王子三度
(これは、かなりヤバイかも。)
チャラチャラしている男達に囲まれてレノアは考える。
「は、はるたん。」
(こうなるんだったらレノにも来て貰えば良かった。)
レノアは背中ユアを庇いチャラ男達を睨みつける。
おっちゃんピンチじゃね?
ーーーーーーー
遡ること数日前。
突然の王子襲撃のさい庇ってくれたお礼にとレノアがユアを買い物に誘えばユアはもう一度レノアの男装が見たいとおねだりしてきた。
そこでレノアは男装というか、ボーイッシュなカッコで良ければ良いよねと気軽にOKし町に出ることになった。
ただ、この間シンに貰った男装用の衣装は破けてしまっていたし、レノアのカッコはダサいとシンに大不評だったのと、用意する時間が無かったため手っ取り早くレノに小さくなった衣装を借りたのであった。その際レノから何故服が居るか問われ事の事情を話したレノアにレノはついて行くと珍しくひきさがらなかったのだが、女の子どうしのデートだからと拒否をしていたのだ。
だけど、まさかそれを今ここで後悔することになるとは………。
ユアとレノアは楽しく町で買い物などを楽しんでいた。けれど、ユアの愛らしさに目を惹かれたチャラ男達にナンパされ、断れば囲まれてしまった。
そして冒頭に戻る。
「ねぇ、ねえ。おねーちゃんはなんで男の子のかっこしてるの?趣味?それとも本当に男の子になりたいの?それなら俺が男ってどんなのか見せてあげちゃうよー。」
チャラ男Aが頭の悪そうに喋る。それに乗じてチャラ男Bがユアに手を伸ばす。
「それならぁ、俺らの相手はこのキャワイコちゃんにして貰おうかなぁー。」
「おい!汚い手で触るな!」
チャラ男Bの手をレノアが払えば後ろでチャラ男CDEはおー!と歓声をあげてニタニタしている。
チャラ男は全部で5人。
1人、2人くらいなら隙をついて逃げられるかも知れないが、流石に5人はキツい。
しかも相手は皆背が高くガッシリしている。
(本当にヤバイかも……。)
「まぁ、そんなに怒らないで。いつまでもここで居ないで楽しーとこ行こうよぉー。ほらっ!大人しくこいよ!」
チャラ男Aはレノアの腕ををガッシリ掴むとユアから引き剥がしナイフをレノアに向けた。
そしてその隙にチャラ男BCDEは一斉にユアへと向かう。
「なっ!ちょっ!辞めろ!」
レノアはチャラ男Aの手を振り払おうとすれば痛いほど握られてしまいなおかつ喉元に冷たい刃を当てられ身動きを塞がれる。
ユアが危ない!
そう思った瞬間、ユアに向かったチャラ男達は一斉に仲良く吹き飛んでのびた。
「「!?」」
驚いて固まるチャラ男Aとレノアがユアの方に目をやればそこにはユアを守るように背中にかくし、抜剣していたシュワルツがいたのだった。
「なっ!だ、誰だてめぇ!町中で剣抜いてんじゃねぇよ!危ねぇじゃねえか!」
チャラ男Aは相変わらずレノアを掴んだままシュワルツに向かってナイフを向けながら叫ぶ。
(いや、お前が言うなよ!ナイフも充分あぶねぇよ!)
