Scene1(Prologue)
時は近未来。世界の紛争が無くならないこの惑星に、その紛争を終わらせるような出来事が起こった。
突如現れた昆虫型のメカが世界各地を荒らし始めると、人間はその対応に追われることになり、結果として人間同士の争いをする余裕はなくなってしまった。
最初はバイクや自動車程度の大きさだったため手持ち武器での対応もできたのだが、次第にトラック、大型バス、などのモノが現れ、ついには家一軒分の大きさの個体まで出現した。この事態により各国の軍隊しか対応できなくなってしまった。
その昆虫型のメカは誰が言い出したかネット上で機械虫という安易な名称で呼ばれるようになり、いつのまにかそれが公式にも使われるようになった。
機械虫の出現から半年。大国同士は手を結び、戦力や技術を提供し合うことで、どうにか乗り越えてきた。それを切っ掛けにして対機械虫世界軍事同盟が発足。人類は一致団結し、機械虫の脅威に立ち向かうようになった。
しかし、機械虫が現れてから一年半が経ったころ、さらに強力な機械虫が出現するようになる。
戦いの天秤が大きく傾き始めたとき、日本の大企業である神王寺コンツェルンが対機械虫用防衛機動重機と称した超AI搭載のロボットを開発し、戦況をひっくり返した。
神王寺コンツェルンの長男である神王寺 雷翔が指揮を執るそのロボットたちの戦闘能力は、現代科学の域を大きく超えており、神王寺コンツェルンが定めるC級以上は軍隊でも手に負えないと判断し、その力を使って人々を助けた。
約二年前、神王寺コンツェルンは、とある田舎の山々を買い取った。そのことは当時『馬鹿げたこと』だと言われていたが、その場所には研究所や工場、その他様々な施設が建てられた。
ロボタウンなどと言われるようになったその施設は、人間の数より自動で動くロボット作業員が多く、強力なセキュリティーによって関係者以外の出入りを禁じていた。
そして、機械虫が現れてから1年半。ついにその施設がベールを脱いだのだ。
ロボタウンと呼ばれるその施設は、対機械虫防衛組織【Guard of Terrestrial(地球防衛隊)】通称 G.O.Tの本部でもあった。
世界各地の機械虫と戦うその行為は無償であり、正義のヒーローとして賞賛される一方で、ネット上ではアンチの書き込みが山のように刻まれていた。
神王寺ライトに嫉妬する者、その活躍をやっかむ者。さらに神王寺コンツェルンの自作自演だと訴える者も出始め、それを後押しする声も少なからずあった。
しかし、そんなことより深刻なのは、世界屈指の大企業が兵器を所有しあまつさえ実際に運用していること。そして、その兵器が人類の兵器を大きく超えており、それを一企業が独占していることだった。
神王寺コンツェルンはこれらのロボットたちは兵器ではなく、機械虫から世界防衛するための重機であると発表した。
例え兵器ではないとしても、それほどのオーバーテクノロジーを世界で共有すれば、一企業に負担を強いることなく、機械虫を殲滅できるという意見が当然のように上がる。
その意見に、神王寺コンツェルンの創始者である老齢ながらも覇気を持つ神王寺 翔真は「それはもっともである」と答えた。そして、こう続けた。
「世界の国々がこの力を手に入れれば、いずれ国同士の戦争が起こり、これまで以上に大きな不幸なことが起こる。なによりこのテクノロジーは神王寺コンツェルンで開発したモノではなく、ある人から託されたモノであり、絶対にこの国を含め他国にもあかさないという約束がある」
そのような理由により神王寺コンツェルンが命を懸けて人類のために戦うことを誓ったのだった。
そして、この戦いが終わった暁には、これらの技術はすべて破棄し、必要であればいかなる罰則を受ける所存だと発表し、再び世界の人々を驚かせる。
だが、そんな素晴らしいオーバーテクノロジーの独占や、いつかその技術が破棄されて失われてしまうことに納得しない者たちがいる。その者たちはその技術を手に入れようと画策し、様々な手を使って侵入、強行、ハッキングを試みるも、すべて跳ね返されてしまう。
そういった人間の醜い部分と戦いながら、地球人類の敵とも戦う真のヒーローが神王寺 雷翔とその相棒である対機械虫防衛機動重機ゼインだ。
ライトの駆る高速機動戦闘機ライトブースターと機動重機のゼイン。そのふたつの勇気がひとつになったのが人類最強の戦力であるライゼイン。
ライゼインは数々の苦難を乗り越え、多くの機械虫を倒してきた人類の希望だったのだが、そのヒーローはA級機械虫との壮絶な戦いの末に散ってしまった。ライトの命と共に……。
ライゼインの敗北という衝撃が世界を震撼させたその直後、突如謎の巨人が現れた。
その巨人が機械虫をいとも簡単に倒して見せたことで、人々は絶望を打ち消して新たなるヒーローの誕生に歓声を上げる。
地球の人類のために戦い続けてきたヒーローを失ってから二ヶ月。その後もB級、A級の機械虫が現れるたびに巨人はそれを打ち倒していく。しかし、神王寺コンツェルンとは違いその正体が明らかでないため、『あれこそ我が神の使徒だ』という宗教団体がいくつも現れたり、『この世界がVRだ』というような声も多数上がるようになった。
今のところそれらの声にはまったく信憑性はなく、巨人が敵か味方かすらもハッキリしていない。
「たまたま機械虫が巨人の敵だっただけで、人類の味方とは限らない」
一般の人々との見解とは違い、こういった可能性が捨てきれないのが世界各国の首脳陣だ。
多くの憶測が飛び交う中で、今日も人類は謎の巨人により機械虫の脅威から守られていた。
そして今、最近戦力増強が著しいC国のS市に機械虫が複数現れ、C国軍がそれに応戦するも、B級六体とA級一体の機械虫部隊に苦戦を強いられる。すると、C国政府は他国の知らない兵器を投入しこれに対抗した。
これは対機械虫世界軍事同盟の盟約に違反する行為であるが、のちにC国は「現在開発中の試作兵器を已むを得ず使用した。まだ実用段階でないため情報の開示はしていなかった」と発表することとなり、このことをA国を筆頭に他国は大いに批難した。
新兵器を投入してなお防戦一方のC国軍に安堵と苛立ちを与えたのは、所属不明の謎の巨人の登場だった。
機械虫の出現からわずか四十分で青い巨人が空から飛来し、上空からの飛び蹴りを見舞ってからその一体を無双した。直後、初めて見る赤い巨人が同じように空から飛来し飛び蹴りを見舞った。
驚いたことにその赤い巨人は女性型をしており、しばしのあいだ世界の一部の人間をいろいろな意味で賑わせることになる。
「まだ人々の避難が完了していない。あまり派手に戦うと危険」
その赤い巨人は姿だけでなく声やしゃべり方も女性と同様だった。
「わかっているが相手は六体だ。素早く対処しないと被害が拡大するからな」
巨人はお互いに言葉でコミュニケーションを取っていることがこのとき明らかになり、大きな話題となった。
二体の巨人が逃げ遅れている人々の救助をしつつ、六体もの機械虫を殲滅するのに要した時間は六分。すべての機械虫の中枢部を破壊して上空へと消えて間もなく、日本の神王寺コンツェルン研究所付近の街で、ある事件が起きようとしていた。