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Scene16 -3-

 地上ではGOTの機動重機と黒い未確認機動兵器との戦闘が続いていた。六機中二機の機動兵器を戦闘不能にしたガードロン率いる機動重機部隊ではあったが、ロボタウン施設への影響を考え、思うように戦えていなかった。


「三機目、いただき!」


 シェンダーの放ったガンナーボットの一撃が、黒い機動兵器が構えたバズーカごと右腕と頭部を打ち抜いた。これによって部隊が半壊し、おそらく性能的には上位であるGOTの機動重機部隊の戦力が上回る。しかし、弾薬やエネルギーは二割を切っているため、補給が必要だった。


「シェンダー、一時後退して補給をおこなって」


 翔子の指示にシェンダーは反論する。


「俺が下がったら一気に形勢をひっくり返されちまうかもしれないぞ」


「このまま消耗すれば火力を失ったときに窮地(きゅうち)におちいるのはあなたたちです」


 現状では判断の難しいところだ。


「ならば、そうなる前にもう一体を倒します」


 そう翔子に告げたのは慎重派のガードロン。互いの戦力や状況を分析した結果継続戦闘の方が確立が高いという計算だった。


 一番ダメージを受けている近接戦のナグラックがまったく退かないことからも、彼がその意見に同意であることを告げていると判断した翔子は、改めて指示を出しなおした。


「戦闘続行。ただし二分したらシェンダーは補給に戻りなさい」


「「「了解」」」


 三体の機動重機はAIから気合という名の未知なるエネルギーをスピリッツリアクターに送り込む。機動重機の強さは扱う火器の強さではない。それは元祖機動重機部隊隊長ゼインと大隊長ライトが身をもって教えていたことだ。


 戦闘続行から五十四秒、シェンダーの弾薬が尽きた。その四秒後にガトリングボットの砲身が空回りし、連射による加熱によってガンナーボットも強制冷却へと至る。


 援護が途絶えた十一秒後近接戦をおこなっているナグラックへ攻撃が集中し、一気に形勢は逆転した。


 ガードロンはその頑強なアーマーを盾に砲撃型の機動兵器の攻撃を受け、シェンダーは砲撃武装を背部に折りたたみ、近接戦に移行。


 十五秒の打撃戦の末に、とうとうナグラックの肩関節部が限界を向かえて脱落した。


 片膝を付いたナグラックは跳ね上がるように伸び上がり、機動兵器の顎に向かってハンマーナックルを打ち込む。リングの移動により加重された拳の衝撃が機動兵器を浮き上がらせた。


 軸足の膝もその衝撃を支えきれずに圧壊し、ナグラックは地面へと倒れ込む。


「二分したらって言ったのに一分もしないで弾薬撃ち尽くして、さらに戦闘不能になるなんて。ちゃんと指示に従いなさいよ!」


 冷静な翔子には珍しくあきれ声で叫んだ。


「サンダーボルト!」


 ナグラックによって損傷した近接型機動兵器にシェンダーがトドメの一撃を入れるが、半オーバーロード状態のスピリッツリアクターの高出力によってサンダーボルトシステムがオーバーヒート。内部の機器が暴発する。それでもかまわず殴り続けるシェンダーの右腕部は砕け散った。


「馬鹿ばっかりね……」


 二分まであと十秒。ガードロンが二体の部下を護る盾となりながら愚痴を漏らした。


「無謀に思えたライトが堅実だったと勘違いしそうだ」


 二体の若い機動重機たちは全力を出して戦った。そんな二体を守るガードロンの背後から懐かしい声が叫ばれる。


「マックスバスター、シュート!」


 遠距離から砲撃する機動重機をエネルギーの渦が飲み込み四肢と頭部を引き千切るように破壊した。ほぼ胴体だけとなった機動兵器の残骸がその場に倒れる。


 振り向くガードロン。そこに居たのはゼトラキャノン。ライゼインのオプションロボだった。


「ガードロン久しぶりだな。それと無謀な後輩たち」


 ライゼインが敗北する一ヶ月前のA級機械虫との戦いで大破したゼトラキャノン。彼の超AIは無事だったのだがライゼインが戦いから退場したことで再建造はされていなかったのだ。


