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レイドとレノ

 見なければ良かったとレノは廊下の壁にもたれかかってうな垂れていた。その表情は暗い。


 先程当主の部屋から混乱した状態のままで出てきて直ぐに廊下の窓から反対の廊下をふらつきながら歩くレノアの姿が見えた。


 顔色が凄く悪くて、足取りのおぼつかないレノアを心配になり傍へ行こうとした瞬間……レイドがレノアの傍にやってきた。

 いったいここには何をしに?なぜレイドがいる?


 レイドの出現で思わず足を止めてしまった。それが悪かったのかもしれない。レイドはレノアに自身のスーツジャケットを掛けたと思ったら直ぐにレノアを横抱きにして部屋の方へ運んでいた。

 その間レノアは何も抵抗していなかった。それどころかレイドに抱きかかえられ、微笑みあっていた。


 俺がスーツをレノアにかけようとしたときには払いのけたのに……。

 俺には笑いかけてくれなかったのに。


 「なんだよ……それ。」

 思わず壁に激しく拳をぶつけると処置をしてしまった所から再び血がにじみ出る。そんなにレイドがいいのだろうか?

 もし、今レノアに自分はこの国の王子かも知れないと言ったらレノアはレイドではなく自分を選んでくれるのだろうか?シュワルツの時も王子と言う立場が凄く魅力的だと惹かれていた。

 ソレを自分にもしてくれるのだろうか?

 あんな風に笑ってくれるのだろうか。

 レイドではなく自分を……。

 いくら王子かも知れないと解ったところで、レイドと笑い合うレノアを前にしてレノは自信がなかった。

 結局あんなにも欲した地位さえレノアを引き寄せる役にはたたないのではないか?


 最近のレノアは前よりは接してはくれるもののレノを見る時とレイドを見るときの表情は全くちがう。あんなに柔らかな笑みは見せてくれない。もっともそれ以前は嫌々接して来る事が多かったから少しは前進してはいるのかもしれないけれど……。

 でも、どれも初めて会ったあの時のようには笑ってはくれない。


 (あんなの見なければ良かった。)


 壁から身体を離すと表情は暗いままレノは歩きだした。



ーーーーー


 「レノ?こんな所で何してるんだ?」

 聞き慣れた声にレノは反応しなかった。目を瞑ったまま中庭の芝生の上で寝転んでジッと黙っていた。

 「狸寝入り下手だなお前。眉間に皺が寄ってるぞ。」

 その声の主は反応しないレノにそのまま話掛ける。

 (今は顔も見たくない。)

 レノもそのまま無反応を続けると声の主からわざとらしくため息が漏れる。

 「その反応お前……もしかしてさっきの見てたのか?またイジけてるのか?」

 クックと笑う声がレノの頭の上からふってくる。どうやらレノの反応が面白くて仕方ないようだ。それが余計に余裕ぶっているようで面白くないし、腹が立つ。

 「お前、そのいじけ方あの時見たいだな。」

 以前子供の頃レノアが持ってきたお菓子を地面に叩きつけレノアを泣かせてしまったあと、レイドが宥めた様子を見たレノは同じようにイジけた事が有った。俺はどうせレノアを泣かせることしか出来ないと言っていたレノを思いだす。

 「仕方ないだろ?今度はお前のお姫様が熱を出してふらついてたんだから。結構具合悪そうだったぞ?」

 その言葉にピクリとレノが反応する。

 「……リスはそんなに具合が悪いのか?」

 レノが両目を開けて気怠そうにレイドを見ればレイドは苦笑いしている。

 「やっぱり狸寝入り。それにしても相変わらずレノアの話題だけはちゃんと聞くんだな。」

 「ウルサイ。それよりリスは?」

 「お前な。レノアにはそんなに強気に行かないくせに、俺には結構強気だよな。まぁ、遠慮されるよりは良いけど。」

 ケラケラと笑うレイドにレノは更に眉間の皺を深くする。

 「そんなにいじけんなよ。だいたい見てたんならお前が来れば良かっただけの話だろ?あの時だって理由を話せばレノアは泣かなかったんだぞ?まぁ、話は戻るけどレノア結構熱が有った。それなのに凄く大切な物を無くしたんだって探してたんだよ。」

 「俺は……レノアに嫌がられるから…。それより何を探してた?」

 むくりと起きるとレノはレイドに向き合う。そんなレノを見てレイドは今度は内心で解ってないなぁと思い思わず苦笑いしてしまう。昔からこの古い友人は自分の気持ちを正直に表すことも、相手に思いを伝えることにも不器用だ。特にレノアに対しては飛び抜けて不器用だった。さらに、レノアの思いを汲み取ることも苦手のようだ。

 「そうだなぁ…。直接聞いてみたら?少なくともレノの眉間の皺は採れるんじゃないか?あと、その手のケガは早めに処置してもらえよ?ああ!あと!レノア結構寒がってたみたいだからまだ熱が出るかもな。温かい食べ物か飲み物が欲しいんじゃないか?俺、そこまでロゼッタさんに頼むの忘れてた。」

 そう言えば踵を返しレノアの為に動くレノをみて再びレイドは笑った。

 「全く……手のかかる王子様だな。」

ここまでお読みくださりありがとうございます。

1回間違えて途中で投稿してしまい申し訳ありませんでした。


段々スローペースになってきましたが投稿頑張ります!

ブックマークありがとうございます!

本当にこれは励みになります!


あと、コメント貰えたら……

作品がどう見えるのかなぁーなんて気になるお年頃なもので……ゲフゲフ。

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