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 「っ!貴様……お前見たいな平民がレノアの婚約者?片腹痛いわ!」

 王子はすっと立ち上がりレノの襟首を掴もうとするがレノが手を払いそれを許さなかった。

 「いえ、今はエレク侯爵家の子息でございます。シュワルツ殿下。それに、婚約はレノア様が望まれたものです。」

 「「!?」」

 レノから発せられた言葉に王子とレノアは片方は真っ白になり、片方は真っ赤になり反応する。

 「れれれれれれ!」

 慌てふためき思わずレノを見たレノアの唇をレノは目を細め微笑むとそっと親指でなぞる様に塞ぐ。レノのたったそれだけのその動作はレノアの心臓を跳ね上げ黙らせるのに効果てきめんだった。

 (レノのクセに!レノのクセに!レノのクセに~~~!)

 ちょっと格好いいじゃないかこのイケメンめ!と毒にもなっていない毒づきをしてレノアは思いっきり顔をレノの胸に埋めてしまった。

 「くっ!貴様口答えするとは!それでも貴様はもとは平民で変わりは無いではないか!それが王族に楯突くのか?」

 王子は今度こそレノの襟首を強く掴みひっぱるとレノの襟首のボタンは外れ1つのネックレスが露わになる。

 「っ!お前!これは……!」

 そのネックレスを目にした瞬間シュワルツ王子は驚きで目を見開きレノの襟元から直ぐに手を離すと後に後ずさった。

 「お前!それをなっ!!!」

 何かを言いかけて突然シュワルツ王子は床に沈む。そして、レノの胸に顔を埋めていたレノアは突然の静けさにハタッと我を思いだしレノの腕の中から抜け出して静かになった原因を見つめ慌てふためいてしまった。


 「ゆ、ユア!おまっ!?え?王子……。」

 そんなレノアをみたユアは床に沈んだ王子を踏みつけてレノアに駆け寄る。

 「はるたん!大丈夫!?ゴメンねこのヘタレが悪さしてたみたいで!」

 再びユアは片足でシュワルツを踏みつければシュワルツは心なしか笑っているようにも見える。


 シュワルツが床に沈んだ理由。

 それはユアによる急所の襲撃。


 (ま、まさか……。まさか……。ユア……。)

 コイツは腐ってもこの国の王子……。

 最近の若い子は恐れを知らないらしい。思わずレノアは半目になってしまう。


 「はるたん。このおばかさんには後できっつーーーくお仕置きしておくからね。ごめんね迷惑おかけしました。」

 うっとりと微笑むユアに、やっぱり嬉しそうに見えるシュワルツ。

 鞭に打たれたい姉に、きっとユアは鞭を打ちたい妹なのだろう。そしてシュワルツは……。


 引きずられてレノア達から遠ざかるシュワルツと引きずるユアの背をみて、レノアは渇いた笑いで2人から目をそらし遠くを見つめた。

 (このゲーム考えたヤツ、SM思考過ぎるだろ。)

 

 「……。はぁ……なんか疲れた。もう帰るわ。」

 レノアが独り言に近い呟きを落としライブ会場を後にしようと背を向ければすかさず再び体はふわりと宙に浮いてしまう。見ればレノに抱き上げられている事に気付く。


 「へ?あ、レノ!」

 「…………顔色悪いから。」

 「いやいやいやいや!全然全然全く悪くないから!!」 

 慌てふためくレノアを無視してレノはレノアをお姫様抱っこしたまま会場を後にした。




ーーーーー

 「あの……自分で座れるんですけど。」

 馬車の中ではいまだに抱きかかえられているレノアはげっそりとした顔をしてレノを見上げる。

 (こんなの堂々としたセクハラじゃんか……。)

 レノから逃れようと身体をバタつかせればしっかりと抱き締め直され、その腕の中からはでられないで居た。

 

 「………。」

 「おーい。無言?なに?無視?」

 「………。」

 「おーい。お前、行きは石化してたのに今は何でそんなに生き生きしてんだよ?」

 「………。」

 しれっとレノアを抱き続けるレノにレノアは思いっきりため息をつけばレノはようやくレノアには表情が見えない様に背けるとささやく。

 「アイツに触られてるのが嫌だった。」

 「アイツ?あー……シュワルツ王子?」

 レノアがレノに問いかければレノはコクンと首を動かす。

 (そう言えば、レノもアイツに掴まれてたもんな。)

 うんうん。男があんなに急接近して掴んできたら嫌だよなー。何たって男同士で近づき取っ組みあうような形になれば誰だって良い気分では無いだろう。それがいくらイケメン同士でも所詮男同士。

 レノアは妙に納得してしまった。


 「でも、レノがアイツに掴まれるのと私を抱っこしてるのと関係ってある?」

 やっぱ、コイツの考えがよくわかんない。男同士の後の口直し見たいな感覚で近くにいたレノアを抱いているのだろうか?だとしたら何とも居たたまれない。


 そう思いレノアが呆れた顔をすればレノは眉間に皺を寄せて無言でレノアを見つめる。

 「何よ?」

 「………別に。」

 フィッと顔をレノからそらされればレノアはぷくっと頬を膨らせて怒る。

 「別にって!だったらおろしてよ!」

 聞き入れては貰えないだろうけれど一応抗議はしてみるも案の定状態は変わらない。

 レノアは諦めてこちらもだんまりを決めてやると目をつぶった。

 (だけど、何だかんだいってもレノの腕の中って案外気持ち良いんだよな……。)

 目をつむりながらレノアはふと思う。もし、遙人に父が居て抱き締めて貰えていたとしたら、父親とはこんな感じなのだろうか?

 レノアにも父親はいるが、レノアでもこんなふうに抱き締めて貰ったことはない。勿論だからと言って愛されていないとは思えないほど愛されている実感はあるのだが…。

 (くそっ……眠たくなって……きた。)

 

 心地よく揺れる馬車、心地よい腕の中。

 レノアは意識を手放した。





 「………リス?」

 しばらくして目をつむったまま静かになったレノアを見てレノは絶句した。

 (なんで……なんで、毎回毎回コイツはここで寝るんだ!)

 すやすやと小気味よいリズムでレノの腕の中で寝息を立てているレノアにレノが理性と格闘しながら悶えて居たのはまた別のお話。

ここまでお読みくださりありがとうございます。

誤字報告いつも助かってます。ありがとうございます!見直しも頑張ります!


皆さん台風大丈夫ですか?

警報は良く聞いて動いてくださいね。

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