悪役令嬢だってできるもん
屋敷につくとそのままあっちゃん達と別れてレノアは問答無用でレノに抱きかかえられて馬車から降ろされた。そして、そのままの格好で部屋に運ばれた。けがをしたのは腕なので自分で歩けるとレノに抗議してはみたものの、レノには全く聞き入れてはもらえなかったため若干恥ずかしい思いをしてしまった。
(こんなかすり傷なのに。)
部屋につけば、真っ青な顔をして医者を引き連れたロゼッタが直ぐにやってきて部屋からレノを追い出し処置にあたってくれた。そのためレノに小言を言う事も出来なかったが、今日の出来事を根ほり葉ほり聞かれずに済んだので少しだけホッとした。
ケガについてはかなりしつこくロゼッタから追求されたが、たまたま割れた瓶に気付かずぶつかってしまったと説明する事でその場はやりすごせた。他にもロゼッタが色々追求してきそうな雰囲気ではあったが、疲れたと言えばロゼッタは大人しく引き下がってくれた。
翌朝起きるとすぐにロゼッタが今度は男物の衣服について触れてきたものの、こちらはライジングと言うアイドルグループのライブを見に行く際に友達から衣装としていただいたと言っただけでかなりロゼッタは動揺して深く聞かれずに済んだ。
学校につけば、朝一でメリーとユアがレノアの所に訪ねてくれていた。そして昨日の出来事の謝罪をうけ、追加更新アプリについての情報はあっちゃんとともに放課後に聞く事にして一旦授業の為解散となった。
ちなみにメリーとユアは双子で一つ下の学年だったらしい。
そして放課後になり、あっちゃんとレノア、メリーとユアの4人は集まるとあのライブ会場へ足を運んで話し合いをする事になった。
「で、今現在は、はっちゃけパラダイス☆の追加アプリ《悪役令嬢だってできるんだもん》の世界なんだな?はちパラ☆ヒロインはあっちゃんことカサンドラ・アノード子爵令嬢。悪役令嬢は私、レノア・エレク侯爵令嬢。悪役令嬢だって出来るんだもんは一応ヒロインが存在していてそれがメリー嬢とユア・リリアン嬢二人の伯爵令嬢なんだな?」
「そうよ。そして悪役令嬢だって出来るんだもんは3人の前世の記憶を持った転生者って設定なの。それがカサンドラの如月兎ちゃん、レノアの青砥遥人さん、メリーの目黒幸なの。ほら悪役令嬢だって出来るんだもんが出た時は悪役令嬢ブームだったじゃない。」
「「ねー。」」
あっちゃんとメリーは二人で顔を合わせるとユアは1人だけ頬を膨らます。
「私も転生者になってたかったです。」
「いや、そんなこと言うなら俺は転生者になるなら男になりたかったよ。ていうか、転生者設定があるのなら中身が誰かの設定ももしかしてあったのか?」
「あーほら、そこはご都合主義のゲーム世界だから転生者ってだけで誰かまでは公式設定はないの。つまり、はっちゃけパラダイス☆を知っていれば誰でもいいのよ。そして追加アプリからはレノアでスタートする事もできるし、レノアルートを全クリした人だけ私達双子のどちらかを選択してゲームを進める事も出来るようになるの。」
「ん?じゃあメリーはレノアじゃなくもレノを選べたんじゃ」
そこまで言いかけてあっちゃんに肘でつつかれて言葉を止めた。
「あ、その。ごめん。」
俯いたメリーは悲しそうにつぶやく。
「ううん。もういいんだ。レノ様ルートは追加更新アプリではレノアしか行けないの。本当はメリーになった時からあきらめなきゃってわかっていたの。でもゲームのレノアでプレイしている時にレノ様を見てずっと憧れてて抑えきれなくって。貴方も転生者だって知ってたからもしかしたらレノ様を諦めるよう言えばレノアじゃなくてもレノ様ルートに行けるんじゃないかって思って。悪役令嬢だって出来るもんではあそこでシンとエリックとレノアが出会うイベントが有ったからそれでシンにお願いして貴方と私が会えるようにしたの。私もずっと…ずっと私もあんな風にイケメンにムチ打ち幽閉されたくって。でも、もういいの。シンがいつかムチ打ち幽閉してくれるって言っていたから。」
頬を赤らめながらメリーはとんでもないことを言ってのけた。
「え?むち打ち?幽閉?」
レノアは逆に青ざめる。
「そうよ。レノ様ルートは激ムズ中の激ムズなのよ。エンディングはレノ様の冷酷な復讐に終わる死亡エンド、レノ様の歪んだ愛情表現で終わる鞭打ち幽閉エンド、両思い上半身裸、鞭打ち幽閉エンド、そして、愛情Maxシークレットエンドの4種類があるのよ!少しでも選択を間違うと両思い幽閉むち打ちよ!鞭打つイケメン超カッコいいのよ!セリフも完璧でカッコよくって!」
メリーは鼻息荒く教えてくれるが、レノアはどんどん真っ青になっていく。
「そ、それ鞭打ち回避できる?」
「うーん。多分シークレットエンドまで持ち越せば出来るけど。シークレットエンドかなり攻略難しくって私も行ったこと無いの。ネットでもそこだけはネタバレ禁止箝口令でてたし。でも上半身裸の両思いむち打ちエンドで良くない?両思いだよ?あの甘々なセリフ!!鼻血でそう!」
興奮しながら答えるメリーにレノアはドン引きする。
「お、俺、絶対レノルート入りたくない。」
すいません。悪役令嬢舐めてました。
おっちゃん悪役令嬢できません。
あとで、間違ってレノルート行った時のためにレノに鞭を持たないように本気でお願いしておこう。
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