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レノさん、レイドさん

 翌日レノアは早めに登校していた。なぜなら昨日はメリー達が居たため詳しく聞かなかったのだがレイドとのカプイベがいつ、どのように起こったのかあっちゃんに詳しく聞きたかったからだ。

 生前誰かが女の友情は薄くてもろいと言っていたが果たしてあっちゃんはそうなのだろうかと若干何かに引っかかる。

 

 もちろん起こってしまったカプイベは当然レノアは応援するつもりでいる。

 自分の幸せしか考えられなければ本当のただの悪役令嬢でしか無い。しかも、記憶精神年齢35才で有るにもかかわらず16才の恋路すら応援出来ないなど大人の風上にも置けない。

 

 レノアが教室の扉を開けようとすると中から数人の女の子の声が聞こえた。 

 「ほら!早くしないと人が来ちゃうわ!」

 「はやく!はやく!」

 「ふふふ、本当にあの子ってバカな子よね。」

 「泣いて後悔すれば良いんだわ!」

 「ほら!いくわよ!」

 

 (ん??)

 

 レノアがガラッと勢いよく扉を開けると驚いた女の子達は慌てて凄い勢いで教室をでていった。

 

 (ん?あの子達……。)


 そして1人、教室に入ったレノアは直ぐに異変に気付いた。

 

 (これは……。ひどい。)

 レノアの目の前には滅茶苦茶にされたカサンドラ・アノードの私物が散乱していた。


 ーーーーー


 放課後、レノアはレノとずぶ濡れになったあっちゃんとレイドと4人でいた。

 濡れてる理由を問えばあっちゃんはニヘラと弱々しく微笑み中庭でバケツにつまずいて水を浴びてしまったと答える。

 「んな訳ねーよ。」

 怒った口調で吐き捨てるように言い放つレイドをレノアは漆黒の瞳を細め見る。

 するとレイドはその瞳の意味を理解して話し出した。

 「前からアノード嬢は虐めに会ってたんだ。ただ、いつもレノアに心配をかけたくないからって内緒にして欲しいと言ってて。ずっとレノアには隠してたんだ。」

 「レイド様!それは!」

 (やっぱりな……。)

 朝の教室での出来ごとをレノアは思い浮かべる。散乱した私物にはご丁寧に罵詈雑言が書かれていた。 

 「そっか……ごめんねあっちゃん。ずっと気付いてあげられなくて。朝、あっちゃんの荷物もバラバラになってて。あの子達がずっとあっちゃんに意地悪してたってしらなくって……気付くのが遅くなってごめんね。」

 レノアはあっちゃんに頭を下げる。

 「は、はるたん!そんなこと辞めてよ!はるたんが悪いわけじゃないんだから!」

 慌ててあっちゃんがレノアに近寄る。

 「本当にごめんなさい。」

 あっちゃんの濡れて冷たくなった手をレノアはそっと握る。

 きっとこうなってしまっているきっかけは記憶を取り戻す前だとしてもレノアにある。

 だからこそ、あっちゃんはレノアに罪悪感を抱かせないように隠していたんだろう。

 そう思うとまだあどけなさの残る16才になんて気を遣わせてしまったのかと、レノアは自分自身が情けなくかんじた。

 「本当に、はるたんが悪いわけじゃないんだから謝らないで!私が……子爵の分際で侯爵様達の周りにまとわりつくなって……。最初は気にしてなかったんだけど。あ、でも最近ちょっと言い返せるようになったし。だから大丈夫!心配しないで。」

 明るく笑おうとしているあっちゃんの姿は痛々しくて、それが余計にレノアの心をかき乱した。

 「アノード嬢は彼女らに言い返せてはないし、最近はやることがエスカレートしてきている。だからこの間……ライブ会場に居たときだけど。アノード嬢は自分以外にもレノアに何かされるんじゃないかって、レノアが危ないかもしれないと俺達に相談しにきたんだ。」

 「!!」

 レイドはあっちゃんの言葉を否定し事の真相を打ち明ける。あの尾行の件の真相はそう言うことか。

 「あと、この間レノアが俺にプレゼントをくれた日が有ったろう?その時もアノード嬢は彼女らに……。」

 「レイド様!もういいの!やめて!嘘ばっかり!私は大丈夫なんです!」

 あっちゃんはレイドの言葉を叫ぶように打ち消した。

 「それよりはるたん、ごめんね。私がふがいなかったから……はるたんを応援するって言ってたのに、私を庇ってレイド様が傍に居てくれて……そのせいでむしろレイド様をはるたんから遠ざけちゃってて……。私の方が本当にはるたんに謝らなきゃ行けなくって。」

 そう言うとあっちゃんはポロポロと泣き出してしまった。


  (なるほど……。)


 メリーが言ってたカプイベはどうやらレイドがアノード嬢へのイジメに気付いて守っていたからおきたようだ。

 レノアは再びあっちゃんに向き合うとそっと冷たい身体を抱き締めた。

 「そんなことならむしろレイドがあっちゃんの傍に居てくれてよかったよ。大丈夫。あっちゃん。俺にはまだちゃんとハッピールートがあるから!そんなことあっちゃんは謝らなくていいよ。あっちゃんはあっちゃんのハッピーエンドを迎えなきゃ!」

 「はるたん……。」

 レノアの言葉にあっちゃんは泣き崩れた。

 レノアが自分のせいだと思わないように、そのせいでカサンドラから離れていかないようにずっと秘密にして我慢していたらしい。

 「あっちゃんから離れたりしないよ。友達なんでしょう?それよりはもっと俺を信じて頼って?」

 優しく抱き締め泣き崩れたあっちゃんの頭をレノアはずっと撫でてさすってあげた。


  

 ひとしきりあっちゃんはレノアに抱かれて泣いた頃レノアはすっと立ち上がり、レノとレイドの方へ向き合う。

 「レノ、レイド。あっちゃんを助けるためにもちょっと力を貸して欲しいんだけどいいかな?犯人はわかってるからちょっと懲らしめてあげなくっちゃ。」

 「はるたん!はるたんにまで何か有ったら!」

 慌ててレノアを止めようとするあっちゃんの両頬をレノアは手で挟むとぶにっと頬をおした。

 「あっちゃん。こう言うときは素直におじさん……おにーさんに任せなさい!君はまだ16才なんだから。辛いときは無理しなくていいの!こう言うのは35才の大人に任せなさい。それに、悪い子供をしつけるのはオトナ(悪役令嬢)の仕事だから!」

 「はるたん……。」

 「さーて!悪役退治と行きましょうか!レノさんレイドさん!倍返しでやっておしまい!」

 レノアが手を掲げ日本で認知度の高い印籠ぶら下げる某お爺さんのものまねをすればすかさずあっちゃんは反応する。

 「……はるたん。それ、なんか色々違うしなんか親父臭い通り越しておじいちゃんでしょ。」

 クスクスと笑い出すあっちゃんとレノアを尻目にレノとレイドは意味がわからなそうに首を傾げていた。

ここまでお読みくださりありがとうございます。


水〇光圀様ネタはセーフでござるよね?版権セーフでござるよね?

アウトだったら即直します。

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