メリーの思惑
いつもと若干メンバーが異なる4人は、頭を抱えて悩んでいた。
「そうか……そちらもそちらで。」
レイドがリリアン姉妹とあっちゃんから近況を聞いて溜息をついた。
「ええ……そうなのですよ。」
同じくリリアン姉妹の声が重なる。
レノとレノアがカビの塊とただの侯爵令嬢になって早いもので既に半年の月日が流れた。
「全く!はるたんもはるたんで頑固だから。レノ様が何とか近づくと一瞬で消えるのよ!」
あっちゃんがぷりぷり頬を膨らまして怒っている。
そんなあっちゃんを優しくレイドがよしよしと頭を撫でれば、あっちゃんは顔を赤らめて怒りを抑える。
「ちょっとそこ、何気にイチャつかないでくださる?」
メリーが溜息交えてレイド達を嗜めれば、レイドは苦笑いしていた。
「そんな事より、どうします?色々手は尽くしたのですが、全く進歩なし。それどころか月日だけはあっという間に過ぎてますし。」
ユア迄も頭を抱えて話せば、皆一斉に溜息をつく。
この半年間、レノアとレノ仲直り作戦に皆は心を砕いてきた。しかし、作戦全てがことごとく失敗に終わってばかりだった。
レノを交えて作戦会議→決行→レノアが姿をくらまし不発→レノがカビ度を増す。
レノアを交えてレノと仲直り作戦→レノアが頑なにレノとの仲直りしないと拒否→レノア姿をくらます。
無理矢理引っ張って二人に話し合いの場を設ける→突如レノア失踪→レノのカビ度アップ
レノから謝罪のお手紙作戦→手紙を見ること無くレノア失踪。
「私達も色々根回ししたのに、敵は一筋縄ではいかないのよねー。」
あー!もう!焦れったい!と再びあっちゃんは頬を膨らます。
「だいたいはるたんは素直じゃなさ過ぎるのよ!なんであんなに変なところスレてるのかしら!はるたんがそもそも失踪すると見つけるのに手間るからそれだけでタイムロスなのよ!」
ムキー!とあっちゃんのぷりぷりは止まらない。
「確かに……。レノアがあんなに逃走が上手いなんて知らなかった。」
レイドもあっちゃんに同意している。
「そうなんですよね。最近は私達がレノ様との仲を無理矢理取り持たせようとしていると解ったみたいで、はるたん私達からも姿をくらましちゃうのよね。」
ユアが呟けば再び皆は溜息を付ながら頭を抱えた。
「なんとか……なんとかあの二人が無理矢理絶対一緒になるきっかけが有れば良いのに。」
うーんとあっちゃんが頭を捻れば、ふっとメリーが立ち上がる。
「無理矢理一緒に……。無理矢理。そうね。そうよ!そうだわ!!これよ!これだわ!なんで今まで気付かなかったのかしら!!」
起ち上がったメリーは物凄く悪い顔をしていた。
ーーーーーー
「…………。先生、ここはいったい?」
「んー?ここ?ここは僕の心のオアシスだよ。皆には内緒の秘密の部屋なんだけどねぇ。」
だからちゃんと秘密にしてね。とエリック先生はレノアに内緒だよのポーズをむける。
(いや……秘密って言われても。勝手に連れてきたのエリック先生だし……。)
レノアは秘密の部屋と言われた地下室をみまわす。そこにはホルマリン漬けの標本ばかりが、ずらりとならんでいた。
レノアとレノが拗らせてからの半年間、色々事態は動いていた。
まず学年は一つ上がり、レノアとあっちゃんはゲーム通り今年からエリック先生のクラスに配置されていた。そして、レノはレイドと同じクラスではあるものの別のクラスになっていた。
そして今、レノアはエリック先生に呼び出され地下室のここにいるのだった。
(多分だけど…、今更レノルートからは逸脱しないよね?)
一応エリック先生も攻略対象者である。間違ってもハッピーエンドで、ホルマリン漬けルートに突入するのは遠慮したいところだ。
(レノルート……。)
レノを思いだし、レノアの気分は一気に落ち込む。
決して、ゲロ甘などになりたかった訳では無い。断じてそんなわけではない。
見かけは女の子でも、やっぱり中身が遙人で有るうちは男同士で恋愛なんて………。
いくらレノがイケメンでも、優しくても、レノの腕の中が何故か安心できても……時々それの中に無性に入りたくなっていたとしても。
(い、いや……いや。ないない。)
レノアは忘れようとブンブンと頭を振る。
そもそも、もうレノは自分を必要となんてしていない。
「所で先生、用事ってなんですか?」
レノアが聞けばエリック先生はうーんと頭を捻っていた。
ここまでお読みくださりありがとうございます。
メリー先生は何かを思いついた様です。




