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Scene12 -1-

  ひとつの大きな戦いが終わった。


  ガーディアンズはセイバー用の強行型決戦兵装である装甲機動戦闘機バルサーが一応の成果を収めることができ、今後のセガロイドとの戦いに希望が持てたのだが、対機械虫防衛組織GOTは頭を悩ませていた。


  先の戦いで機動重機部隊部隊長代理ガンバトラーは、敵性巨人セガロイドとの戦いで中破してしまう。動けなくなったガンバトラーはエリア132に取り残されることとなり、A国に接収されてしまっていた。


  GOTがガンバトラーの機体の返却を要求するもA国はそれを却下。現在神王寺コンツェルンが交渉をおこなっている状況だが、交渉は難航していた。


  それは機動重機を所有するGOTという組織が、対機械虫世界軍事同盟に加盟する日本の管轄ではないことが原因だった。


  救援目的とは言え不法な入国をし、おまけに警告を無視してエリア132に踏み込んでの戦闘行為。諜報及び破壊活動の疑いがあるとA国は主張しているが当然それは建前で、オーバーテクノロジーによって建造された機動重機の情報収集が目的であることは明白だった。


  同盟に加入する各国もこぞって情報共有を主張するも、A国は国の重要機密を有するエリア132という特殊エリアの情報秘匿を目的にそれを拒否。例えGOTという同盟軍非参加組織であっても、その情報を勝手に同盟軍内に公開することは、無償で機械虫の防衛に助力してくれている彼らに対しての冒涜行為であると宣言し、諜報及び破壊活動の疑いが張れたならば、直ちにガンバトラーの機体はGOTに返却することを約束した。


 


  「してやられたな」


  「あのときの総攻撃はガンバトラーの回収を阻止する目的だった可能性が高いですね」


  エリア132でのセガロイドとの戦闘により、ガイファルドも手痛いダメージを受けていた。そこにA国の大部隊の登場。そのときガンバトラーが動けなかったというのは偶然だが、その状況を見て機動重機を奪取する作戦を指示した者がいるのだろう。


  「これで二足歩行、更には巨大ロボットという人類の技術の壁は破られることは確定的だよ。更にそのレベルは戦闘兵器の領域に達し、技術革新は二世代は進すむだろうね」


  「他にもAI技術だ。なにより痛いのはスピリットリアクターだぜ」


  機動重機が他の兵器と大きな差となるのが心臓部スピリットリアクターだ。この技術を手に入れればそれは世界を牛耳る力を手に入れたも同然である。このご時世でなければだが。


  「スピリットリアクターの解析は容易なことではない。更にそれをコビーできるとは思えないのだけど、世界には僕程度の天才は割といるから。それがA国の軍部にいないことを祈るばかりだ」


  「だがよ、ガンバトラーのリアクターは博士がコピーした物だぜ。コピーのコピーなら可能なんじゃないか?」


  博士は押し黙って考える。


  「確かに。あれは理解不能な点や謎の材質、極度に精密な部分なんかは僕なりの解釈でどうにか動くようにした物だ。僕が造った紛い物ならもしかしたらコピーできるかもしれないか」


  「そうなるとA国はGOT並みの戦力を得ることになっちまうな。あの大国にデカい顔をされるのは気に入らないぜ」


  剛田は心底嫌な気持ちを顔に出した。


  「心配ごとは多々あるが、ガンバトラーの件は神王寺の者たちに任せよう。僕らには僕らにしかできないやるべきことがある」


  今は早急に討ち漏らしたセガロイドと新たなセガロイドの対策を立てなければならない。その為のキーポイントは強行型決戦兵装だ。それは期待通りの成果を上げ、更なる戦闘力アップのポテンシャルを持っていることが証明された。


  「剛田君はバルサーの不具合チェックと改善を。それからレオンとノエルの強行型決戦兵装の製造も頼む。ボクはGOTの新型機動重機の取りまとめをしつつ、アレの解析をやっていく」


  「アレか。いったいどう使えるのかさっぱりだけど、意味なく生み出されたわけじゃないはずだよな」


  アレとはセイバーの初陣の後にメディカルプールの底で発見され、アッドジュエルと命名された謎の宝石のことだ。ダブルハートに似ているが、アクトの力にも反応を示さないアドジュエルを何かしらの形で活用しようと、博士は日々解析に勤しんでいた。


  それから更に2日が過ぎた頃。


  「痛たたたたた」


  機甲合身時の疑似神経接続の副作用によって手足に激しいしびれが発生していたアクトは、ようやく歩くことができるようになった。彼はまだしびれが残る手足を使って神王寺コンツェルンの重機技総(対機械虫防衛機動重機技術開発関連総合部門)に来ている。


  「おはようございます、長谷川部長」


  「おはようございます、天瀬本部課長代理」


  「またそれですか」


  恒例だが最初の挨拶は役職的に微妙に上司にあたるアクトに対して、堅苦しい言葉でおこなわれる。


  「久しぶりじゃないか、機動重機隊の強化が忙しいのか?」


  「確かにそれも忙しいですけど、それ以外にもやることがありまして、部長こそやつれたんじゃないですか? 目の下にもクマがありますよ」


  「一日も早く機動重機の強化を完了させないといけないからな。それにガンバトラーのことが気になってしまって。その件はどうなんだ? 交渉は上手く進んでるのか?」


  A国にスパイ容疑で接収されている件に関しての途中経過は今のところ公表されていない。なのでGOT関係者はやきもきしながら情報を待っていた。特に長谷川はガンバトラーの製造に大きくかかわっていた親同然だったため、より彼のことが気がかりなのだ。


  「交渉は難航していますが返還されることは確定です。ただ色々条件を出すなどこちらから取れるものは取ろうという魂胆が見え見えです。その交渉さえも時間稼ぎだろうと博士は言っていました」


  「機動重機の解析の時間だな」


  「ですね、ガンバトラーからデータを取られるのは間違いないでしょう。構造、素材、制御システム、AIに」


  「リアクターか」


  「不幸中の幸いなのが新型の装甲材と新規フレーム技術導入前だったこと。リンの努力が全て奪われていたらと思うと……」


  セイバーの強化外装である機動装甲戦闘機バルサーの完成を優先させたこともあり、機動重機に導入される前に出撃となったことが幸いしたが、逆にバージョンアップしていれば中破するには至らず帰還を果たせたのかもしれないという思いもあった。


  「そうそう、その日向だけど」


  「あ、実家に帰ってるんですよね。連絡が来てました」


  「デカい仕事をひとつ終えて新合金の量産体制も完了したからな。休んで来いって半ば強引に追い出した」


  「機動重機のバージョンアップ作業にも立ち会いたかったって感情込めたメッセージが送られてきましたよ」


  耐久性を向上させたアクチュエーターと剛性をアップさせたフレーム、そしてリン自慢の新装甲材によって機動重機はかなりバージョンアップを果たすことになる。


  「それと遂に新型の機動重機の設計が完了しました」


  「ホントか?!」


  残業と心配事で隠せないほどの疲労がたまっていた長谷川だったが、アクトの言葉を聞いて目を輝かせた。


  「今日中に装甲とフレームに関するデータを送る予定です。他の機動重機と共有部品が多いので、三日もあれば内部機構も準備ができると言っていました。来週には稼働試験ができそうですね」


  「そいつは楽しみだな」


  喜びの笑みを浮かべてはいるがその裏にある悲しみの感情をチラリと覗かせたことにアクトは気が付いた。それはガンバトラーの帰還を願う思いである。

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