お父さん
翌日の放課後、レノアはいつものメンバーとお茶をしながらあのあとの報告をさせられていた。
そこで、レイドに手錠以外の方法は無かったのかとチクチクと嫌みを言うと、うーんと考えたふりをしてレイドがとんでもないことを教えてくれた。
「他の方法?レノはレノアを汚して、幽閉とか言い放ってたぞ?」
そっちの方がお好みだったか?としれっとお茶をすすりながらレイドは言い放つ。
「なっ!……なんて卑猥な……。」
キッとレノを睨めば、サッとレノはレノアから目線をずらす。
(一応上手くやれたのかな、うちのヘタレ王子は。)
レノを睨むレノアと、レノアから目線をずらすレノを見てレイドは苦笑いしていた。
「全く、仲直りそうそうにイチャつかないでよね。」
「でも、これで平穏な日々が戻って来ましたね。」
そんな3人のやり取りを横目に、リリアン姉妹は優雅にお茶を楽しんでいた。
「そうね。これで、はるたんとレノ様も無事に婚約者に戻れたし。後はハッピーエンドを待つだけね。」
あっちゃんもゆったりとお茶を楽しもうとカップを持てば、レノアがあっちゃんの方を向き
「え?婚約者にはなってないよ?まだ破棄したままだよ?」
と首を傾げた。
「「「「「!?」」」」」
レノアの発言に皆は一斉にレノを見れば、レノもレノアの発言が意外だったのだろう。目を見開いてレノアを見ていた。
「え?は、はるたん?仲直りしたんでしょ?」
思わずあっちゃんがゾンビの様な動きでレノアに近づいて肩を痛いほど握りしめる。
「え?え?あ、……う、ん?」
(仲直りしたことになるのかな?あれは?)
「はるたん?はるたんの勘違いだって解ったんだよね?」
黒い笑みでメリーも同じくレノアを囲む。
「え……あ、うん。でも、婚約破棄の手続き終わってると思うし。」
「レノ様ははるたんに婚約者になって欲しいって言われたんですよね?」
ユアに関してはもはや眼が笑っていない。
「え……うん。うん?言われてないよ?」
一同が一斉にレノを見れば、レノは再びカビの塊になっていた。ただ、カビの塊の横でレイドがカビの塊に手を添えてこめかみを押さえて俯いていた。
「………、はるたん?ちょっとこっち来ようか。」
あっちゃんがあきれ顔でレノアを連行すれば、それにリリアン姉妹も続く。
レノとレイドからかなり離れると、すぐにあっちゃんから揺さぶられる。
「はるたん!?はるたん?恋したこと有るんでしょ?はるたんはもともと35才なんでしょ!?女性経験だってあるのよね!?ねえ!?恋ってなにかわかる?」
かなりの勢いで揺さぶられてしまい、一気にレノアはヘロヘロになる。
「はるたん?レノ様に必要だって言われたのよね?」
そう言われると何だか少し照れくさくて頬が赤らむ気がする。レノアは軽く頬をおさえ肯いた。
「あ、でも。傍に居れば良いだけだって言ってたし。」
「「「!?」」」
「は、は、はるたん?」
「ん?」
メリーは何故か失神寸前だった。
そして、ユアに至ってはこめかみを押さえている。
「はるたん?傍に居ての意味は?」
失神寸前、眼球が上向いているメリーが聞いてきた。
「いや、だから今日はちゃんと朝から一緒に居たよ?馬車も一緒だったし。今だって一緒に居るじゃん?」
レノアの言葉でメリーは撃沈した。
「はるたん……じゃあさ。レノ様にぎゅっとお姫様抱っことか、抱きしめられなかった?」
今度はユアがひくつきながら聞いてくる。
「いや……それは。あったけど。」
なんか答えるの恥ずかしいな。
「抱きしめられてどう思った?胸がドキドキとか安心とかなんかない?!」
珍しく必死な形相でユアが叫ぶ。
「いや……安心感はあるよ。なんて言うか……これが、お父さんみたいな感じなのかなぁって……。」
レノの腕の中は確かに落ち着く。
ただ、あの顔と耳元で囁かれる声はイケメン過ぎるせいで酷くドキドキはしてしまうけれど……。
「……ダメだわ。これは重症だわ。」
ぽわーっとレノの事を考え赤くなってるレノアに対してユアは廃人の様になっていた。
「はるたん?はるたんはそもそも、レノ様を好き?愛してる?レノ様とピー--して、ピーーーーーーーーなことされて、挙げ句ぴーーーーーーーーーしても良いと思ってる?男と女の最終的な結末を迎えてもいいと思ってるの?」
突如R15に完全に引っかかるような、卑猥な単語を連発しまくりあっちゃんが叫んだ。
「あ、あっちゃん!?え?俺は、俺は中身男だよ!え、そんな…!男同士で……いくらレノとでも。や、レノと……。いや、レノが……。レノなら……、いや……それは……。」
レノレノとレノの名前を連発しながら、完全に真っ赤になりあわあわし出すレノアをみて、女子3人は真っ白く固まってしまっていた。
ここまでお読みくださりありがとう御座います。
レノアさんはニブニブ。
レノさんはカビカビ。




