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上半身裸と鞭

 ぐぬぬぬぬ。

 ぐがががが。


 「や、やめろ。あっちゃん……。」

 「い、いやよ。は、はるたん。」


 レノアとあっちゃんはキスをするしないでアレからもめていた。

 「全く……、私ゲームの中のアノード嬢割と好きだったのに。清楚で可憐で、なのに芯があって。」

 「あら、芯はありますよあっちゃんは?まぁ、中身を見たら清楚で可憐は吹き飛びますけど。」

 横目でレノアとあっちゃんの小競り合いを見ながらリリアン姉妹はほのぼのとお茶をすすりだしかれこれ1時間程になる。

 ポーンと口にクッキーを放り込み飲み込むとメリーは勢いよく起ち上がる。

 「はるたん!あっちゃん!キスをするなら思いっきりして頂戴!」

 「なっ!メリー!!」

 レノアが慌てふためくとメリーはあっちゃんに羽交い締めにされているレノアに所に近づき呟く。

 「はるたん?レノ様のルートに入って婚約者になったって事はとりあえずこのままで行けば死ぬって事はないのよ?有っても上半身裸鞭打編だけよ。それならあとは目指すは幻ルートでしよ?」

 ニヤリと笑うメリーはレノアにビシリと指をさす。

 「残念ながら私には幻ルートの入り方は解らないのよ!だけど、上半身裸鞭打編ならば解るからそれと違う行動を取る事に意味があるのよ!」

 指を指した手を握りしめ今度はがっつポーズを取るメリーの背後にはほとばしる炎が見える気がする。

 「いや……意味が……。」

 解らないとレノアがうな垂れながら答えようと思うとすっとレノアへの羽交い締めは緩められる。

 「ナルホド!そういう事ね!とにかくやりたいようにやってレノ様とはるたんを応援していけばいいのよね!イベントも今までとは違う方向で攻めればいいわけね!」

 羽交い締めをやめてあっちゃんは嬉しそうにポンと手を叩く。

 「だから意味が……。」

 「そういうことね!それなら……。」

 すっとユアが立ち上がりレノア近づくと顔を両手で包みそっとキスをする。

 「「!?」」

 それをみてメリーはニヤリとする。

 「ウフフ。こんなに色んな人とキスをするイベントなんてきっと上半身裸鞭打ルートにはないんでしょ?これもきっと何かに繋がる悪あがきになるかもですよ?」

 クスクスと笑いながらユアがレノアをツンとつつくとだからってキスじゃなくても良いんじゃない?とレノアはがっくりとうな垂れる。

 

 「流石ユア。飲み込みが早いわね。」

 メリーもクスクスと笑うがあっちゃんだけはぷくっと頬を膨らまして私もはるたんとキスしたいーー!と叫んでいた。


 

 ーーーーー


 レイドにがっつり引かれながら鞭打ちの危険度を示唆されたレノは鞭を持ちながら屋敷の庭をプラプラ歩いていた。

 (いったいどこにこれを捨てよう。)

 屋敷の誰かに破棄を依頼しようとしたらレイドにお前の趣味を疑われるからやめておけととめられた。そのため屋敷の人に頼むに頼めず、かと言って部屋に置いておきレイドの様に万が一リスに見られたらと思うといてもたってもいられなくなり仕方なく捨てる場所を求めていたのであった。

 

 レノアに引かれる、それはすなわちレノに取っての死。

 いっその事もう自分がどう思われようと目の前にいる水やり中の庭師に何かに使ってくれと無理矢理押し付けてしまおうかとぼーっと眺めていたのだがそれがいけなかった。 

 「っ!レノ様!退いて下さい!」

 「!?」

 突如猛スピードでこちらに向かってダッシュしてくるアノード嬢が叫ぶも時既に遅し。

 アノード嬢とレノは思いっきりぶつかりレノは情けないことに弾き飛ばされてしまった。

 一方レノとぶつかりバランスを崩しつつも体制をキープしたアノード嬢は再びごめんなさーいと軽く誤り再び走り去って行く。

 「?何だったんだ?」

 尻もちを尽きつつ唖然としてアノード嬢の去って行った方向を見ていたら突如バシャーと頭上から水がかかりレノは更に呆気にとられた。

 服がびしょ濡れだ……。

 「うわー!すいません!そこに居るのが見えなくて!!」

 真っ青な顔をした庭師はぺこりと頭を下げて震えている。レノがびしょ濡れになったことに直ぐさま気付いてくれたらしい。

 気にしないでくれとレノも軽く会釈して庭師に気を遣わせないように出来るだけすぐにその場を後にし、庭師の目に入らない隅に身を隠すと身体に張り付く濡れたシャツを脱ぎ絞った。

 (何してんだ俺……。)

 絞ったシャツを着るには冷たいが、水を滴らせたままで屋敷に入れば他の人間に迷惑をかけてしまう。かと言って上半身裸のままで着替えのためとは言え屋敷をうろつくのもいくら男でも体裁が悪い。

 仕方ないと、絞るだけ絞ったシャツをパンパンと叩き再び羽織ろうとすると今度は聞き慣れた声が近づきながら叫んでいることに気付き何事かと手を止め省みれば、運が悪いことに今度はレノアが突進して来る羽目になってしまったのだ。

 

 「っ!」

 レノアはアノード嬢と違いレノに気づかずダイレクトに突進をかましてくれたおかげでレノはレノアに組み敷かれる形で2人で転ぶ羽目になってしまった。

 「いってー。って。レノ!ゴメン!あっちゃん追い掛けてて見えなかった!」

 突然組み敷いて来たにしては軽い謝罪をしてレノに向いたレノアはなぜかガタガタと震えて叫び出す。


 「れれれれ、レノ!そそそそれ!それは!!ははははははだか!!裸!しかもむむむち!裸に鞭!」

 しまった!とレノが咄嗟に身体の後に鞭を隠すも時遅し。レノアはバッチリ気がついたようだ。

 「ちが!リス!これは!」

 レノが慌てて弁明しようとした時レイド率いるリリアン姉妹は2人の光景を見て絶句してしまった。

 上半身裸の鞭を持ったレノに跨がるレノア。


 「あ、はるたん……。この光景……上半身裸鞭打編にあったスチルに似てるかも。ってか!レノ様はだかー!!」

 鼻血を出して倒れたメリーのその一言でレノアは俯きさらに小刻みに震える。

 「リス?」

 俯き震えるレノアにレノはそっと手を伸ばせばその手は払いのけられる。そして、目にいっぱい涙をためたレノアはすっと立ち上がりレノから離れるとレノを冷ややかな眼差しで捉える。

 「レノ……二度と近づくな。お前との婚約なんて絶対認めない。み、みとめないんだからーーー!レノなんて大っ嫌いだぁぁぁ!」

 泣き叫びながらレノを拒絶しレノア走り去っていってしまった。


 固まるレノと鼻血を出し倒れるメリーを前にしてレイドとユアは一瞬視線を交えると眉間に皺を寄せて2人は大きなため息をついた。

ここまでお読み下さりありがとうございます!

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