Scene7 -3-
神王寺コンツェルンと秘密結社ガーディアンズがどういった関係なのかが語られます。
「数年前、ガーディアンズがその名前もなかった頃だ。すでに世界でもトップクラスの企業であった神王寺コンツェルンに、我々は機械虫の情報とオーバーテクノロジーの一部を提供した。その対価はガーディアンズ設立の資金援助をしてもらうこと、更にどの国にも属さない独立防衛隊組織の設立と機械虫に対抗するための機動重機の開発だ。理由はさっき翔真さんが言ったようにガーディアンズが稼働するまで機械虫と戦ってもらうためにね」
「その提供された技術によって我が社は二番手に大きく差をつけるほどの世界最大の企業となった。約束通りガーディアンズ設立の全面援助と機械虫に対抗するための超AIを搭載した機動重機を造り、それを配備した組織GOTを設立した」
神王寺コンツェルンとガーディアンズに密接な関係があったことにアクトは言葉もなく驚いていた。
「計画は順調に進みあとはGOTを現場近くから指揮する者を選出するだけといったところで、予期せぬ者が予期せぬことを進言した」
その言葉に幹部の者たちの表情が曇る。
「その役に雷翔が名乗り出たのだ。それも遠方指揮ではなく機動重機部隊の重機パイロットとして戦場に出て指揮を取ると言い出した」
「当然反対はしたのだが、あの異常なまでの熱血正義バカを止めることはできず。それができなかったことが悔やまれてならない」
悔し気に目を伏せる者、悲し気に笑う者、誇らし気に怒る者。家族たちの雷翔への思いは様々のようだ。
「ライト君のことは本当に残念でならない。人命被害を出さないために機動重機部隊はAIの搭載されていてパイロットを必要としないのだが、ライト君の要望でゼインには首の下にコックピットブロックを搭載することになった。最初はそこで指示を出す程度だったのだが、機関制御や武装の使用管理、あげくには脳波リンクを考案し、思考や感覚の共有することでタイムラグを減らし、反応速度をあげるなんてこともしてしまった」
「それってガイファルドとの合身と同じようなことですか?」
「いや、自分の目で見ながらもゼインの視覚、聴覚が情報が得られるといったもので、思考もダイレクトでやり取りできるというだけで、ガイファルドと違って人格や思考が融合したりはしないんだ」
ライトの頭脳明晰という肩書は伊達ではなかった。
「おっと、話が少しそれてしまったな。えーと、なぜひとつの組織にだけ技術を提供したのかという点だが、理由のひとつはすでに世界に発表した通り、その後の世界間の戦争を危惧したからだ。この力を一国が独占しても世界で共有しても良い結果にはならないと判断した。それに技術とガーディアンズに関する情報の漏洩を防ぐ目的もあった」
秘密結社と自称するガーディアンズにとってそれは重要なことだ。
「ガーディアンズの基地を作るのにこの企業を選んだ理由は、社会貢献度を含む経営理念と幹部の人間性に違いがないこと、そして、ガーディアンズ基地を作るのに適した企業だと判断したからだ。アクト君、もうわかっていると思うが、ガーディアンズの基地は君が研修に来ていたロボタウン、つまり神王寺の科学研究所兼GOT本部の地下深くにある」
その説明を受けてアクトは神王寺コンツェルンが田舎の山々を買いロボタウンを作った理由を理解した。地上では神王寺の研究所、地下ではガーディアンズの秘密基地を同時進行で造っていたのだ。
ロボタウンと言われるほどAIロボットばかりが働いていたのは、機械化することでガーディアンズ基地建造を秘密裏におこなうことができるからだ。更に科学研究所を含めたこのロボタウンと呼ばれる工業施設とガーディアンズの基地建設に掛かる期間の短縮するのに必要なことだった。人間の手で今の技術を使って建設をおこなった場合は十五年から二〇年はかかるであろう作業を二年と掛からず終わらせることができたのは、オーバーテクノロジーの一端を使って作られた作業用AIロボ様々である。
