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青い鳥

 俺がエレク家に連れてこられたのは4才の頃だった。それまで俺は母と2人暮らしだったのだが、突然の流行病で母は死んでしまった。母が死んでしまえば当然身寄りがなく今思えば4歳の俺は路頭に迷っていただろう。

 だけど、母は自分の行く末がわかっていたんだと思う。最後に黙って母が大切にしていたネックレスを俺にくれた。

 母の死後直ぐにエレク家の主人が迎えに来てくれた。聞けば母から手紙を貰い俺を託されたと言っていた。

 エレク家の主人は俺のネックレスを確認すると取り上げる訳でもなく、これは誰にも見せたり言ってはいけないと固く約束させられただけで俺に持たせてくれていた。もちろん今もその約束は守っている。

 母の手紙のおかげなのか、エレク家の主人の人柄なのか屋敷では平民として過ごすように言われた以外は本当に何不自由なくすごさせてもらえていた。6歳になると教養は必要だと身分を偽り学校にも入れさせてくれた。本当に感謝しかない。

 それでも唯一エレク家で過ごしにくい事は一つだけあった。


 それは、同い年のレノアお嬢様だった。

 初めてあった時は絵本の中の天使が舞い降りていたのかと思った。それに小さくて小動物のリス見たいで可愛くて、でも触れたら壊れそうで。

 可愛い過ぎてどう接して良いか未だにわからない。

 まして女の子と話す機会がなかったから話しかけられると戸惑ってしまって変な顔をしていたんだと思う。それでも一生懸命話しかけてくれてきたレノアお嬢様を心の中では何時も勝手にリスと呼んでいた。

 

 ある日食堂を通ると美味しそうなおやつがおいてあって甘いものが好きなリスにあげたら喜んでくれるかと思って手を伸ばしたら食堂のおばちゃんにダメよと止められた。

 聞けば古くなっていたらしく先ほど食べた使用人さんがお腹を壊してしまい捨てなきゃいけないものだったらしい。

 お菓子は諦めたけど、リスに何かしてあげたくて散歩していたらリスがさっきのお菓子を手にこちらに向かってきていた。

 「レノ!おやつおいてあったから一緒に食べよう。誰も居なかったけど持って来ちゃった。」

 ニッコリ笑って差し出すリスとは反対に真っ青になった俺は慌ててお菓子を地面に叩きつけた。こんなの食べたらリスがお腹を壊してしまう。

 どうして直ぐに捨ててくれなかったんだ!


 本当はリスの為にしたことだけど、口下手な俺が悪かった。リスは酷く傷ついた顔をしてそれ以来話しかけてはくれなくなった。


 6歳になり一緒の学校に行き始めた頃からリスと俺の身長にはだいぶ差が出てきた。だから必然的にいつもリスを見下ろす感じになってしまったこともありリスは益々俺に近寄ってくれなくなった。やっと近づいてくれてもいつもプリプリ頬を膨らませて俺より小さい手足をパタパタ俺に当てて来た。

 それが凄く可愛くて。

 でも上手く表現出来なくて苦しかった。


 そこからもどんどん年を重ねるごとにリスと俺の身長差は開きリスは益々触れたら壊れるんじゃないかと言うほど華奢で綺麗になっていった。


 だけど、15才になるとリスはあろうことか同じ学校に途中からやってきたこの国の王子に恋をしてしまった。

 しかも、侯爵令嬢の立場を上手く利用していつか婚約するという口約束までしていた。

 まぁ、リスが幸せならそれでいいと傍観していたら、王子は16才になると編入してきたアノード子爵令嬢に恋をした。俺にとってはラッキーだったのにリスはプリプリとアノード嬢に突っかかるようになった。

 代わりに俺には見向きもしてくれない。

 檻があったらそこにリスを入れて俺だけにプリプリ出来るようにするのに。身長差で顔に手が届かないからしゃがめなんて可愛いこと言われた日にはもう、本当に嬉しいのに俺。

 リスはわかってない。

 エレク家の使用人達なんて俺がリスにペチペチされて喜んでるのがわかるみたいで、変な趣味に俺が走らないようにやんわりとリスから遠ざけられていた。ロゼッタさんだけは露骨にリスを遠ざけてくるし。


 だけど、この間凄いチャンスが俺に到来した。

 なぜかリスは男子トイレにアノード嬢を連れ込みそして倒れたらしい。知らせに来てくれたアノード嬢はなぜか水浸しだし。

 状況はさっぱりわからないが青い顔をしたリスをとにかく早く医者に診て欲しくて抱き上げて馬に乗り込み屋敷に連れて帰った。 


 あれからリスは一週間程全く部屋から出てこなかった。目覚めるまでは心配でたまらなくてその日は傍に居れたけれど、それ以降は俺はリスの部屋には行けないし。

 どんより過ごしていたら部屋から出てきたらしいリスが俺を見つけて近づいてきてくれた。


 久しぶりにペチペチしてくれるのかと思いきやリスは謝ってきたり、俺と言ってみたり、今までにない口振りになったり、果ては殴れと言ってきた。

 (意味がわからない。) 

 そう思って口に出せばリスは余計に怒って早く殴れと催促してくる。しかもご丁寧にプルプル震えながら目をつぶって歯を食いしばってる姿なんてもう!

 なにこれ、何の生き物この小さいの!

 すっげえ可愛い。

 思わず顔がにやけてしまうのを必死に押さえるのに苦労した。リスに変態だと思われてこれ以上避けられたくない。

 ずっとプルプルを見ていたかったけど、リスが可愛そうだから優しくデコピンしてみたらリスは鞭打、鞭打いいだした。

 リス本当は鞭打して欲しいのかったのかな?後で内緒で優しい鞭打の練習しておこう。

 そんなことを思っていたら思いもかけずリスから可愛くプレゼントを貰った。


 嬉しすぎる。

 俺……明日死ぬのかな?

 リスからのプレゼントが嬉しすぎて顔がにやけてしまったのかも知れない。きっとそのせいでリスが引いたんだと思う。

 去り際リスがもう俺と関わらないと言ってきた。


 ………あり得ない。

 やめて……それ。本当凹むわ。

 落ち込みながらもリスから貰ったプレゼントを開ければそこにはブルーバードが掘られた万年筆が入っていた。リスの髪色と同じ色。


 よし!これから檻と鞭を買いに行こう。

 何としてもリスを喜ばせないと!

ここまでお読みくださりありがとうございます!


レノアの運命いかに!

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