛くないからだ!


 であった。


 髪には痛覚がないから触られても我慢でき、気持ち悪い目で見られても痛くないから我慢でき、好きでもない相手から告白されても痛くないから我慢できる。


 痛みが伴わなければ赦してしまう、そんな優しい唯花なのだろう──と思考に耽りすぎてズキズキと頭痛が痛い浩之はウンウンと得心する。


 そして、三年前と比べると唯花は随分と勝気でツンツンになりはしたが、それでもやはり心根は昔と変わらず優しいままなのだと分かり、浩之の心は感涙に至る。


 しかし、だからこそ、その優しさに甘えるべきではない──そう浩之は考えた。


 三年間も唯花の優しさに甘え続けてきた浩之だ。これからは少しでも恩を返すべきであって、我慢してくれるからと更に甘えるのはお門違いというもの。


 そもそも先ほどの愚行を赦してもらっただけでも十分に甘えてしまっている。なので、これ以上は必要ない──そうキッパリ伝えようと浩之は決心する。


 早速、否を示すために、浩之は手のひらを唯花に向けて遠慮するジェスチャーを交えつつ、頭を振りながら、


「いや、悪いからもう二度と触らないよ」


「──ッ、いいから触んなさいよッ!!」


「あ、はい」


 浩之なりの優しさに対する返答は、瞬時に怒気が沸騰した唯花による強制だった。インスタント爆弾が危険で危ない浩之は即決で了承。


 しかし、本当に触ってのいいか懐疑的な浩之は中途半端な位置で手をこまねいてオロオロするばかり。すると唯花は、そんな浩之を睨んだまま、顎をくいと動かしての催促。完全にヤンキーのそれ。


 退路はないと腹を括った浩之は、サイドから髪を一束すくって軽く触る。しかし、先ほどとは違い、決して熱は表に出さない。


 唯花に触れている喜びと、髪から漂うフローラルな香りに、つい頬が緩みそうになる浩之だが、いつものように仮面を被り、異性として意識していませんムーブを全力で発動。ただただ苦笑を浮かべ続ける。


 それは少しでも唯花の負担を減らすための浩之なりの優しさだった。


 髪は痛覚がないからまだいいとして、目は不快なものを見てしまうと不快感を感じる。せめてそのくらいは唯花の負担を軽減しなければ、浩之としては流石に申し訳がなさ過ぎる。


 しばらくの間、顔は苦笑で心は大興奮な二面性で以って唯花の髪を触り続けた浩之だが、そろそろ終えるべきだろう──と姉御である唯花にお伺いを立てるべく目を向けると、


「────ッ!?」


 そこには、泣きそうな悔しそうな──そんな悲痛な表情を浮かべて浩之を見ている唯花の姿があった。


 訳が分からない浩之は動揺しながらも唯花に声を掛けようとするも、


「なんで、そんななのよッ……」


 いっそ悲壮感すら漂わせるほどに顔を(しか)めた唯花から発せられた呻きにも似たその問いに、何一つ理解が及ばない浩之はただただ呆然。しかし、唯花の苦悩は止まらず、


「なんで……だって、さっきはッ……」


 浩之から視線を外した唯花は、項垂れるようにしてベッドに向かって悲鳴を含んだ呻き声を上げる。


 しかし、「さっき」と言われても己の愚行くらいしか思い浮かばない浩之はただ困惑するばかり。けれど、唯花の焦燥は凄まじく、いっそこのまま壊れてしまいそうにすら感じた浩之は、自分に出来る事はないかと必死に思考を巡らせ、


「──────ッ」


 しかし、疲れた状態で無理に思考に及んだせいで、また頭痛がぶり返した浩之は頭を抑えて耐える。けれど、三年間を総ざらいしたばかりの浩之には、すぐさま一つの仮説が思い浮かんでいた。それは、


 ──〝熱を上げる下僕を嘲笑う女王様ごっこ〟がしたかったのでは?


 というものだった。


 それはあまりにも突拍子のない内容である──が、しかし。浩之の愚行を気にした先ほどの発言と唯花の三年間の行動を照合すると、その結論に至るのだ。


 普段から浩之は唯花の前では異性として意識していませんムーブに徹しており、そう簡単にボロは出さない。しかし、不意打ちで唯花に触れられたりすると隠しきれずに、つい頬を染めてしまうという弱点がある。


 今回改めて思い返したところ、一日一回に近しい頻度でその姿を唯花に晒しており、それを見た後の唯花は必ず上機嫌だったのだ。


 知らぬ間に唯花が嗜虐的ともいえる嗜好に目覚めていたことにビックリな浩之だが、例えそうだとしても、こんなにいたたまれない唯花が少しでも喜んでくれるなら、自分の羞恥などゴミ箱にポイだ。


 女王様ごっこに付き合うよ──そう浩之が声を掛けようとした瞬間、


「私、帰るッ……!」


 弾けるように椅子から立った唯花は、保健室の外へと駆け出した。


「ちょッ、唯花!?」


 遠ざかる唯花を止めようと、浩之はベッドから下りようとする──が、急な事態に動揺したのか、思うように足が動いてくれない。


 それでも、なんとかしたくて、浩之は懸命に足を動かそうとするも、しかし、主の焦燥など全て無視して、足は頑として応えない。


 それでも諦め切れない浩之は、上半身で這うようにして、ベッドから降りて床を這いずる。


 けれど、そんな速度で間に合うはずもなく、既に唯花の足音は遥か遠く。


 唯花を追うことすらできない己の不甲斐なさから、浩之は慚愧の念に駆られ、項垂れながら歯噛みする。


 無力な自分が許せなくて、悔しくて、どうしてこんな事に──と浮かぶのは後悔ばかり。己の無力さに浩之の胸は締め付けられる。


 そして、そんな浩之に次いで訪れたのが、


「あ、足がぁぁああああああああッ!」


 ──足に対する激しい痺れだった。


 その痛みのほどは凄まじく、浩之の足のそこらかしこをビリビリと這いずり回り。少しでも足を動かそうものなら、そこからまた激しい痺れが波のように足中に響き渡っていく。今の浩之に出来ることは足を動かさぬことだけ。それ以外、出来ることは何一つ無かった。


 浩之は足を動かさぬようにして、ただ静かに時が経つのを待ち続ける。この状況を時が解決してくれると知っているから。


 今、浩之に訪れているのは、長時間、足の血管を圧迫し続けた後に足を動かすとビリビリと痛む現象──それ即ち、足の痺れだった。


 そう、唯花の上半身に長時間圧迫され続けていた浩之の足は、感覚が無くなるほど──痺れていたのだ。

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