密かに心の中でチャラ男にツッコミつつレノアはユアの無事を確認する。震えてはいるものの無事な様子が見れたのでレノアはホッとした。
肝心のシュワルツはナイフをこちらに向けているチャラ男Aには見向きもせずユアの方へ振り向く。
「ケガはなかったか?」
「え?あ、はい。」
「そう、それなら良かった。」
ユアの手を優しくとりそっとその手の平に優しく口づける様は正に乙女ゲームの王子。
「え?な、なんで?」
手の平に口づけられたユアは顔を真っ赤にして狼狽える。
「この間、君にひっぱたかれてなおかつ君に言われたことを反省したんだ。それで……俺は君に謝りたくて。君の屋敷を尋ねたら町に買い物に行ったって。君の姉上がイベントが起こるからここに行けと言ってくれて。来てみれば君があんな変なのに囲まれてて俺は居てもたっても居られなくなって………ユア、君が無事で良かった。」
そう言うとさらっと王子はユアの手を掴んだまま開いている手でユアの腰を掴み身体を密着させる。
「しゅ、シュワルツ様……。」
ユアの顔はもう見ていられない程真っ赤になっている。
「ユア……君に目覚めさせられたんだ。本当に大事にしなければ行けない人は誰なのか……。私は…私は君の手のひらで叩かれたあの日から君に…」
「お、俺らのこと忘れてんじゃねぇ!!」
完全に2人の世界に入りつつあった2人にチャラ男Aは至極全うな事を言ってくれた。
「はいはーい。俺まだチャラ男Aに捕まってんだけどー?」
「ああ!はるたん!」
良かった。ユアはちゃんとレノアの存在を思いだしてくれた。
それに引き換えこのヘタレくそ王子!
何だよその睨みつけるような目!
っか!なんでこっち睨むんだよ!
「貴様!男のクセに一緒にいてユアの様なか弱き乙女1つ守れないのか!自分の事くらい自分で何とかしろ!」
(……。)
どこからツッコもう?レノアは冷たい蔑んだ目で思わず王子を見てしまう。
多分シュワルツはレノアを男と勘違いしている。というか、レノアからユアへ鞍替え早すぎねえか王子……。
「シュワルツ様!あの方は!」
ユアの言葉を遮るようにシュッと風を切る音が聞こえたと思ったらチャラ男Aはレノアの腕を放し空高く舞っていた。
「「「?」」」
レノア始め、シュワルツ、ユアはチャラ男Aがキラーンと星になったのを確認するまで思わずポカーンと空を見上げてしまっていた。
「リス!」
小動物の名前が叫ばれたと思えばレノアの前をいきなり大きな陰が覆い被さる。
「れ、レノ!?」
「リス!無事か?ケガは?」
息を切らして来たのだろう、呼吸を荒くしながらもレノアの無事をレノは確かめる。
どうやら彼は焦っていたようだ。そして、彼が焦るとレノアをリスと呼ぶらしい。
「リスって呼んでるよ。」
思わずレノアがレノにそう声をかければレノはハッとした顔をして俯く。
「リスでも良いよレノ。それよりも助けてくれてありがとう。」
レノアがレノに思わず抱きつけばレノはそのまま固まってしまった。
「あ、それより!ユア!無事か!?」
レノから離れユアに駆け寄ろうとするとシュワルツはレノアの前に立ちはだかる。
「貴様!男のクセにユアを守れなかったクセにユアに近づこうなどと、なんて破廉恥な!恥を知れ!」
(………。)
本当にこの国の王子コイツで大丈夫なのか?
思わずレノアはため息をついてしまう。
確かに今日のレノアの格好は男物のシャツにズボン。髪は短く、男らしく見えるよう編み込みで後に纏めては居るけれど……。
「シュワルツ様……。この方はレノア・エレク様です。」
多分会話を聞いてて居たたまれなくなったのだろう。ユアがレノアに助け船を出してくれた。
「ま、まさか……まさか貴様……男だったのか!?それで私の婚約者としての身分を狙っていたなんて……!」
「………。王子……いっぺん死んでくれ。」
あきれ顔のレノアは無慈悲にも王子の男の急所をねらって足を振り上げた。
「俺は女だ!バカ王子。」
レノアの足元でのたうち回る王子に小声で言い放ち冷たい目線を送る。
全く!女の子なもので貴方には同情なんて差し上げられませんわ!オッーホッホッホッホ。
仁王立ちになり高笑いするとレノとユアは冷たい目をレノアに向ける。
まあ、きにしないけどね!
あ、チャラ男達にもこれしてやれば良かったわとレノアは密かに思った。
ここまでお読みくださりありがとうございます。
チャラ男さん達名前がA、B、C、E、Eなんです。
そう言う名前ってことで爆




