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Scene10 -4-

  時間圧縮という信じがたい技術を持つ古代文明の遺跡の発見。ガーディアンズの持つガイファルドや多くの技術はそこから得たことだということはわかったのだが、頭を整理するのに時間を要したようで沈黙が続いた。

  その沈黙を破ったのはルークだった。


  「で、あのセガロイドってやつについて他にわかっていることは?」


  「そうだったそうだった。皆が聞きたいのはそのことだったな。僕たちはガイファルドという巨人が存在する理由を考えた。これだけの物を作るからには理由があるはず。遺跡のデータを解読・解析してガイファルドに匹敵する者が存在し、そいつらと戦った記録が読み取れた。それがあの巨人だ」


  三人の背筋に冷たいモノが走り抜けた。


  「ガイファルドはあの巨人に対抗するために作られたということだ。遺跡はセガロイドに対抗する組織の本部でありガイファルドの基地でもある。それを模してガーディアンズの設備を作った。だがガイファルドは未知の塊でとても作ることはできない。レオンもノエルもその遺跡に残っていたモノをそのまま使っている」


「対抗するために作られたってことはガイファルドはセガロイドと同じくらいの性能があるってことですよね? だけどあいつめちゃめちゃ強くてレオンとノエルと三人がかりでやっとだったじゃないですか」


  アクトの発言を聞いて博士はスクリーンに映したセガロイドの表を指さした。


  「セガロイドに階級があるようにガイファルドにも階級がある」


  パソコンを操作して表示を切り替えたスクリーンにはガイファルドの五つの階級が表示されていた。


  五位、マーセナリー

  四位、ファイター

  三位、ナイト

  二位、ガーディアン

  一位、パラディン


  「なぁ、博士。俺たちはどの階級なんだよ」


  「知りたいのか?」


  博士は上目遣いで眼鏡を光らせた。

  このときアクトは興味はあるが聞かない方が良いかとも思っていた。それは共命度にも差があるのに階級でもレオンやノエルとの差があったら……、と考えたからだ。

  ルークはそこまで考えておらず、純粋にレオンが第何位の階級なのかに興味があるだけだが、このあと博士の説明を聞いてアクトと共に衝撃を受けることになる。


  「第二位だ」


  「おー、レオンは第二位か! でノエルとセイバーは?」


  「第二位、ガーディアンだ」


  「レオンじゃなくてさ」


  「だから、三人とも第二位のガーディアンだよ」


  アクトは眉根を寄せてつぶっていた目を開いた。三人は同じ第二位のガーディアンだというのだ。これを聞いてアクトはふーっと溜めていた息を吐いた。三人とも同じで差はない。それも全員第二位という上位のガイファルドだ。


  「僕たちが発掘したガイファルドはすべて第二位だった。ちなみにガーディアンズの名前の由来はここから来ている」


  「へぇ~、なるほどね。確か相手は四位のウォリアーだったよな。俺たちの方が有利じゃねぇか」


  それを聞いて皆一様に肩の力を抜いた。


  「本当にそう思うか?」


  と博士は神妙な表情で問い返す。


  「だって四位より二位の方が上ってことだろ? いいに決まってるじゃん」


  だが博士の表情は変わらない。

  そんな博士を見てアクトは思考を巡らし、あることに気が付き身の毛がよだった。


  「ルーク、違うぞ。全然有利なんかじゃない」


  「なんでだよ?」


  ルークはそのことにまったく気がつかない。だが、周りでは順にその答えに気がついていった。


  「ルーク君」


  矢島美紀が長めの前髪に目を伏せながら震えた声で言った。


  「第二位のガイファルド三体でなんとかあいつを退けたのよ。でもその相手は第四位。結果からしてとても有利なんて言えるもんじゃない。さらに……。もし、もしも、さらに上の階級の敵が存在したらどう?」


  ここまで言われてようやく楽観的なルークも気が付く。

  一階級でどのくらい強さが違うのかわからないが、第三位の敵が現れた場合は三人がかりでも勝負になるかどうかわからないということだ。


  「本当にあいつは第四位なんですか?」


  アクトが確認すると博士は首を縦に振る。


  「奴が第四位だと該当するデータがあった。間違いなく第四位だ」


  「私、思ったんですけど。あのセガロイドって完全じゃなかったんじゃないかって」


  「それは、なんでですか?」


  追い打ちを掛けるような美紀の言葉に押し黙る一同。そんな中でアクトは恐る恐るその理由を聞き返した。


  「アクト君、最後にセイバーがあいつとぶつかり合ったあと腕が崩れたの見たでしょ? でもセイバーはそうならなかった。だからあの空間に長い期間居たことで不具合もあったかなって。でなきゃ三体を相手に互角以上に戦っていた上に、機械獣までいるのに退散していく理由がわからないの」


  「確かにな。セガロイドがロボットだっていうなら経年劣化も考えられる」


 剛田は腕組みしながらうなずく。

  性格にどれほどの月日かわからないが、長い年月あの空間に封じられていたのなら当然のことだろう。おかげでアクトたちは命拾いしたことになる。


  「今までセガロイドの存在を言わなかったのは隠していたわけじゃないんだ。それらしい記述はあったが、そんな奴らが現代に出てきて敵になるなんて想いもしなかった。僕たちはただ遺跡を発見して技術とガイファルドを手に入れただけ。それに対してセガロイドの出現を予測するなんて無理な話だろ?」


