理由がまさかの
レノアの作戦はこうだった。
子爵のくせに侯爵と触れ合うなどとあっちゃんにいちゃもんをつけてきている。それなら彼女らに正々堂々侯爵と触れあって居るところを見せつけ反感を買い、何か仕掛けて来たところをとっ捕まえてお説教しよう!ということだった。
録画も録音も出来ないこの世界では現行犯逮捕意外は彼女らを懲らしめるための決め手は無い。
無駄にレノア達が侯爵の爵位を振りかざせば弱者に爵位を振りかざしたと社交界で彼らの悪評のみが目立ってしまう。それでは意味が無い。
虐めはよくない。
彼女らにもしっかり反省して頂かなければ。
もちろんあっちゃんを囮にしなければ行けないので少し気が引けてはいた。だけど、あっちゃんは現状打破出来るならそれでもいいと言ってくれた。
「だって、レイド様やはるたんが守ってくれるでしょう?だから私は大丈夫!それより、はるたんになにかあると困るからはるたんの護衛はレノ様しっかりお願いします!絶対離れないでくださいね!なんならむしろはるたんを堕とす勢いでお願いします!」
そして…事もあろうにあっちゃんはレノ推し隊の仕事をどさくさに紛れてしっかりこなしてきた。おかげで何故かあっちゃんにレイド、レノアにはレノが必ずピッタリと傍にいた。
「レノ……私じゃなくて、あっちゃんに何か有ったら困るからあっちゃんについてて欲しいんだけど。」
「……アノード子爵様に言われたので。俺は平民なもので、子爵様の指示に従います。」
「……。いや、お前今は侯爵子息なんだけ」
「子爵様には逆らえません。」
レノアの言葉を遮りあっちゃんの指示に従うレノにレノアはため息がでる。
そもそもレノが従わなければ行けないのはエレク侯爵家令嬢のレノアでは?なぜにあっちゃんには従うのに、レノアに従わない。
(なんか……面白くない。)
ムスッとするレノアに対して何故かいつもより少し機嫌が良さそうに見えるレノにも少し腹が立つ。
(コイツはそんなにもあっちゃんのお願いを聞くことがうれしいのか……。)
隣で歩くレノをチラリと見てレノアはため息をついた。
(なんか腹立つ。)
「レノの馬鹿野郎……。」
ポソッと呟いた声はレノには届かない。
そんなこんなで数日たつ頃にやっとレノアの計画どおり彼女たちは動き出した。
レイドとあっちゃんが唯一離れる時間……。お花畑にお花を摘みの時間、そこに彼女らは目をつけたようだ。
もちろん、あっちゃんに何か有っても直ぐに対応出来るようにあっちゃんがお花畑に行く前に事前にレノアはお花畑……もといトイレの個室に入って見守る手筈になっていたので、何か有れば直ぐに助け出せる。
そんなことを知らない彼女らは直ぐにあっちゃんを取り囲むと詰め寄る。
リーダー格の女子はあっちゃんの事を壁際に追いやると憎々しげに言い放つ
「ほんっとに貴方って邪魔だわ。消えてくれないかしら?」
パチンとその子が手を叩けばどこからか水が入ったバケツを持った子が現れ、あっちゃんに向かって振り上げた。
「ちょっ!ソレはだめ!」
突如現れ振り上げた腕を掴んで制止するレノアにその子は驚きバケツを手放してしまった。
手を放されたバケツは水をまき散らしレノアにむかって落下した。
「れ、レノア様!!」
バケツを持っていた令嬢は水を被せる予定ではなかったレノアに水がいってしまった事に狼狽えていた。
もちろん周りの令嬢達もその光景を目の当たりにして狼狽えていた。
「は、はるたん!」
慌てて囲んでいた令嬢達を押しのけあっちゃんがレノアにかけよってハンカチを差し出すもソレをレノアに制止された。レノアは一歩前に進み出ると令嬢達を冷ややかに見つめ淡々と言い放つ。
「だいたい貴方達はやることが姑息なのよ。ネチネチネチネチ。やるなら正々堂々としてきなさいよ。私のカサンドラ・アノード子爵に勝手に手を出すとはどういう事かしら?」
クスリと目を細めてレノアは笑うと言葉を続ける。
「ねぇ、私にバケツの水をかけてくれた貴方。……レナプス子爵令嬢。それからアノード子爵を壁に追いやったサイモン伯爵令嬢、もちろん見ていたケティ伯爵令嬢もサランド伯爵令嬢、モナナス子爵令嬢もよ。もちろん私のアノード子爵に手を出したなら私に文句が有るって事よね?今から貴女方の言い分を聞くわ。ほら、言ってご覧なさい。」
再びレノアがずいっと前に出ると彼女らはウルウルと瞳を潤ました。最初に口を開いたのはバケツのレナプス令嬢だった。
「れ、レノア様が私どものお名前をご理解して頂いてたなんて……。私達は……レノア様に文句など恐れ多い。レノア様……。」
ポロリポロリと顔を赤くして涙するレナプス令嬢を見て、レノアとあっちゃんは固まる。
((ん?))
「レノア様!私のお名前まで!」
「私も…。レノア様が名前を覚えてくださってるなんて。」
何故かレノアに対して皆涙ぐんで喜んで居るようだった。
「私たちレノア様がお相手をしてくださらなくて……。あの日レノア様から離れてしまってどれほど後悔したことか。レノア様がどんなに尊い方だったか……。」
「私達……レノア様の元に戻りたかったのに、それなのにこの女が……レノア様から離れなくって…。」
そう言ってあっちゃんを指さすのはサイモン令嬢。
「あー……。あっちゃん、これって。」
居たたまれなくなってレノアがあっちゃんを見れば遠い目をしたあっちゃんが呟く。
「はるたん。よかったねー。メリーもユアもカップリング成立してて……。これ、カップリング成立してなければ間違いなくはるたんを巡る戦争、略してはる戦ルートだったね。」
遠い目からレノアにむけて何か諦めたような目であっちゃんは見つめてきた。
あぁ……頭が痛い。
レノアはそっとため息をついた。
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