「ゼトラ?」


「どうしたガードロン。せっかくの再会なのに寂しいじゃないか。もっと喜んでくれよ」


 突然の旧友の登場にガードロンは面を食らってしまい言葉が出ない。


「これからは俺も戦線に復帰する。よろしくたのむぜ。隊長と後輩」


「あ、はい。よろしくお願いします」


「ゼトラ先輩、よろしく……お願いします」


 後輩ふたりもガードロン同様に反応に困っている。


「さて、挨拶は済んだし敵の先行部隊は倒したがピンチであることには変わりない」


「なに?」


「シェンダーだったな。ナグラックを連れて後退だ」


「ピンチとはどういうことだ?」


 ガードロンはそこまで言って上空を見上げた。そしてゼトラキャノンと同じように二体に対して基地内に撤退するように命令する。


 その数秒後に上空から現れたのは二十五メートルはあろうかという大型の機動兵器だった。さらに二体の黒い機動兵器。


「次から次へと」


 焦り声のガードロンは続けて叫んだ。


「シェンダーはナグラックを連れて早く基地内へ。反論は聞かない。足手まといだ」


 二体は悔し気な意思を発しながら急ぎ基地内へ向かった。


 ガードロンとゼトラキャノンの前に降り立つ三機の機動兵器。ゼトラキャノンは自身のアサルトライフルをガードロンに手渡した。


「新生した俺の強さで圧倒する予定だったがそうもいかなさそうだ。下手すりゃまた長期入院だぜ」


「最悪の場合、僕らもゼインとガンバトラーに続いて引退だぞ」


 冗談とも取れないやり取りを終えた二体の機動重機は三機の機動兵器に先んじて攻撃を開始した。


 二体が戦っているあいだにサポートボットは補給を完了し、単体で支援攻撃をおこなっていた。


 新生したゼトラキャノンの機動力と運動性は高く、固定武装の火力は有効だがその威力では連射が効かない。


 ガードロンはリンの作り出した新型装甲によって強固な防御力を手に入れていたことで機動兵器の攻撃に耐えつつ撃ち返す。


 前衛が居ないため距離を取って戦うGOTの機動部隊。よって戦いは銃弾やエネルギー弾が飛び交う射撃戦になっている。


 そんな中リンは、崩れかけた重機技総(じゅうきぎそう)のビルの中で小さくなっていた。


「……アクト」


 こんな巨大なロボットたちが重火器を撃ち合う場所にどうやってアクトが助けに来るのか? 彼のことを考えれば「来ないで」と伝えるべきだったことも重々わかっていたのだが、「待ってろ! 今から助けに行く」というアクトの言葉が頭から離れない。


 上司の長谷川は頭の裂傷によって出血が酷いため、リンの不安をさらに(あお)っていた。


 大型の機動兵器の火力はかなりのモノで、ゼトラキャノン並みの砲撃を連射する。二機の機動兵器を援護するのみなので、どうにかなってはいたが、なぜ積極的に攻撃してこないかは不明だった。


 ガードロンが体を張って敵の攻撃を防ぐいっぽう、ゼトラキャノンは黒い機動兵器が重なったタイミングで再びチャージしたマックスバスターを発射する。その強力なエネルギー流は二機の機動兵器を同時に破壊することに成功した。


「思い知ったか!」


 ゼトラキャノンがガッツポーズを決めると、その前方でガードロンが膝を折った。生み出すエネルギーよりも消耗するエネルギーが大き過ぎて蓄積エネルギー圧が著しく低下してしまったからだ。


 ガードロンは防御特化型ということもあり、主戦力のゼインや高火力のガンバトラーに比べてスピリッツリアクターの性能が低い。言い方を変えれば柳生博士がコピーした物の中ではコピー精度が高くないのだ。そのため連続的な攻撃を受けると、防御システムのレーザーコートがエネルギーを消費し続け、エネルギーの需要に供給が追いつかなくなる。そのことによって安定稼働域を下回ってしまった。


 そんなガードロンに向かって大型の機動兵器は砲塔を向ける。


「させねぇ!」


 ゼトラキャノンは腕部や肩部連射武装で牽制(けんせい)をおこなうが、機動兵器の持つなにかしらの防御システムによって阻まれてしまった。


 だが敵からの砲撃を防ぐことはでき、その隙を使ってガードロンのところに駆け寄る。


 攻撃方法が切り替えられ、小型ミサイルの雨が降り注いだ。


 ガードロンの腕を引きながら回避行動をおこなうゼトラキャノン。ロボタウンはそれまでの攻撃とミサイルの雨で酷い状況になっていた。


「やめろー!」


 叫びと同時に一体の巨人が機動兵器を蹴り飛ばす。


 高重量の機体だがその勢いに押されて四歩五歩とたたらを踏んで止まった。


 現れたのはセイバー。イカロスの発進を待てず、ロボタウンの四方に設置されたイカロスの発進口を走り登ってきたのだった。

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