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ネックレス

 レノアを運んでからレノは自室に籠もっていた。この自室もエレク家の当主がレノに用意してくれた部屋だった。居候かつ平民に与えるにしてはシンプルだがもったいない位のつくりで、以前こんなに良い部屋は自分には不向きだと申し出た事があったが当主がレノの母に頼まれてキチンと育てる義務があるからと言ってそのまま使わせてくれていた。


 そして、その自室でレノは机の上で頭を抱えていた。

 レノアにキスをしてしまった。しかもレノアに意識の無いことを良いことに無理やり。

 どうしても理性を保てず遂に手を出してしまった自分に嫌気がさす。けれど、レノアに触れていられた高揚感もあり複雑だった。


 ずっと、ずっとレノアが好きだった。


 ここ数日はアノード嬢が傍に居ろと言ってくれたおかげで堂々と傍にいれた。リスはアノード嬢の所に行けと言っていたけれど、子爵からの言いつけで自分は平民だから逆らえないと言い訳すれば黙って傍に置いてくれた。

 それが嬉しくてたまらなくて、調子に乗ってしまった。リスの傍に居れるのは自分なんだと勘違いしてしまった。


 アノード嬢がトイレから出てこない時、もしかしたらリスがアノード嬢を庇って巻き込まれているかも知れないと思うと気が気でなかった。レイドはリスが居るから任せておけと言っていたけれど、何か有ってからじゃ遅いのだ。

 正直リスに任せてないでアノード嬢に関してはお前が行けよとも思ったけど、流石に侯爵であるレイドにそんなことも言えず女子トイレに向かえばびしょ濡れでリスが出てきて驚いた。

 多分リスはアノード嬢の為に自分を盾にしたようだ。それが酷く嫌だった。リスは何からも傷つけられたくない。そして、濡れて透けて見える身体も誰にも晒したくない。

 それなのに……

 リスはレイドを求めた……。

 それが酷く憎らしくて。傍に居られるのは自分だと思っていたから余計に腹立たしくて。無理やり自分の上着で包んで抱き締めて帰ってくれば怒るわけでも無く自分に抱かれながら寝入ってしまうし……。

 しかも、身体を離せば寝ぼけてではあるが自分の温もりを一瞬でも欲して抱き締めてくれた。あの時はレイドではなく自分を。

 「そんなの……保てる訳がない。」

 むしろあそこで踏みとどまれただけ頑張ったとも思えてしまう。


 レノは手の中にあるシルバーバードを見てため息をついた。レイドより爵位が上に産まれたかった。

 平民の自分には彼女に何一つ満足に贈れない。

 エレク家からは身なりを整えるためにと定期的にお小遣いが支給されていた。買おうと思えばそこから使うことも出来るだろう。けれどそれはレノのお金ではない。それはエレク家のお金だ。レノがエレク家のお金で贈ればそれはエレク家がただレノアに買い与えたのと同じに思えてしまい嫌だった。かと言ってレノがレノアに贈るために出来ることは昔から殆どなかった。

 自立したくてコッソリ仕事を初めて見たこともあったが、あっさりエレク家にバレて凄く怒られた。

 「俺がリスにやれる物なんてこれ位だよな。」

 レノは自分の首に提げられたネックレスを取り出し眺める。


 母が残して行ったネックレス。


 普段人目につけるような事は絶対にしては行けないと約束しているため1人で眺めることもしなかったネックレス。


 けれど…。

 「これを売れば……。」

 「レノ様。それはルール違反でございますよ。」

 「!」

 慌ててネックレスを隠し振り向けば、いつから居たのかスカーレットがそこに居た。スカーレットはエレク家の執事である。そして、レノがエレク家に迎え入れられた時も約束をした時も傍にいた。故にネックレスのことは知っているうちの1人だろう。

 「……スカーレット様。いつから?」

 「おや、レノ様。私には様は要りませんよ。貴方は今は侯爵子息様でございますよ。それから、先程からノックしておりましたがお返事が頂けなかったもので失礼ながら中を覗かせていただいた次第でございます。それよりレノ様ネックレスに関する約束はお守りくださいね。そしてそれは貴方の母上様の形見ですよ。」

 「わかってます……。それよりスカーレット様は何か用事がおありなのでは?」

 「旦那様がお呼びでございます。」

 しれっと要件を伝えてスカーレットはレノの部屋を出た。


 スカーレット・ロネスタ・バース様。初老に差し掛かろうとしている彼も爵位があるのになぜかエレク家の執事をしている。そして、彼の息子はなかなかの腕が立つ経営者でもあるためバース家として最近では名も知れ渡っている。噂では彼の息子は近々爵位を継がず他国に移民しようとしているらしい。

 (せっかく爵位が有るのにな。)

 レノが喉から手が出そうな位の欲しくてもどうすることも出来ない物。それなのに彼の息子はソレを捨てるなんて……。

 「バカげてる。」

 レノはため息をつくとエレク家の当主の部屋を目指した。

ここまでお読みくださりありがとうございます!

ちょっと長くなるかもなので、一旦区切って見ました。



そしていつ出そうかなーと思ってたネタ第二弾。

執事は執事で!ってことで、今日もお嬢様は執着執事に溺愛されてます。ネタ。

バース家誕生秘話的な。

すいません。調子のりました。

でも、お時間あれば是非読んで頂けたら……ゲフゲフ。


あと、補足ですが

王家>公爵>侯爵>伯爵>子爵>男爵

の理解で話は進めさせてもらってます。


もし違っててもこの世界ではこんな感じで……許してください。

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