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はぁぁ!?

 (地位は欲しい。)

 正直なレノの思いだった。

 地位すら無いのでレノの大切な小さな思い人と並ぶことは決して許されないのだと思っていた。もしも彼女が自分以外の誰かを選んだら……彼女に一生分の傷をつけてでも自分から手放したくは無かった。

 初めて会ったその時から小さな天使はレノの心を掴んで離さなかったのだ。

 けれど……今なら。

 (リスの隣で居られる。)

 多分……多分彼女はそこまでレノの事を嫌ってないだろう自負はあった。だからこそあとは隣で並ぶに相応しい地位さえ有ればとレノは考えていた。


 「……俺は。」

 けれど今更王が父と言われても…… 

 母は流行病で亡くなる直前ですら父の事は教えてくれなかった。

 ただひたすらにレノの幸せだけを願っていると優しい手で頭を撫でてくれた。

 『レノ……大丈夫。大丈夫よ。貴方はきっと幸せになれるわ。大丈夫。』

 頭に母の最後が浮かぶ。

 

 (母さんは、俺が王族に入るのは望んで居なかった?それに……)

 母亡き後レノは母を思いだし淋しい事は有るにはあったが、いつもどこか満たされていた。

 それはエレク家がレノを家族のように受け入れて支えてくれていたから。リスとは色々有ったけれどいつも一緒に居てくれたから……。

 それでも王族に入ればリスは……。 


 考えて答が出せないで居ると謁見の間の扉が叩かれ1人の従者が入ってきた。

 「人払いしていたはずだが?」

 王が威厳有る声で従者に問えば従者はかしこまり頭を下げる。

 「恐れながら王様。只今エレク家ご息女レノア様が急遽王様にお会いになりたいと来られましたが、如何程に……。」

 従者の声にエレク家当主とレノ、スカーレットが目を丸くする。

 「え?レノアが?なんで?」

 「恐れながら、どうしても取り急ぎ王に謁見したいと言われまして……。」

 そこまで聞くと親バカ全開なエレク家当主とスカーレットは一斉に王に目でレノアを通せと訴える。もちろん、王はそれに答える。

 「解った。通せ。」

 王の許可を得た従者はかしこまりましたとレノアを呼びにいった。

 「なんでレノアがここに?」

 「王?よんだか?」

 従者が居なくなった瞬間エレク家当主とスカーレットから王は問い詰められ慌てふためく。

 「いや、呼んでません!私じゃないですよ!シュワルツ?」

 王はシュワルツに声をかければシュワルツは慌てて手を振り回し自分じゃ無いとアピールする。


 (リス……?)

 レノまで首を傾げていれば外からはバタバタと足音が聞こえる。

 どうやらレノアが来たようだ。

 3人が思った通りバン!!!と扉が勢いよく開かれれば、衣服を乱したレノアが部屋へ飛び込んできた。

 「失礼ながら王様!レノは、レノは無実ですから!!」

 突如声を荒げたレノアを部屋に居た皆は口を開けて驚きの表情で見る。そんな皆の目に気付いていない様子のレノアは更に声を張って叫ぶように話し出す。そこにはもはや令嬢の優雅さの欠片もない。

 有るのは焦燥感のみだった。


 「王様!レノは、レノは無実です!王子には何もしてませんから!むしろ王子の方がレノに失礼な事ばかり言っていて!でも!レノは何にもしてませんから!私を庇ってくれただけです!レノが私の婚約者だって言うのも本当なんです!私が!私が選んだんですから本当なんです!」

 はぁはぁと肩で息を切らして叫んだあとレノアはそこで初めて皆がポカンと自分を見ていた事に気付いた。


 「え?あ?あれ?お父様?スカーレット??」

 「………リス?」


 ポンと肩に手を乗せられて初めてレノアはレノの存在に気付く。

 「レノ!!大丈夫だから!うん!俺がちゃんと王子には何にもしてないって、無実だってちゃんと説明するから!だから大丈夫!」

 レノの存在に気付いたレノアは力強くレノの胸を叩いた。(肩は身長のせいで手が届かなかった。)


 そして改めてくるりと王様に向き合うとレノは無実なんです!と叫んだ。

 「おーい。レノア?お父様話が見えないんだけど?レノア?レノアちゃーん。」

 レノアが叫んだ直後にいきなりエレク家当主が口を挟む。

 「え?何言ってるのお父様!レノが……レノがこの間シュワルツ王子に絡まれてそれでイチャモンつけられて、でもレノ何にもしてないのよ!それなのに、王子は王様を使ってレノを呼び出して罰を与える気なんでしょ!?だから今呼び出されてるんでしょ?でもレノは」

 「はい、お嬢様そこまでです。」

 レノアの口をムグッとスカーレットの手が抑える。

 「むっ!?むぐぬぐぐぐ!!」

 それでも諦めず口をムグムグさせるレノアにスカーレットは再び落ち着くように促すと軽く状況を説明しだす。

 「お嬢様、早とちりにございますよ。レノ様は実は第2王子という隠れた身分がございまして。今はただの父と子の再会の場面なだけです。レノ様が罰せられる事など何も有りませんよ。」

 そう言って優しくスカーレットが微笑めばレノアのムグムグは止まる。そして、それを見たスカーレットはそっとレノアから手を離す。 

 「あ、なんだ……。私……さっき他の人からレノがお城に呼び出されたってきいたから。その……この間のシュワルツ王子との事かと思って………………………って!ええええええええええええ!!!なにーー!!レノが王子ーーー!!?はぁぁぁぁぁぁあ!?」

 目を見開いてレノアは再び叫んだため更に再びスカーレットに口を優しく塞がれてしまうことになった。


 「全く……お前達2人は一体どう言う子育てをしてるんだ」と言うスカーレットの小言はレノアの口を塞がれてもなおやまないムグムグに掻き消されてしまった。

ここまでお読みくださりありがとうございます!



ブックマークありがとうございます!

頑張ります!

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