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Scene6 -3-

  それから数日、体を休めていたアクトは合身ができないことをどう言い出すか考えていた。合身によるテストや訓練はおこなわれず、しばらくは生身でのトレーニングと少々の座学だけの日々を過ごす。機械虫の出現も二回あったがアクトは大事を取ってレオンとノエルのみの出撃となったため、セイバーとの合身はせずにイカロスで待機するだけにとどまった。

 それから二週間、執拗に駆られる事態でなかったために言い出せず、状況は好転しないまま時間だけが過ぎていった。


  ブーーー

  治療完了を告げるブザーの音がいつのまにか眠っていたアクトの意識を覚醒させる。カプセルから出たところでPR3とは違うピラーロボットを連れた医師が肩の完治を告げた。


  「……ただし、無理せずトレーニングは少しずつ強度を上げるように」


  「はい、ありがとございました」


  医療室を出るとPR3が通路を横切ったのが見えたのでアクトは思わず声を掛けた。


  「おーいPR3」


  横切った通路をバックで戻り呼び止めたアクトの方に向き直る。


  「御用でしょうか」


  「いや、特に用はないんだけどさ。PR3は忙しのか?」


  「いえ、エマに頼まれた物を届け終わり、待機所に戻るところです」


  「つまり暇ってことか」


  「……はい、そうとも言います」


  「んじゃぁ一緒に部屋まで付き合ってくれよ」


  「了解しました」


  ふたりは特に会話するでもなくアクトの部屋に向かった。合身できないという不安と秘密を共有するPR3がそばにいることが、なぜかアクトの心を少しだけ落ち着かせてくれる。そのまま数分間歩いているとアクトの部屋の前に到着した。


  「ありがとな」


  何にありがとうなのか明確でないお礼を告げたアクトに、PR3はモノアイを回してから一言だけ言葉を発した。


  「前に踏み出せないときは、ひとつだけでいいので、やるべきことを決めてそれだけに意識を注いでみてください」


  「ひとつだけ……やるべきことを……」


  「では」


  おそらく心に巣食った恐怖に捕らわれているアクトへのアドバイスなのだろう。なんとも人間臭いロボットだなと思いつつも、その言葉をありがたく胸に刻み込むことにした。


「よう、ちょっといいか?」


  PR3を見送ろうとしたころでルークが現れてアクトはドキリと心拍を上げる。やはり顔を合わせずらく微妙に避けていたところを心の準備もなく声を掛けられたからだ。


  「肩の状態はどうだ?」


  「さっき完治したって言われた。しばらくは無理せずにトレーニングしろってさ」


  「そうか、ならこれから一緒にどうだ? エマも来るっていうからよ」


  合身できないことを隠している後ろめたさから一緒に行動を共にしづらいアクトは、どう返事をするかためらっていたが、このままずっと隠してはいられないと腹をくくり、ルークとエマに話す決心をして誘いを承諾した。


  「ではワタシはこれで」


  PR3は待機室に戻り、アクトはルークに連れられてトレーニングルームに向かう。その間に頭の中で打ち明け方のシミュレーションをしていたアクトにルークは自分の恋人自慢をしていた。


  「……俺にはできた彼女でさ。でもそんな彼女の住んでいた町は小型の機械虫群の被害にあってよ、その子の両親は崩れた瓦礫が降ってきて大怪我さ。大怪我だけで済んで良かったとも言えるけど、彼女は日本に帰国することになったわけ。そんで俺も彼女を追いかけて日本に住んでる爺ちゃんと婆ちゃんのところに住まわせてもらって、日本の企業に就職したんだ」


  「そうなのか。なんて企業に就職を?」


  「ふっふっふっ、その企業はな」


  勿体ぶるルーク。余程大きな企業に就職したのだろう。ルークがその名を明かそうとしたタイミングで基地内に警報が鳴り響いた。


  「機械虫か?!」


  ルークの表情が険しくなり、アクトの表情は悲し気に曇る。だが、警報音はルークがいつも聞いている音とは違い、光るランプも赤ではなく黄色だった。


  「様子がおかしいな」


  そう訝しむルークに館内の放送が答えた。


  「基地内に侵入者あり。侵入者は第三深度の第三ブロックに潜んでいる模様」


  「第三深度の第三ブロックってここじゃねぇか!」


  いつも陽気なルークの表情が更に険しくなった。

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