うんうんと納得しつつもアクトはひとつの疑問を質問する。
「もうひとつ教えてください」
「何かね」
「なぜ機動重機たちにはガーディアンズの情報を与えていないのですか? ガイファルドだけでも機械虫と戦えると思いますが、仲間として共に作戦行動をおこなえば、連携もとれるしもっと効率よく戦えるのではないかと思って」
この質問は、機動重機たちが今後の戦いでライゼインのようになってしまわないかという懸念も含んで出たものだった。
「それは、万が一彼らのAIから共命者である君やガーディアンズの情報が漏れるのを防ぐためだ。彼らのことを信頼していないわけではないが、AIとて完璧ではない。プロテクトされていても突破されないとも限らないしのう。ガーディアンズは秘密結社でなければならない。それに我社がこれ以上世界から目の敵にされてはたまらんからな」
翔真は蓄えた髭の中で口元を緩ませて笑った。
実質GOTという組織を公表してから一時株価が急落を見せることもあった。だが上がりに上がった株価は多少下がったところで大した問題ではなかった。気にすることと言えば日本というこの国から目の敵にされているということだった。
重機だと説明してはいるが実質一企業が兵器を所有していることは否めない。当然重大な法律違反である。そして、他国からの風当たりは企業ではなく日本と言う国に吹き荒れ、経済制裁とはいかないまでも苦しい経済情勢となった。当然国から多大なクレームをもらったが、GOTの存在なしに世界の平和を維持するのは不可能だったため、処分は保留状態となって今に至る。
国から機動重機を共同管理させろと再三通達されているが、情報の秘匿はガーディアンズとの絶対的な約束なので、当然その申し出は拒否し続けているのだ。
そのあと、いくつかの質疑応答を済ませ、まだしっくりとしないアクトをよそに会議は終了し、忙しいさなか集まった一同はそれぞれの業務に戻っていった。
「じゃぁねアクト君」
舞花はひらひらと手を振って挨拶すると姉の翔子に手を引かれながら部屋を出ていった。
「んじゃ俺も行くかな」
いつも通りあまり気合の入っていない口調でルークも部屋を出ていく。
「おい、ルーク。おまえの仕事っていったい何なんだ?」
去り際のルークに問うたアクトの質問の答えは、彼の後ろから返ってきた。
「ルークさんは週に三回ボクのトレーニング指導をしてくれているんです。ボクも早く実践に出たいのですが、重機パイロット適性テストのスコアーがまだ合格点に達しなくて許可が出ません。そのために勉強の合間にルークさんに指導してもらってます」
「そういうこと」
「もう四ヶ月も見てもらっているのに……」
光司は口惜しそうに口をへの字口にして視線を落とす。
「俺は順調に成長してると思うんだけど、光司は納得いかないらしい」
「そのスコアーってのは?」
肉体、精神、反射神経、判断力、各種戦闘技術、機械及び電子技術の知識。思考の柔軟さなどを総合した機動重機パイロットとしての能力を数値化したものだ。光司は現在七一〇点。その師匠であるルークはパイロット候補として神王寺勇翔社長に呼ばれてこのテストを受けたときは七四〇点だったという。ちなみに合格点はは八五〇点だと聞き、
「俺はほら、機械とか電子とかその辺は専門外だからさ」
表情からも言い訳っぽさがプンプンするルークに光司は細めた目で一瞥する。
「ルークさんが電子技術系を満点にしてもスコアーは八二〇点ほどですよ。
「そうだっけ?」
白々しく笑うルークだったが、彼よりもお育ちの良い光司は、
「でもボクはそっち系は満点に近いのに七一〇点ですからまだまだです」
と謙虚に今の現状を正直に語った。
「ちなみにライトさんは何点なの?」
パイロット候補生のふたりは一度顔を見合わせてから力なく答える。
「九八五点……」
その答えがライトの凄さを引き立てた。




