微笑み
「分かっ」
「断る!」
「「「!」」」
突如レノアの声はレノの声で遮られた事に驚いてメリー、レノア、シンは声がした入り口を向けばそこには、ものすごく怖い顔をしたレノと微妙な顔をしたレイド、なんとなくふてくされているあっちゃんがいた。
「レノ様!」
突如メリーの顔がものすごい勢いで輝いた。そしてその反面苦虫をつぶしたような顔をシンがしたのを唯一あっちゃんは見逃さなかった。
「ああ!レノ様!ずっとずっとお慕いしておりました。レノ様!私に逢いに来てくださいましたのね!」
メリーがレノに抱きつこうと小走りになると同時にレノは華麗にメリーをよけて、レノアに近づく。その眼には光が消え、ちょっと前と同じような汚いようなものを見る見下した目になっていた。
「リス帰るぞ。」
「え?リス?」
レノアがあっけにとられ立ち尽くしているとレノは強引にレノアの手を引っ張り連れて帰ろうとする。
「ちょっ、ちょっと待てよレノ!メリーはお前の事好きだって言ってくれてんだぞ?」
レノの手を何とか振りほどきレノを睨めば、レノはますます表情をゆがめる。
「俺は彼女を知りません。好きだと言われても迷惑です。」
「レノ様!そんな……ひどい。私はこんなにレノ様が好きなのに!」
「貴方の思いは迷惑です。」
(え?そうなの?)
レノの言葉にあっけにとられレノアはぽかんとしてしまう。
しかしメリーはレノの言葉を受けうろたえたかと思うと、急にレノアを睨む。
「貴方さえいなければよかったのよ!」
そういうとメリーは近くにあった瓶を割り、レノアめがけて振りかぶった。
「姉さん?シン?何を騒いでるの?」
ドアが開きステージに立っていたもう一人のゴスロリ娘が室内に入ってきた。
しかし、時同じくしてメリーが投げた瓶の破片は怒りで手元が狂い、最悪な事にレノアではなく入ってきたもう一人のゴスロリ娘に向かって飛んで行ってしまった。
(やばい!)
そう思ったのと同時にレノアはレノをすり抜けゴスロリ娘の下に走りレノアの体で出来るだけゴスロリ娘を覆うようにかばった。
「っつ!」
瓶の破片はゴスロリ娘には当たる事はなかったが、代わりにレノアの腕をかすめた。そして瓶がとがっていたこともあり、レノアの細い腕からは血がじわじわとしたたり出していた。
「リス!」
「レノア!」
「はるたん!」
3人がレノアの下に駆け寄ろうとするのを片手で制ししてから、何が起こったか分かっていずあっけにとられて動けないでいる一人のゴスロリ娘にレノアは出来るだけ優しく声を掛けた。
「貴方は大丈夫?けがはない?」
するとなぜかもう一人のゴスロリ娘は頬を染めてはいと小さくつぶやいた。そのつぶやきをもってレノアは無事を確認しほっと顔を緩め座り込んでしまった。
「よかった。」
「リス!血が!」
先ほどまでの汚いものを見る表情は既にレノからは消え、今はレノアの腕から滴る血を見て青ざめた顔をして慌てて傍に駆け寄ってきてくれていた。
「リス?レノそれって俺の事か?ってあ、本当だ。血が出てる。まあ、かすり傷だよこんなもの。」
自分の腕を見て苦笑いするレノアをよそにレノは自分の服の袖を急いでちぎりレノアの腕に巻き付け止血する。
「ありがとう。ごめん服破かせちゃって。」
レノアが謝ればレノは別にと俯く。
「それより、勝手に俺から手を引くなんて取引しないでほしい。」
呟かれレノアはハタっと気付く。そうだよな。いくらあの子がレノを好いていたとしても俺、レノを勝手に自分の保身のための取引材料にしていた。そりゃレノだって怒るよな。
「聞いてたんだ、レノ…。まぁ、でも、ごめん。」
素直に謝ればレノは柔らかい笑顔を向けてくれた。青い瞳は細められとてもとても綺麗な柔らかい笑顔。
(レノの笑った顔初めて見た。)
なぜかレノアはレノのその笑顔から目が離せなかった。
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