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 結局彼女らの言い分としてはレノアが大好きだと離れてから気付き、戻ろうとしたら既にあっちゃんがレノアの傍にいたと。それどころかメリーやユアも居るためレノアに見向きもされず、それならばと子爵であるあっちゃんを排除にかかった。と言うことらしい。

 (結局……あっちゃんへのイジメの原因は俺のせいか。)

 そう考えればレノアはただただあっちゃんに申し訳なかった。

 チラリとあっちゃんを見ればあっちゃんは意を決したように話し出した。

 「あの……私は貴女方の気持ちよくわかるんです。はるたんに……レノア様の傍に置かせて貰えて、そして話しかけて貰えている嬉しい気持ちも。だけど、私。貴女方の気持ちが解ってもレノア様のおそばを離れる気はないんです!」 

 弱々しいながらも、はっきりとあっちゃんは言葉を紡ぐ。


 「私!レノア様が大好きだからレノア様が幸せになってくれるように少しでも協力していたいんです!だから、もし貴女方もレノア様を大好きで仕方ないなら、私を虐めるよりレノア様が幸せになれるよう協力していただきたいんです!貴女方もレノア様にレノ様推し隊の一員になっていただきたいんです!」

 「「「「「!」」」」」

 「え?」


 まさかの唐突な一言に彼女らとレノアは目を見開いた。しかし、何故か彼女らの瞳には輝きが宿る。

 「まさか、カサンドラ様がその様にお考えでしたとは!」

 「私どもの考えが間違っておりました!」

 「カサンドラ様!なんて素晴らしいお考えで!」

 「ぜひ我々も協力させて頂きたいわ!」

 「カサンドラ様今までの数々の非礼本当にお詫び申し上げます。」

 「皆様……。ありがとうございます!私達これで今日からお友達ですね!」

 瞳を潤ませてガシリと皆と抱き会っているあっちゃんはもう満面の笑みになっていた。

 

 (いや……全然訳わかんないから。展開おかしくない?第1、推されてどうこうなるんならハッピーエンドしかないはずでしょ。それに、レノはあっちゃんの言うことを聞くのに、こっちの話なんて微塵も聞いてくれてないし。もう、この時点でレノルートなんかバッドエンドいきじゃん。)

 若干心のすみで余計な事をと思ってしまうのはレノアが悪役令嬢仕様だからだろうか。

 (どうしてだろう。モヤモヤする。)


 けれど、あっちゃんの顔はとても柔やかでそれをみてレノアはホッとしてもいた。


 まぁ、きっかけはなんにせよこれで普通の友達を作って楽しい学園生活は送れるはず。そう思うと少し表情は緩やかになる。

 そしてレノアはキャーキャー言っている女子の群れから1人そっと外れた。


 レノアの全身はまだ濡れていてとても寒い。

 ただでさえ、あっちゃんに何か有った時に直ぐに動けるように生地が薄くて軽く、装飾のないどちらかというと地味なドレスをここ最近選んできていた。だから水を吸ったドレスはピッタリレノアの肌に張り付き熱を奪っていく。

 

 レノアがトイレから出ようと入口に向かうと、ちょうどトイレに入って来ようとしたレノに鉢合わせした。

 「リス!」

 鉢合わせして驚いたのだろう。彼はリス呼びしている。

 「レノ……ここは女子トイレなんだけど。クシュン」

 (ああ、寒くて悪寒が酷くなってきた。)

 クシャミをしながらレノアは自分の身体を抱き締める。

 「女子トイレなのは知ってる。アノード嬢が入ったきり出てこなかったから……。リス、なぜ濡れてる。」

 ……イラッ。

 (あっちゃんが出てこなかったから女子トイレに入ろうとしたの。へー。そんなにあっちゃんが心配だったの。へー。レイドが居るのに。へー。)

 濡れているレノアにレノが自分のスーツの上着を掛けようとすればレノアは思わずソレを払いのけてしまった。

 「貴方の上着なんか要らないわ。それより問題は解決したから今度こそアノード子爵令嬢の指示はもう聞かなくていいわよ。クシュン。」

 悪寒のせいか何だかレノにムカムカする。

 イライラもする。そのせいで何故かあっちゃんをアノード呼びしてしまう。今はあっちゃんと呼びたくなくて。

 通り過ぎようとすれば手首を掴まれレノへと引っ張られる。そうして不意にレノに後から抱き締められ、レノの香りや温もりに包まれる事になり思わず小さく悲鳴を上げてしまった。

 「リスの指示なんか聞かない。子爵令嬢様が出した指示だから。」

 さらに不意に耳元で囁かれたレノの言葉にレノアはさらにムカムカした。レノアの指示は聞かない。けれどアノード令嬢の指示だから聞く。

 レノアは力いっぱい押し返そうとするけれどレノはビクともしない。それどころか余計に力強抱き締められればレノアはイライラとドキドキが重なってどうしていいか解らなくなる。

 「ちょっと!レノ!離しなさいよ!貴方アノードの言うことしか聞かないならいいわよ!レイドに助けてもらうから!上着だってレイドのがいい!」

 レノアがそう言うとレノは一旦レノアを離した。だけど、レノアが振り返りレノを見れば冷たい目をしてこちらを見てくる。


 (またその目で見てくる。やっぱりレノはレノアが嫌いなんだな……。)

 レノアは小さくため息をつく。

 「それは、俺が平民だからですか?レイドが侯爵家で俺は平民だから。それなら俺が王族だったら?リスは……」

 「意味がわからない!もう寒いから、貴方はもうすぐ出てくるアノードを待ってなさいよ。」

 そう言って今度こそ離れようとすれば無理やりレノの上着に包まれ、そして抱えられてしまった。

 「さっきも言った。リスの言うことは聞かない。」

 そう言って結局抱き締められたまま馬車に乗せられ、抱き締められたまま屋敷まではこばれてしまったのだ。

ここまでお読みくださりありがとうございます!

いいとこ書き進めようかと頑張りますでふ。


遅くなりましたが、誤字脱字報告ありがとうございました!

ちょっと全力で修正かけてまわります!

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