再び馬車の中
あの後、メリーが落ち着くととりあえず解散となった。レイドが用意してくれた馬車にレノア・レノ。向かいの席にあっちゃん・レイドが座る。
腕の傷はレノが服を破って止血してくれているので事なきを得てはいる。
「で、はるたん。なんでそんなかっこでこんなところにいたの?」
ニッコリ笑うあっちゃんの顔が心なしか怖い。
「あ…。や、これは。」
「これは?」
レイドまで身を乗り出して聞いてくる。チラリとレノを見ればレノはうつろな瞳でこちらを眉間に皺を寄せてみてくる。
「あ、うん。実は…シンにこの間ライブに誘われて…。で、シン達有名だった見たいで一緒に居るところをファンに見られると色々大変だから変装してきてほしいってことだったかな、多分。」
なんで変装していたのかなんて俺も聞いてないから分からないけど、たぶんそういう事じゃないかな?
「それでわざわざシンに買ってもらっていたのか?リスはそういう服が好きなのか?」
突然レノが口をはさむ。
「え?いや…。これは確かにシンが買ってくれたんだけど、どうしてこの服買ってもらったなんてわかるの?っていうか、リスって私の事?」
レノは、はっとした顔をして無言になってしまった。
「呼び名は小さくてリスみたいだから。レノにはレノアがリスに見えるらしいよ。俺と一緒に居る時もレノアの事リスって呼んでいたから。」
レノの代わりにレイドが答えるとレノはバツの悪そうな顔をして反対の方向を向く。
(俺はどうせ小さいよ!)
「ところでアノード嬢はなぜレノアをはるたんって呼ぶのですか?」
今度はレイドがあっちゃんに問うとあっちゃんはニッコリ笑って答える。
「それは女の子同士の秘密ですわ。」
(ん?なんか、肝心な所の質問スルーされてないか?)
そういわれればレイドもニッコリ笑ってそれじゃあ深く聞けませんねと追及をやめた。
「で、話は戻るけど。はるたんはシン様と服を買ってもらったりライブハウスに行ったりデートしていたんだね。私に内緒で。」
あっちゃんは再びニッコリ黒い笑顔で更に追及してくる。
(うう、なんだろう。なんか質問スルーされた挙げ句、俺が異様に攻められているふうに感じるのはなんでだろう。)
「いや、デートって言われたけど、デートっていうか。」
「楽しかったんでしょ?というか私に教えられないくらい楽しみで秘密にしたかったのよね?はるたんは。いつシン様とそんなに親しくなったかも私には教えてくれなかったわ。私、なーんにも知らなかったわ。」
「あ、でも。なんであっちゃんたちはそこにいたの?服かって貰ってるのしってるの?」
なぜか責められながらももう一度同じ質問を今度はあっちゃんに投げかける。
「はるたん。今は私が聞いているのよ?」
ニッコリ笑うあっちゃんは怖かった。
結局馬車の中では後日女の子同士の秘密の会話をするということでその場は無理矢理収めた。というか、納めてもらった。
さすがに、レノやレイドの前でゲームの話は出来ないから仕方ない。
レノとレイドは不服そうではあったがそこはスルーすることにした。
そして、結局なぜ皆があの場にいたのかはレノアも知ることが出来なかった。
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