平民と令嬢
「所でお嬢様は」
「だから!好きなように呼べばいいじゃん!もう過去のことは水に流してくれたんでしょ?今は同級生なんでしょ?」
「……ですが、お屋敷では俺と貴方は身分の差があります。学内ならまだしも……。」
「じゃあ、学校でお嬢様はなしね。屋敷は……仕方ないのかな?」
「……。」
「それともまだレノは私を許せない?」
「?許す?」
「ほら、あの。レノの事叩いたりしてたこと。」
「いや…、別に。」
帰りの馬車の中何を買ったか聞いてみたかっただけなのだが、なぜか不思議なことを聞かれてレノはとまどった。
いったいいつこの小動物が罪悪感を抱くほど自分は叩かれていたのかわからず言葉を濁す。
「それなら、友達なんだし皆みたいに呼べばいいよ。レノだってレイドの事は呼び捨てじゃん。」
「……お嬢様。なぜそんな急に?」
「いや……ほら。レノが将来私に対する恨みがつのってたりしたら嫌じゃん?そんな恨みが募る人生を過ごして欲しくないって言うか……。なんというか?まぁ、とにかくアレだよアレ!仲良くして欲しいなーって。それに、レイドの事もレノに相談出来ると良いなーって思ってさ。2人とも私より仲いいじゃん。」
レイドうんぬんは建前で実際はレノルートに入った時の破滅予防だという下心は秘密だけど。
レノアはレノをチラリと見つめる。
「お嬢様はレイドの何を俺に相談なさるんですか?」
訳がわからないと言う顔でレノはレノアを見つめる。
え?何をって言われても……。何を相談すれば良いのかなんて私もわからない。
「え?あ、ほら。私もう16才じゃない?王子とはこの間ダメになったけど……レイドなら上手く行くのかなー?なんておもって?あはは……。」
レノアの言葉を聞いてレノは絶句する。
(確かに侯爵同士ならお互いの爵位になにも問題はない。)
だけど……。
だけど…。
モヤモヤした感情がレノを支配する。
王子との婚約を辞めてくれたレノアにこの間ホッとしたばかりなのに。俺にだって爵位が有れば……地位が有れば。
この気持ちも報われただろうに……。
モヤモヤとした感情の中に虚しさも混じる。
所詮平民と侯爵令嬢。
優しく愛らしくレノアが名前をなれなれしく呼ぶことを許してくれたところで所詮平民のレノはレノアの恋愛対象にはなれない。
「……俺でお嬢様のお役に立てるなら何なりと。それに、俺がお嬢様に恨みを募らす事は有りません。エレク家にここまで良くして頂いたのに恩を裏切ることなとあり得ません。」
レノは光の消えた青い目を細め出来るだけ気持ちを隠すようにレノアに微笑んだ。
レイドとだけじゃ無くこの先もずっとレノアが誰とも上手くいかないと良いと言う気持ちをひた隠しにしながらレノは微笑みの仮面を顔に貼り付けた。
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