は?
「レノ……ちょっとこっち来い。」
「………。」
ひとしきり事情を着替えたレノアから聞き、レイドは保健室からレノを引きずり出すと思いっきりレノの頬を殴った。
「お前……やって良いことと、悪いことが有るだろう。」
殴られて口の中が切れたのだろう。血の味が広がる。
「……。」
殴られても何も言わず無言のレノにレイドは呆れてしまう。
「あのなぁ、レノ。お前……レノアが吐いてドレスが汚れたとしても着替えなしで脱がせてどうするんだよ?しかも、レノアの手足のアザは何だあれ?」
「……。あれは……俺だ。」
俯いて答えるレノに盛大にはぁぁぁと溜息をつくとレイドは再びレノを殴った。
「お前……最低だぞ。アレじゃあレノアが可哀想だ。」
また口の中に血の味が広がる。
「解ってる……。レイド……ありがとう。俺じゃ自分を殴れないから。」
「ったく。こんな風な事させるくらいなら初めっからするなよな。こっちは手が痛いんだ。」
「すまない。エリック先生が裸でリスを抱いて居たときは本当に先生を殺してリスを汚して……。」
最後の方は小声でレノが呟くと、慌ててレイドはその言葉を否定する。
「先生は無実だからな。」
「………。」
「絶対だめだからな!」
念押しすれば渋々レノは肯く。
「あと、レノアにあんな風にアザ作るのもやめろよ。そんなことをするならお前にはもう協力しないかな。」
「わかった。リスにはもう二度としない。」
「先生にもするなよな。」
「………。」
「レノ。何度も言うが先生は無実だからな。」
チッと小さく舌打ちは聞こえたが、多分これだけ言っておけばレノが先生に危害を加えることは無いだろう。
「あのなぁレノ。レノアと本当に仲直りしたいなら真面目にゆっくりと話し合え。これ以上拗らせてたら本当にレノアは誰かに取られるぞ。」
「……いやだ。だったら俺がリスを」
「はい!ストーップ!それ以上言ったら本気で俺がお前を葬り去ってやるからな。」
ぷくっと膨れて拗ねるレノは余り可愛くない。
「お前……それは野郎がやったら鬱陶しいだけだからな。ほら、ちゃんと謝れよ。レノア落ち着いたみたいだから。あ、あと……。」
コソコソとレイドはレノに耳打ちする。
そうしてまた2人は保健室にはいっていった。
一方。
レノ達が出て行ったあといつもの女子会メンバー3人がレノアのベッドを囲んでいた。
「ゴメンねあっちゃん。ワンピース借りちゃって。」
「ううん。いいの。でも良かった。前に虐められてた時の予備がまだあって。」
苦笑いしながらあっちゃんが教えてくれた。
レノアが吐いて汚してしまったドレスの代わりにあっちゃんが自分の予備のワンピースを急遽貸してくれた。なぜ着替えがあるのか問えば、虐められていた頃ドレスを汚されることが多々あったためいつも着替えを用意していたそうだ。
もちろん今は全く虐めなんてないよとあっちゃんは付け足した。
「まぁ、またあっちゃんがそんな目に遭ったら今度こそ私たちだって黙ってないわよ!」
そう言ってリリアン姉妹は胸を叩く。
「それよりもはるたん。今ヤバいのははるたんの方よ。」
メリーが真剣な顔になり話し出す。
元々今回の事は《悪令だって~》のイベントとして起こりえた事らしい。無理矢理レノとレノアを会わせるために利用しては見たものの、好感度で起きるか起きないかは解らなかったらしい。
けれどイベントはキチンと発生した。
好感度が下がっている証拠である。
そして、このイベントが起こるのはレノルートの究極バットエンドの前触れらしい。
レノルートの究極バットエンド即ち鞭打ち死。その手前のバットエンドは歪んだ愛情の鞭打ち幽閉。
「え?でも今は幻のエンドルートじゃないの?」
レノアが首を傾げればメリーは甘いわねと眉間にしわを寄せる。
「はるたん、言ったでしょう。レノ様ルートは激ムズなのよ。ちょっとの好感度がルートを左右するの。」
メリーの話ではどうやらこの半年間の行動が好感度を下げたようだ。
(俺のせいじゃなくねえか……。)
レノアがぷうっと頬を膨らましてふて腐れるとほっぺをツンツンとあっちゃんにつつかれる。
「ほら、はるたんのその態度が好感度下げるのよー。はるたん、私達がはるたんとレノ様に協力するのは2人がお互い思いあってるからだよ。」
「なっ!思いあってなんかない!俺は見た目は女だけど、中身は男だぞ!男と男がムグッ!」
はいはいとユアに口を塞がれてしまう。
「はるたん、兎に角1回ちゃんとレノ様とよく話し合ってごらん。少なくともはるたんと仲直りしたがってたわよレノ様は。」
ユアが優しくレノアを慰める。
「そうよはるたん。それでも、はるたんがどうしてもレノ様を許せなければその時は私達がちゃんと守ってあげるから!はるたんを幽閉なんてさせないわ!」
メリーはそう言うとレノアに抱き着く。
「私だって!」
「あら、私もよ!」
それに続きあっちゃんとユアもレノアを優しく抱きしめてくれた。
「……ありがとう。」
「レノア?落ち着いたか?」
そんな時レイドがレノアに声をかける。
「うん、大丈夫。レイド……心配してくれてありがとう。」
「あぁ。レノはキッチリ絞めといたから大丈夫。」
レイドに優しく撫でられればレノアは少しホッとする。
「ほら、レノ。今度はちゃんとレノアに謝れよ。」
レイドに首根っこを掴まれた状態でレノがレノアの前に立てばレノアは思わず目線を下にしてしまう。
「レノア?レノアも少しだけでいいからレノの話を聞いてやって。もしまたなんかコイツがするようなら今度はちゃんと葬るから。」
だから、な?と優しくレイドに言われればレノアは渋々肯く。
「よし、話しは決まりだな。じゃあ後は上手くやれよ、レノ?」
レイドはレノとレノアの手を取るとカチャンと手錠をかけた。
「は?え?レイド……これ。」
「ああ、これ手錠な。事情はさっき早馬に出して伝えておいたし、鍵はスカーレット様に届けておいた。お前らちゃんと話し合えよ。」
じゃあな。
そう言うと皆はレノアとレノを置いて保健室を後にした。
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