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レノの生殺し

 どれくらいこの生殺しの状態でいればいいのだろうか?

 あれから既に数時間が経っていた。窓から見える景色は既に夜。明るかった部屋も暗くなっていて、月明かりのみがレノアを照らして見せてくれる。


 レノがロゼッタに暖かい飲み物を頼んだあと、アノード嬢がメリーとシンを連れてレノアの様子をみにきていた。そこで皆に対応していたら再びレイドに会いレイドがアノード嬢を連れていき、残った2人は何時の間にかやってきたロゼッタが対応するとレノはその場からつまみ出された。そして何故かその後レノアの部屋に行くようにスカーレットに言われて来てみてから誰もこの部屋には来てくれない。

 故に部屋に明かりすらともせないで居た。 


 何度かそっと手を除けてレノアから離れようと試みたものの、その都度レノアがうっすら瞳を開けてレノの名前を呼ぶため離れるに離れられなかった。

 そんなレノの両手に包まれて数時間前の肩で息をするような熱にうなされている呼吸ではなく、まだ熱を帯びてはいるもののすやすやと寝息を立てているレノアをみてレノはコッソリとため息をつく。

 

 全く……今日はなんて落ち着かない日だ。


 きっと小説のページにしたらたった一日のことなのに12ページ位になっていて、ここだけでざっくりと一万文字以上位にはなるほどの内容だろうとボンヤリどうでも良いことを考えた。纏めれば簡単なのに……レノアがアノード嬢を守り水を被り、レノに屋敷に運ばれて風邪引いて寝込みました。でもって、レノは実は王子様でした!チャンチャンと効果音をつけて……。

 (……。アホらしい。)

 それでもひたすら何かを考えて気をそらさないことにはこのままでは理性は吹っ飛んでしまうとレノは再び現実逃避にいそしんだ。


 レノアの寝顔は何にも例えられない程愛らしい。絶対に近くで見ることも触れることも無いと思っていた。それなのに今、レノアはレノの温もりを求めてくれて傍でこうして触れていられる。それに……レイドが作った物だから大切にしていると思っていたシルバーバードのネックレスは実はレノがくれた物だから大切にしていたとも言われた。自分が第2王子だとしらなくてもレノアは自分を傍においてくれる。身分は関係なかった。

 ネックレスを無くしたと言って具合が悪いのにもかかわらず懸命に探そうとしてくれていた。

 それが嬉しくてたまらなくて、レノアの口から出る言葉一つ一つがレノを喜びで満たし、真面にレノアの顔が見れないくらいに悶えて……。


 現実逃避からのレノアの事を考えてしまった挙げ句、ふとレノアの顔を見てしまったのがいけなかった。


 長い睫毛にととのった顔立ち。柔らかそうなみずみずしい唇。

 

 (やっぱりもうだめだ……。)


 そっとレノアの顔に近くとレノは自身の唇を重ねようとした瞬間。


 コンコンコンコン。


 「失礼します。お嬢様、レノ様お夜食が……、レノ様如何いたしました?」

 

 「いや、あの、その……なんでも。あー……その、する事無いから運動でも……。」

 慌ててレノアから離れたレノはその勢いで尻もちをつく形で後に転げてしまった。

 間違ってもうっかりキスしようとしてしまったとはスカーレットを前にして言えない。

 それをスカーレットの目が鋭く捉える。


 「そうですか……。レノ様……。先程もお伝えしましたが見逃すのは一度きりですからね。」


 (スカーレット様の目が笑ってない。ってか、なんか見られてた!?)

 

 「ん…、レノ?……スカーレット?」

 急にレノの手が離され温もりを失いレノアはうっすらと気怠そうに瞼を開けた。

 「お嬢様。お加減如何でしょうか?よろしければお夜食をお持ちいたしましたのでお食べになられては?」

 レノを見つめる表情と打って変わってスカーレットの瞳は優しくレノアを見守る。

 

 「あり、がと…う。でも、まだ眠いから今日は要らない。スカーレット……レノと一緒に寝ていい?」

 

 パキン


 瞼を擦りながらとんでもない発言をしたレノアに反応したレノは一瞬で石化した。


 「お嬢様……年頃の男女が同じ部屋で一晩を共に過ごすのは如何なものかと。」

 すかさずスカーレットが諌める。

 「じゃあ、スカーレットが一瞬に寝よう。1人にしないで…。」

 

 ピシッ


 一瞬スカーレットの動きは止まるが流石スカーレット。直ぐに何事もなかったのように動き出す。

 「お嬢様。この老いぼれをその様に頼ってくれるだけで嬉しい限りです。しかし……流石にそれはご遠慮させて下さい。」

 「でも…。1人…やだ。」

 

 潤んだ瞳で駄々をこねるレノアの額にスカーレットは優しく手を添える。

 (なる程。これでは……。)

 「それでは、お嬢様。レノ様と婚約なさればよろしいんでは無いでしょうか?婚約者様で有れば多少は……まぁ、何も無い添い寝位は目をつぶれますからね。」

 「何でもいいよ。」

 ぼっーとした頭で適当に返事を返すレノアにスカーレットはニヤリとする。

 「かしこまりました。それではレノ様用のお支度を致しましょう。」 

 そう言うと固まるレノを尻目に事前に準備をしていたかのようでスカーレットはレノの準備を整えたあと肩をポンポンと叩くとわかってますよね?と柔やかに告げ部屋を後にした。

ここまでお読みくださりありがとうございます。


誤字脱字報告ありがとうございます!

ブックマークありがとうございます!

評価ポイントお願いします!


一日のことなのに12ページにしてしまったことに今更気付いた作者です。

どんだけこの一日にページを使うのか…。

レノを通して思わず呟いてしまいました。



バース家の人は昔からしたたかで腹黒です笑

リグサイド王家の血筋は昔からヘタレです笑

消してベリーサの血筋ではない笑


何の事やと言う方はお時間が有れば


バース家→今日もお嬢様は執着執事に溺愛されてます

リグサイド王家→封印されし大魔法使いは猫になって今日もヘタレ王子と暇をつぶす


を覗いて見て頂ければと……。

それぞれの家の名前だけが話と繋がってるので、特にここに出てくるキャラクターはいないのですが……。

一応CMさせて貰いました。すいません。

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