レイドとレノ2
「バカじゃないか?ああ、それとも阿呆か?いや、クズか?」
「すいません全部です。」
「だろうな。それにしても殿下は思い切った事をされますね。婚約破棄ですか?」
レイドはレノから一部始終を聞き終え、目の前のカビの塊をあざ笑えばカビの塊……もといレノはそんなつもりじゃなかったと呻いた。
全く、不器用も過ぎるとレイドはカビの塊から目をそらして紅茶を一口ふくんだ。
「それにしても……お前、今まで自分の出生考えた事無かったのか?その形見のネックレス。普通に王家の紋章はいってるじゃねーか。ましてやエレク家程の侯爵家がお前を今まで俺らと全く変わらないかそれ以上の貴族教育してくれて疑問にならなかったのか?それに、お前とシュワルツ似てるし。」
「それはヤメテ…。」
もはやテーブルと一体化するのだろうかと言うくらいレノはテーブルに沈んだ。
「まったく……お前そんなにヘタレなら王子になる選択しなくて正解だったかもな。それより、こんな国を揺るがせる一大事簡単に俺に言うなよな。俺が誰かに漏らしたらどうするんだよ。」
ケラケラと笑ってレイドが軽口を叩けばレノはレイドをジッとみた。
「いや……お前は前から知ってたんじゃないかって思ってさ。俺がどう言う身分か。それなら今更誰かに言わないだろう?」
「なんだそれ?どうしてそうなるんだよ。」
興味を持ったようでレイドはレノの話の続きを促す。
「お前のお父様はこの国の宰相。んでもってエレク家とバース家とつながりの有るエレク家派。あと平民の俺にすら不自然な程、俺と対等に接してくれる侯爵様。」
「成る程ね……。こんなヘタレ王子にもある程度読まれるとなると俺も陰になるにはまだまだ力量不足って事だな。」
相変わらずケラケラとレイドは笑っていた。
王家に裏王家が有るなら陰にも裏王家につく陰が有るはず。最近事の本質が解ってきたことで、色々な者が水面下で動いている事も見えてきた。
レイドもその一人。
ただの平民を優しく受け入れてくれる侯爵子息様と言う訳ではなかった。むしろただのレノを守る陰になるために近づいてきたのではないかと思った時は少し悲しかったのは伏せておこう。
「大丈夫、俺はちゃんと身分がわかる前からお前と友達だとおもってるから。」
レノが何を思っているのか直ぐ解るようで、レイドは今のレノにとって救いになる言葉を投げかける。
「……ありがとうレイド。」
「はいはい。それよりお前がバース家の公爵家様になるとはなぁ。」
「今更王家にはいって新たな派閥作るなんてゴメンだからな。それなら何も波風立たないエレク家かバース家に入った方が頂いていた恩も返せる。それに……バース家ならレノアと義理でも兄妹同士の結婚にならないし……バース家の子息なら公爵家だから……公爵家だから…!」
リスからの婚約じゃなくて俺から正式にプロポーズが出来るっておもっていたのにいいいい!
再びカビの塊となったレノはテーブルと遂に一体化していた。
「お前……自分の力量不足って解らないからこうなるんだよ。レノアからでもなんでも良いじゃないか、手に入るんだから。第一お前の頭の中はレノアの事しかないのかよ。身分すらレノア基準か……。」
あきれ顔でレイドはカビの塊をテーブルからはがしにかかった。
「当たり前だろう!リス有っての俺だから!それに、お前!リスに多少はかっこつけたくなるだろう。やっと対等な身分が手に入ったんだし。なのに……話しかけたくても逃げられるし、全力で避けられてるし。俺……あの日からもう一ヶ月もリスに会えてない!リスが…リスが誰かに捕られたらどうするんだよ!あぁ、それならいっそのことリスを襲って汚して、檻にでも閉じ込めて……」
「レノ……その前に俺がレノアの為にお前を葬ってやるよ。」
まったく……このカビは目を離すととんでもない方向に騒ぎ出すなとレイドは友人に対してもう何度ついたか解らない溜息をこぼした。
「まったく……手のかかる王子だな。」
仕方ない……何とかこのカビを除菌出来るように手は尽くすかとレイドは密かにレノとレノアが話し合えるような作戦を練り始めた。
ここまでお読みくださりありがとうございます。
ヘタレレノ。




