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理性崩壊

 (まさか、ここで寝るとは……。)

 屋敷近くまでの馬車の中ではレノアは確かに起きていた。

 時々モソモソとレノを離そうと押し返してきたりブツブツ何かを文句言っていたり、さらに時々は潤んだ瞳で見上げて来てくれてたりしていた。

 余りにもレノアが可愛すぎる。なおかつ濡れているためドレスがレノアの身体に張り付きボディラインが丸わかりしていたのと、下着がうっすら透けてみえていたりとでレノは危うく馬車の中でレノアを襲いそうになってしまっていた。だけどギリギリの所でなんとか理性を保ち、抱き締め続けていた。

 それなのに……人の気も知らないで。

 屋敷の敷地内に入った頃にはレノアはレノの腕の中ですやすやと眠っていた。故にレノはレノアを部屋まで運べることになったのだが。


 濡れた身体のままでは本当に風邪をひく。そう思い、部屋に入るとベッドには下ろさずソファーへと下ろし声をかける。

 「リス、リス。このままだと風邪をひく。ロゼッタさんを呼ぶから着がえてから寝るんだ。」

 「ん……。寒い。」

 ソファーに下ろされた事でレノと身体が離れ寒さを感じたのであろう。レノアはモソモソと再びレノに抱き着いてきた。

 「~!」

 「温かい……。」

 そう呟くと再び寝てしまうレノアに激しい葛藤を続けるレノはしばらく動けないでいた。


 (なんだこの生殺しは……。)

 レノはなんとか理性を保たせもう一度レノアに声かける。

 「リス……着がえろ。あと、これ以上理性を保てない。」

 それでもレノアは寝入ってしまって微動だにしない。もう無理だ。レノアが自分に抱き着いてくれている。自分を求めてくれている。それだけでもうレノの理性は崩壊した。

 「リス……ちゃんと言ったからな。……あとはリスが悪い。」

 そう言うとレノはレノアに決して優しいとは言いがたいキスをした。

 始めは何も抵抗してこず、なすがままのレノアも徐々に息が吸えなくなると苦しくなり酸素を求めてもがき出す。それでもレノアに酸素を吸わせず何度もレノがキスを重ねていると、もがいていたレノアの首からチリンと何かが外れ床に落ちる。その音でやっとレノは我に返り唇を離せばレノアは何度か小さく咳きこみ呼吸し始める。

 「っ!」

 自分はいったいレノアになにをしてしまったのか思いだしたレノが身体を離し、後ずさると先程落ちた物に気付く。それは、レノがレノアにあげたシルバーバードだった。あげたときはブローチだったけれどどうやらソレをネックレスにして持っていてくれていたらしい。

 (これは……レイドが作った物。俺があげたからじゃない。レイドが作ったから……。)

 そう思うとシルバーバードに無性に腹が立つ。レノはソレをそっと拾うとレノアの部屋をあとにした。




 「……様、レノア………様!レノアお嬢様!」

 グラングランと激しく揺すられてレノアは目を覚ました。

 「ふえ?あ、ロゼッタ?クシュン!」

 「もう!お嬢様ったら!こんなにびしょ濡れになったまま寝るなんて!レノもレノですよ!お嬢様が濡れたまま寝てるなんて言って何処かに行くんですもの!ほら!着替えますよ!」

 なんだかとても寒くて、気怠く重たい身体をレノアはロゼッタに促され動かす。

 「あ~ロゼッタぁ……。ちょっとヤバいかも……。」

 身体を動かすと同時に世界が歪む。


 これは、アレです。アレ。

 きっと風邪引いたってやっだわこれ。


 濡れたままで数時間過ごしたのと、あっちゃんの一件が片付いた安心感と、よくわからないモヤモヤによる心労でなのかレノアは自分でもわかるくらい発熱していた。


 「ちょっ!お嬢様!!」

 ロゼッタの叫び声が徐々に遠のいて行くのがレノアにはうっすらとわかったが、そのままレノアは意識を手放した。

ここまでお読みくださりありがとうございます!


ついにレノが!

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