悪寒
寒い。
いったいどうすればこの寒さから逃れられるんだろう。
悪寒で震える身体を抱き締めてレノアはベッドで丸くなっていた。するとそこへ暖かい飲み物を持ったロゼッタがやって来た。
「お嬢様、暖かい蜂蜜ミルクをお持ちしましたが飲みますか?」
そう言って柔らかな良い香りのする蜂蜜ミルクをレノアの傍に持ってきてくれた。
気怠いけれど冷えた身体を起こしミルクを受け取り飲むと少しだけ身体は温まった気がする。こういう優しさは本当にうれしい。
「ありがとう。ロゼッタ……。」
しみじみと呟けばロゼッタは満面の笑みで返してくれる。
「お嬢様は色んな方に愛されてますからね。それはレイド様とレノからですよ。私からはこれです。」
そう言うとロゼッタは空になったカップを受け取りレノアを寝せる。そしてそっと暖かいお湯が入った容器をベッド内に忍ばせてくれた。
どうやら湯たんぽらしい。
「ゆっくりとおやすみくださいお嬢様。」
そう言って優しく頭を撫でてくれるロゼッタのおかげで先程までの寒さは嘘のように暖かくなった。そして、暖かくなれば眠気が襲ってくる。
「ねえ……ロゼッタ。少しだけ、少しだけで良いからそばにいて欲しいの。」
「お嬢様……わかりま」
コンコン。
ロゼッタが呟きかけたときドアがノックされる音がした。
「……ロゼッタ。開けてあげて。」
わかりましたとロゼッタが部屋のドアを開けるとそこにはスカーレットの姿が会った。
「おやすみの所失礼します。お嬢様、お体の具合は如何でしょうか?」
「うん……まぁ……何とか。」
レノアがそう答えれば、スカーレットは優しい瞳でレノアを見つめる。
「お嬢様、余りご無理はなさらないでゆっくりとおやすみくださいと言いたいところなんですが、今ご学友とおっしゃられる方がお嬢様の面会にいらっしゃってます。如何しましょう。その様子では面会はお断りした方がよろしいと思われますが……。」
スカーレットがそう言えば、面会にくる学友とは誰だろうと考えてしまう。完全に眠気を受け入れるタイミングを失ってしまった。
「うーん。せっかく来て頂いたのに帰らせるのは申し訳ないけど、万が一うつしちゃうといやだしね。所で誰がきたの?」
「それが、何やら派手な格好をされたメリー・リリアン様とシン・ラミア様でいらっしゃいますが……シン様は確かラミア家の御子息様だった気がするんですが。あの方はどう見てもご令嬢のような……。」
フウムとスカーレットが頭をひねると、メリーとシンの名前を聞いたロゼッタが飛び上がる。
「シン様は男の娘でございます!シン様は、ライジングの時だけ一万年に一度の奇跡の男の娘天使になられるんです!それに!メリー様の歌声は神でございます!ライジングは天上天下唯我独尊!神以上なのでございます!」
先程までの様子と打って変わってロゼッタは鼻息荒くまくし立てる。
「ろ、ロゼッタ?」
余りのロゼッタの興奮具合にレノアが若干引き気味に声をかければロゼッタはレノアをさらに荒い鼻息でまくし立てる。
「御嬢様は寝ててください!神には……いえ!ライジング様には私が責任を持って対応させて頂きますので、御嬢様は何も言わずに気にせずに私にライジング様を堪能させて……じゃなくて私にお任せください!あ、おそばにはスカーレット様がきっと居てくださりますわ!ね!スカーレット様!では!」
「へ?え……あ。」
ロゼッタに上手く返答できないでモタモタしているとロゼッタはスカーレットに深々お辞儀をして後はお願いしますと駆け出していた。
「やれやれ、アレは後でお嬢様のメイドとしてしごきが必要ですね。」
ロゼッタの後姿を見送りながらスカーレットは眉間に皺を寄せて深くため息をついていた。
「所でお嬢様。面会はまぁ、ロゼッタに任せるとして……お嬢様のおそばには私のような老体より同年代の方の方がよろしいかと。もしでしたらレノ様をお呼びしましょう。」
スカーレットの言葉にレノアは驚きやや、変な声を上げてしまう。
「おや?レノ様はお嫌ですか?」
スカーレットは何食わぬ顔でレノアに話掛ける。
「う……いや……。あの……レノは今はちょっと…。ネックレスが……というか、同年代ならいいってどうしてそうなるの?」
慌てて否定的な言葉をだすも、こんな寝間着姿でみっともないのでは?とレノアが慌てて身なりを整える仕草を無意識に取っている姿をスカーレットは微笑ましく見ていた。
「レノ様も凄くお嬢様を心配されてたのでちょっとお顔を見せて差し上げればよろしいのですよ。どんな姿でもお嬢様は大変可愛らしく、美しいのですから。」
スカーレットに優しく微笑まれればもはやレノアは何も言い返せない。
もう少し若ければスカーレットは間違いなくはちパラ☆できっと相当な人気のでる攻略対象になっただろうにとレノアは余計な事を思ってしまった。
ここまでお読みくださりありがとうございます。
なかなか上げられなくてすいません。