  「でも、なんで神王寺コンツェルンを使って機械虫に対する対策は取ることができたんですか?」


  「それは……」


  ここで博士は言葉を詰まらせた。そしてアーロンに視線を送る。しかしアーロンは黙ったままだった。


  「それは、予告があったからさ」


  「予告? 誰からですか?」


  「恐らくは、君を襲ったピラーロボットの主だろう」


  ここでやっとあのロボットたちとの繋がりが出てきた。


  「だが、予告してきた者がピラーロボットの親玉という確証はない。僕が勝手にそう思っただけだ」


  あれ以来音沙汰ないがきっといつか現れるのだろうと、アクトはいつも頭の片隅にその思いを置いていた。


  「あんな奴らどうでもいいさ。それよりもセガロイドだ。次に出てきたら絶対叩きのめしてやる!」


  バシンと拳を手のひらに叩きつけてルークは言う。


  「でもレオンはボコボコにやられてる。なんの対策もなければまた同じこと」


  チッチッチッ


  エマの指摘にルークは人差し指を立てて振った。


  「あのときあの空間で奴と出くわした俺は、あいつが機械虫に狙われているガイファルドなのかと思ってたんだよ。だからあの空間から一緒に脱出しようとしたら後ろから不意を突かれちまったんだ。まだ真正面から全力で戦ってはいないから、これっぽっちも負けたなんて思ってないぜ」


  と鼻息荒く話した。


  「とは言っても対策を立てることに異論はない。強くなるためにすることがあるならなんでもするぜ」


  「わたしもする」


  「もちろんオレもします」


 そう心に強く誓った三人。博士は三人の目を見てうなずいた。


  「ガイファルドパワーアップ計画その1。とにかくひたすらトレーニングだ!」


  「それなら日ごろからやって……」


  「生ぬるい!」


  「はいーーーーーー!?」


  突然のスパルタ発言に三人は身をたじろかせる。


  「この数ヶ月のデータを見る限り、地道に筋力トレーニングをおこなってきたアクト君の影響でセイバーの骨格に変化が起こってきた。それにともない関連する能力が上昇している。それにルークとロイドとの戦闘訓練によって技術の向上もあって、セイバーの戦闘力は確実に上がっている。つまり共命者の能力アップが共命体の戦闘力上昇の一番の近道だということだ」


  共命度B1のアクトとセイバーがレオンとノエルに追いつきそうな勢いで成長している。それはひとえにアクトの頑張りの賜物なのだった。もちろんアクト以外の二人もトレーニングをしていないわけではないが、運動量だけではなく熱の入れようにもそれなりの差があった。それこそがルークがアクトに対して羨んだことである。


  「君たちのやることはただひとつ!」


  アーロンが立ち上がってそう言うと、三人は彼から勢いよく風が吹き出した、ように感じるのだった。


  「ひたすらに己を鍛えセガロイドの出現に備えること。恐れも不安も抱く必要などない。君たちは第四位のウォリアーを上回る第二位のガーディアン。現状負けているのはまだまだ未熟なだけだ。伸びしろを考えれば君たちの進む先には希望しかない」


  「You’re right. 俺たちがレオンたちの能力を引き出してやれば第四位に負ける道理はないぜ」


 強敵の出現に不安を募らせていた三人だったが、アーロンの言葉が心に響き、沸々とやる気が漲ってきた。アーロン以外の者に同じことを言われてもここまで気持ちが動くことはないであろう。これが真に人の上に立つ者の持つ力なのだ。


「そうと決まればさっそくトレーニングだ。奴もきっと復調するのにそれなりの時間が掛かるだろうし、その間にぶち抜いてやる」


  ルークは立ち上がりエマとアクトに声を掛けた。


  「それはリーダーである私の言葉」


  ルークに続いて立ち上がり、まだ座っているアクトを見下ろす。


  「OKリーダー」


  アクトはエマの訴えかけるような視線を受けて、ルークに後れを取った彼女を気遣う。


  「じゃぁ博士、俺たちサポートチームも自分たちのお仕事をしますか」


  「そうだね、きっと勝利の鍵は僕らにある」


  セガロイドと名付けられたガイファルドの天敵の巨人は現状では明らかに格上だ。その差を埋めるのはメカニックチームなのだと剛田と柳生は自覚していた。


  共命者の成長が共命体の成長とはいえ、漫画やアニメのように特訓すればお手軽にパワーアップするわけではない。やはり新たな兵装を開発による戦力アップは必須。だが、ガーディアンズが開発した兵装は近代兵器を強化した程度の物でしかない。


  遺跡から発掘した一部のオーバーテクノロジー以外はそれほどの差はないのだ。機械虫が相手ならともかく、戦闘用の機械獣とセガロイドが相手となると、現行の兵装では優位に立てるものではなかった。


  そのためアクトも含めた三人によって構想中の新型兵装の完成が急がれるのだった。

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