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Scene13 -2-

  「機械虫たちの予想目的地であるY市を中心とした半径1キロメートル以内の民間人避難率はおそよ7割です」


  「急がせろ。民間人がいるとガンドールの性能を十分に発揮できない。下手に民間人からの抗議が強いとGOT解体の支障になりかねないぞ」


  現在、ガンドール専用の特殊輸送ヘリの中で特務部隊の隊長が部下を集めて現場の状況を確認していた。


  「間も無く、Y市上空に到達します。上陸した機械虫10体は3体、3体、4体と三方から集まってきています」


  「よし、まずは西から来る機械虫3体をY市に入る前に叩く。他の機械中は戦車隊で牽制、進行速度を落とさせろ」


  そして隊長は通信機を口元に押し当てた。


  「日向、早田、次藤、初陣だ。きっちり仕事しろよ」


  「了解」


  3人の声がスピーカーから返ってくる。


  この3人は巨大人型機動兵器のパイロットとなるべくして試験をクリアし勝ち抜いた者たちだった。まだまだ未知の兵器なだけにどういった資質が必要かわかっていなかったが、彼らは体力、精神力、戦車や航空機の操縦技術などさまざまな試験で高い成績を残し、その能力を見込まれ、さらにガンドールの操縦訓練も優秀だった者たちの中から選出された。


  「目標地点到達まであと5分」


  「ガンドールパイロット搭乗。発進準備」


  隊長の指示を受けた3人はそれぞれの機体に乗り込んだ。ガンドールの性能を示すべく、初の日本政府製の機動兵器が機械虫に挑むのだった。

 

     ***

 

  その頃、ガンバトラーは機械虫の進行によって被害が出た地点で救助活動をおこなっていた。早めの非難誘導の甲斐あって死者は出ていなかったが、逃げ遅れた人の救助や消火活動を手伝っていた。


  「ありがとうガードロン。助かったよ」


  「いえ、これが僕の仕事ですから」


  消防員や自衛隊員に応えたガードロンは機械虫が通ったことで荒れた道を走り機械虫を追っていく。


  ガーディアンズはどうしているかというと、セイバー、レオン、ノエルはそれぞれ小型輸送ジェットで別々の場所に向かうための発進準備を済ませた状態で待機していた。


  本来ならば特務部隊のガンドールよりも先に現地に到達できるのだが、無傷の市街地で機械虫との戦闘に入ってしまえば、街の被害について政府からバッシングされること、日本にガーディアンズの基地があると推測されることなどを恐れ、強襲揚陸移動要塞亜音速航行艦グランドホエール号で太平洋沖合まで出てから発進することになった。そして、ガンドールが戦闘を開始し、対応不能だと判断したのちに救援に入る算段を立てていた。


  14時21分、日本政府の巨大人型機動兵器ガンドールによる機械虫殲滅作戦が開始された。市街地での射撃戦闘は周囲に多大な被害が出る可能性が高い。だが、ガンドールの精密な射撃は機械虫たちにことごとく命中する。


  軽量化と追加スラスターの推力によって短時間ながら滑空することで上空からの射撃はB級以上の機械虫が放つビーム攻撃を市街地からそらせる効果もあり、被害は最小限にとどまった。


  射撃と運動性をいかしたヒット&アウェイによるガンドールは戦いを優勢に進めることはできたが、火力不足によって戦いは長時間に及ぶ。途中で弾薬とエネルギー補充をおこなうなどしている間に機械虫はY市に近づいていき、交戦地点は1・5キロメートル後退し、Y市は目前となった。


  作戦開始から45分が経過したところで救助活動しながら機械虫を追っていたガードロンが、ガンドールと交戦している機械虫に追いついた。


  「自衛隊の方々、私が援護します」


  残り2体の機械虫のうちの1体に組み付いて押し倒す。そしてすぐに立ち上がってもう1体の機械虫の攻撃を両腕の盾状の手甲で受け止め、殴り倒した。


  そんなガードロンに対して自衛隊の特務部隊隊長は警告する。


  「GOTの機動重機に告ぐ。貴様の行動は本作戦行動の妨害となっている。直ちに作戦区域から離脱せよ」


  「しかし、ガンドールの攻撃能力ではB級機械虫を倒すのに時間がかかり過ぎる。それでは交戦地帯が拡大してしまう上に、残りの機械虫による被害も大きくなる一方です。ここは協力して……」


