頭ポンポン
「………。」
「………。」
「………。」
「………。」
「………。って!なんでこんなに皆さん静かになられてるんですか?」
「確かに……。やることが無いなら帰っていいか?」
先陣を切ってあっちゃんは沈黙のなか声をだす。それにレイドが続けばリリアン姉妹も諦めていため息をつく。レノアとレノの仲直りに一役買おうと皆で集まったのは良いが結局2人はだんまりを貫くため、皆が皆声を出せないでいた。
「まぁ……、はるたん達はゆっくり話し合っていってね。私達はこれからライブだからもうすぐシンが迎えに来るのよ。」
そう言ってガタンと席を立つメリーは面倒臭そうな顔をした。
「そうそう。それに今日は………シュワルツ様も見に来てくれるみたいで。」
ポッと顔を赤らめるユアの様子からして意外にシュワルツとは上手くいっているようだ。というか、シュワルツは鞍替え早かったなぁとレノアはコッソリ息を漏らす。
(まぁ……今はそんなことよりも。)
チラリと気まずそうにレノアが視線をそっと向ければどんよりとした男が1人そこに座っていた。
「それなら私も久しぶりにメリー達のライブ見に行こうかな。そーんな鞭を持って裸で歩き回る変態となんか一緒に居たくないから。」
辛辣な言葉を発してレノアは頬を膨らませるとプイッと背を向けメリー達の傍に駆け寄っていく。
一方レノアの一言一言が、レノにグサグサと突き刺さりレノは俯いて動けなくなっていた。
そんなレノの様子をみて全くとレイドはため息をつくと
「レノア?もうそろそろそのぐらいにして許してやれ。レノだって別に裸になりたかった訳じゃ無くて偶々服が水浸しになってたから脱いで絞ってただけだろう?そこに突進したのはレノアだし、少し理不尽じゃないか?しかも偶々捨てようとしていた鞭を持ってただけであのあとレノはちゃんとアレ捨ててたぞ?」
レノアに近づきレイドは頭を優しく撫でてやる。
「な?良い子だから。レノアだってぶつかった事をしっかり謝ってないだろ?レノはかれこれレノアの無視に14日位耐えたぞ、しかもちゃんと謝ってたはずだし?」
それに……
レノのこの状態は正直厄介なんだよとはレイドは口にこそしなかったのだが、眉間に皺を寄せて思っていた。この約2週間ほどの間にレノは毎日レノアに無視され続けずっとどんよりしていた。
おかげで常に注意力散漫なレノのフォローは全てレイドが主に行う羽目になっていた。
「でも……ぶつかるぶつからないの前にレノは色々セクハラまがいなことしてきたし……。」
レノアの頭には胸を触られたことやら、ベッドで添い寝やら裸を見られたことやら走馬灯のように蘇ってくる。それだけで充分顔は赤くなり思わず顔を覆ってしまう。
「セクハラ?」
「あ、えっと、と、とりあえず!レノみたいな変態と一緒に居るのはもう嫌だ!行こうメリー!」
レノアはメリーの手を取るとその場を後にした。
「全く……。」
頭をガシガシとかくとレイドは大袈裟にため息をついて魂が飛び出しかけているレノにそっとささやいた。
「このままだとレノアがライブ会場で他の男に声かけられて連れていかれても文句は言えないよな?俺は今日はアノード嬢を送って帰らなきゃ行けないからレノアの面倒は見れないぞ?」
「!」
やっとガタガタと立ち上がりレノアの後を追い掛けるレノをみてさらにレイドはため息をつく。本当にアイツの頭はレノア一色なのだとしみじみ遠くを見つめてしまった。
「幼なじみも大変ですね。」
渋い顔をして遠くを見つめているレイドをみてアノード嬢はクスクスと笑っていた。
「そうだな。あの2人は本当に手がかる。さて帰りますか。送りますよ?」
レイドがそっとあっちゃんに手を差し出せば少し考えてあっちゃんは手を取らず頭を横に小さく振る。
「レイド様。もう、何か起こることはないと思うんですが……。いつもお手を煩わせてしまって居ることが申し訳なくって。」
あっちゃんがうな垂れればレイドはあっちゃんの頭をポンポンとなでる。
「俺が好きでしてるだけ。というか、まだ一緒に居たいかな。だめか?」
優しく顔を崩すレイドの顔はとても美しい。思わずあっちゃんは頬を赤らめつつも見つめてしまう。
「いえ…。その……。おねがいします。」
満足げにレイドは笑うとあっちゃんの手をとり2人はゆっくり歩き出した。
ここまでお読みくださりありがとうございます。
ちょっと今回短めでした。




