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目から鱗

 (具合が悪い……。)

 何だか目の前が暗くなる気がする。

 

 衝撃的な話の連続でレノアはグッタリしてしまった。

 「今日はこの辺にしておこう。俺……ちょっともう寝たい。無理。」

 キャアキャアと騒ぐ女子3人を尻目にレノアはフラフラと帰り支度を始めた。

 「はるたん?なんか顔色悪いよ?」

 帰り支度の途中あっちゃんが気付いてくれて結局この日はこれでお開きになった。


 「……。」

 「ねぇ、はるたん?益々顔色悪いよ?大丈夫?」

 メリー達と別れて馬車に乗り込んで帰り道中しばらくレノアは顔色悪く黙り込んでいたので見かねたあっちゃんが尋ねてきた。

 「いや……ちょっと疲れて。記憶年齢35才には色々衝撃的過ぎてさ。」

 グッタリとうな垂れたレノアにあっちゃんはふーんと唸る。

 「でもさ、はるたん?今日はゲームのエンドを聞いただけじゃん?はるたんには私らがついてるんだし全てが全てゲームのシナリオ道理にはさせなきゃ良いんだよ。大丈夫!はるたん。皆で考えよう?はるたんのハッピーエンド。」

 そう言って優しく微笑んであっちゃんはレノアの頭を優しく撫でる。

 「はるたんは1人じゃ無いんだから。はるたんが私の友達になってくれてこの世界で私は凄くすくわれたんだよ?ゲームのキャラのレノアじゃなくてはるたんに救われたの。だからはるたんだって絶対救われるよ。それにメリーが言ってたよ。ゲームの悪役令嬢だってできるもんのレノアは前世の記憶を取り戻しても他のキャラからはレノア様としか呼ばれてなかったって。でも私達ははるたんって言ってる。ね?これはゲームのシナリオ通りじゃないでしょ?1つずつ変えてけばいいよ。」

 優しく語りかけながらレノアの髪を優しくあっちゃんはなで続ける。それが妙に心地よくて、どんよりしていた気分を救ってくれる。

 「……そっか。そうだよな。あっちゃん、ありがとう。」

 あっちゃんの言葉が本当に嬉しくて思わず顔が笑みになる。そしてポスンとそのまま馬車に向かい合って座っているあっちゃんの肩に頭を埋めるとあっちゃんの手はピタリと動かなくなった。

 「あっちゃん?」

 不思議に思ってレノアが肩から頭を離しあっちゃんを見ればあっちゃんは顔を真っ赤に染め上げ硬く目を閉じ、口をギューッとしぼませていた。

 「あ、あっちゃん?」

 再び声をかければ突如あっちゃんに抱きつかれる。

 「あーん!もう!はるたん萌えよ!萌え!大好きすぎるぅー!今それしちゃったら襲いたくなる!」

 ギューッと抱き締められれば苦しくて、思わずもがけば更にぐっと抱き締められた。

 「はるたん!絶対バッドエンドもノーマルエンドも死亡エンドも回避しようね!目指せハッピーエンド!」

 抱き締められるのは苦しいけれど、今は嬉しい。

 「うん。ありがとうあっちゃん。」

 レノアもそっとあっちゃんを抱き締める。

 

 「ってかさ、やっぱりあっちゃんが王子とくっつけば良いんじゃ無い?」

 しばらく2人で抱擁していたがレノアがふと呟けばあっちゃんはあり得ないと離れる。

 「はるたん。私はヒロインだけど、王子とは嫌よ。この間の変態っぷり見たでしょう?無理。顔と地位だけじゃない良いところ。だいたいはちパラ☆のレノアだって王子の地位狙いだっただけだよ?」

 (まぁ……そうだよな。)

 「それよりはレノを鞭から遠ざけるとか、激ムズMaxシークレットエンドを狙ってみるとか、レイドルートとかいいんじゃない?レイドルートなんてレノアが入水を選ばなきゃ良いだけなんだし。」

 「!!そっか!そうだね!それならレイドルートが一番無難かも!」

 なるほど!何故気付かなかった!

 目から鱗とはまさにこのこと!

 段々俺の気分が上がっていく。ありがとうあっちゃん!

 俺!幸せのためにレイドルート目指してみるよ!敢えて未知の激ムズシークレットレノルートである茨の道は選ばない!

 それが俺、悪役令嬢レノア・エレク!


 なんだから急に元気が出てきた!

 こう言うときは悪役令嬢らしく高笑いでもしてみようかな?


 「オーッホッホホ!待ってなさいレイド・モーン!私が今から落としにかかって差し上げますから!」

 馬車の中で高笑いしてみたらあっちゃんがものすごく、とっても悲しいことに死んだ魚の様な目で俺を見つめていた。


 やめて!

 そんな目で俺をみないで……。

 俺だって必死なだけだから………。

ここまでお読みくださりありがとうございます。


レノアさんテンションおかしい。

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