  ガードロンの訴えを打ち消すように警告は続けられた。


  「我々は攻撃による市街地の被害を考えて戦闘をおこなっている。このまま作戦区域に留まれば、ガンドールの攻撃が貴様の背中にも向けられることになるだろう」


  「それは意図した攻撃ということか? 論理的に考えれば共闘した方が安全かつ効率的なはずだ」


  だが、特務部隊にはガードロンの言葉は届かない。


  「仕方ありません、ガードロン下がって。あなたは南西から来る機械虫軍4体のところへ。足止めしている戦車隊が苦戦しています」


  翔子からの通信を受けたガードロンは渋々その場を離れることを決意した。


  ガードロンが自衛隊の支援に到着した頃、ガンドールはヘリから投下された兵装を装備する。それは今まで1号機が使っていた大型のハンドガンよりもひと回り大きいモノだった。


  「さぁこれが最後だ」


  撃ち出された弾丸はB級機械虫の装甲をやすやすと貫き破壊していく。


  「2号機、ショルダーキャノン準備」


  隊長の指示で今まで使用していなかったショルダーキャノンが稼働して機械虫に照準を付けた。


  3射された2号機のショルダーキャノンは1号機の攻撃でほぼ動けなくなった機械虫の上半身を吹き飛ばす。


  「3号機、轟雷砲準備」


  背中にたたまれていた砲塔が3号機の胸部へ被さるように展開。エネルギーチャージを完了した轟雷砲が火を噴くと、残った1体の機械虫に命中。1撃で体の7割を破壊した。


  「3号機、エネルギー残量4%」


  「エネルギーにかんする課題はあるが、性能としては想定していた通りだな。よし、全装備の試験は完了した。ただちにガンドールを回収。点検と補給をしつつ残りの機械虫群の交戦地点へ向かう」


  特務部隊にとってこの戦いはガンドールの性能テストでしかなかった。B級機械虫は今までGOTでなければ対応できないほどの強さだったため、ガンドールという装備の戦闘力を図るのに恰好の標的だったのだ。


  出撃直前だったガイファルドだったが、ガンドールの戦いを見てそれを中止する。


  「市街地への被害をかえりみずに実践テストとはな。マスコミのヘリを飛ばさなかったのはそのためか」


  「博士、ガイファルドは出さなくていいのか?」


  剛田の問いに博士はうなずく。


  「日本政府の機動兵器は中遠距離特化させることで機体の損傷を極力抑えることを選んだ。機械虫のタイプによるだろうけど、B級までなら問題ないだろう」


  「連結機械虫が出なければどうにかなるってことだな。よし、ガイファルドたちは戦闘終了まではそのまま待機だ」


  「なんだよ、出番なしか」


  「このところ機械虫が大人しいからひと暴れしたかったのによ」


  ルークの言葉にレオンが同調する。


  「帰ったら模擬戦。セイバーはバルサーとの合身テストの続き」


  「機甲合身も?」


  4日前の合身による痺れが納まったばかりのアクトが悲痛な声をあげる。


  「隊長命令」


  「ぐっ、最近隊長命令多くないか?」


  「エマは今後のセガロイドの戦いを見据えているんだよ。ふたりの強行型決戦兵装のためにもアクト君には頑張ってもらわないと」


  「そうですアクト。私と一緒に頑張りましょ」


  アクトはセイバーの励ましを受ける。


  「博士は私たちのためにさらなる装備を準備中ということですよ」


  「あっこら、セイバー。それはまだ構想段階だから言うなって言っただろ」


  「こういうことはアクトのモチベーションアップに繋がります。ひいてはガーディアンズ全体の士気向上にもなるはずです」


  「なんだよ博士、セイバーばっかり優遇し過ぎじゃないか?」


  「そうだぜ」


  今度はレオンにルークが同調する。


  「優遇? 違うぞレオン。オレたちは実験体なんだ。おまえたちのために体を張ってるんだ」


  反論するアクト。そのアクトを同情してノエルが言う。


  「そうだね、機甲合身でエマがあんなつらい思いをしたら可哀そう。だからエマのためにもアクトには頑張って欲しいな」


  ルークたちは合身後のアクトの状態を思い返した。


  「そうだな、しばらくは新兵装は我慢するから完璧なヤツを頼むぜ」


  そんな話をしながらイカロスで待機しているガイファルドたちの出番はなく、日本初となる巨大人型機動兵器ガンドールはすべての機械虫を殲滅し、世間にその性能を見せつけた。

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