シルバーバード
翌日の放課後学校でレイドにさっそく買ってきたティディーベアを渡す。なんで放課後かっていうと……。
正直渡すタイミングも理由も思いつかなかったためずっとウジウジ悩んでいたからだ。レイド、レノア、レノ、あっちゃんは同じクラスなのでいつでも渡せるし、クラスが一緒が故に渡した後の気まずさも考えてしまったりして余計に足踏みをしてしまっていたため遂には放課後になってしまった。
しかも、放課後レイドを一人っきりにして呼び出すのは中々骨が折れた。
渡したい物が有ると言えば、首をかしげ今もらうよ?と言うし、二人きりになったら渡したいと言えば理由を聞かれる。
(自分の楽しい後の人生の為って言えないしなぁ……。)
結局、理由も見つからないまま強引にお願いして今に至る。
ティディーベアを理由もなく渡してしまえばイベントも何も無く、不思議がるレイドが目の前に居るだけになってしまった。
「……レノア?なんで俺にティディーベア?」
「えー……?な、何となく。レイドにそれ持ってて欲しいなーって。お、乙女心?的な?」
「乙女心?」
理由、理由を探せ!
俺の頭は混乱していた。
人生って上手く思った通りに行かない物だ。レノアは流れてくる冷や汗を拭くためにドレスのポケットからハンカチを取り出したその時、同時に硬い金属音が床を叩く。
「あ……。」
ハンカチと一緒にしておいたレノから貰ったシルバーの鳥のブローチが落ちたのだった。
「これは……。」
レノアより早くレイドが鳥のブローチに反応して屈んで手に取った。
「あ、それ。レノから」
「レノか?」
レイドとレノアの声が同じ人物で被る。
「え?う、うん。レノがくれたの。初めてレノがくれてなんだか嬉しくって。」
「……つけないのか?ブローチ?」
「あ、うん。ドレスにつけると飾りとか何かに引っかけて知らないうちに落としちゃいそうだから。」
そう言えばレイドは優しく笑ってくれた。
「それなら、これをやるからネックレスにすると良いよ。これ元々ネックレスにするつもりだったから。」
「元々?」
レイドが言っている意味がわからず思わず首を傾げてしまう。
「?レノア、これについてレノから何も聞いてないの?」
レイドは自身がしていたネックレスをはずすとネックレストップを付け替える。鳥のブローチにはチェーンを引っかけるには丁度良い穴が空いていたのであながちネックレス用だと言われてもおかしくは無かった。
そしてレイドは器用な手つきでブローチの後ろのピンをはずす。
「ほら、出来た。」
そう言ってレイドは首に鳥のブローチだった物を提げてくれる。
「あ、でもレイドのネックレス用のチェーンがなくなっちゃうわ。」
「ん?ああ。別に良いよ?また作るよ。」
「作る?」
「ああ。俺の趣味で昔っから鍵うちしてるんだ。それで、これもレノに言われて昔作ったんだ。」
クスクスと笑いながらレイドはレノアの首元に収まったシルバーバードを触る。
「え?作った?これをレイドが??」
「うん。レノがレノアに渡したいからって。だけど自分は平民だから高価な物が買えないからどうしようって悩んでて、俺が作ってやったの。でも作って10年は経ったぞそれ?レノア大事にしてくれてたんだな。」
チョンとレイドはレノアのシルバーバードをつつく。
思わず顔が赤くなってしまったのが自分でもわかる。
「そう言えばこれを作った時レノはずっとレノアに謝りたいって言ってたよ?」
「ん?謝る?何を?」
「ん?謝られたからここにこれが有るんじゃ無いのか?」
「何にも言って無かったわ。だってほら。これ貰ったときレイドも一緒に居たじゃ無い?ほら、エリック先生の授業をサボった時。」
「え?これ、その時やっと貰ったのか??」
レイドが苦笑いしていた。
「レノア。レノから詳しく聞いてごらん。」
そう言って優しくレノアの頭を撫でるとレイドはいつもの通り優しくレノアに微笑んでくれた。
「さて、俺はそろそろ帰るよレノア?よく分からないけどティディーベアありがとう。」
「あ、うん。」
そこで、たまたまハタッと俺は気付く。
「あ、レイド!この間はなんで皆であそこに……ライブ会場に居たの?買い物してるのもなんでわかったの?」
「ん?あぁ。」
帰ろうと身支度していたレイドは苦笑いしながら作業を進める。
「レノアが次の休み次の休みってアノード嬢に呟いてたんだろう?アノード嬢は気になったらしく俺やレノに相談しにきてくれたんだ。そしたらレノまで気になったらしく結局気付けば皆でレノアの後ろを歩いていたんだ。」
ニッコリ笑ってますがレイドさん。
それは……尾行と言うんではないでしょうか?
俺、尾行されてたのね……。
ここまでお読みくださりありがとうございます!
お礼遅くなってしまいましたがブックマークありがとうございます!
感謝です!!




