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ラフレスタの白魔女 外伝  作者: 龍泉 武
第三部 ヴェルディの野望
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第二十八話 聖戦士の活躍


「フハハハ。よくやったぞ、ゲスコーよ」


 ルバッタ商会に魔道具を卸している魔道具師の儂クロスビーは、現在、上機嫌だ。

 それも、その筈。

 ルバッタ様から重大な命令「エリオス商会を失脚させろ」が上手く行ったからだ。

 部下であるゲスコーをけしかけて、いつぞやのエリオス商会で購入した魔道具が不良品であると(うそぶ)いた。

 その不良品を使って製造した魔道具が失敗品を作ってしまい被害が出た、と軒先で騒がせたのだ。

 

「本当に成功してびっくりしやした。まさか警備隊とここまで上手く噛み合うとは。へヘへ」


 ここでゲスコーは下品に笑う。

 自分の行った下手な芝居に警備隊達が上手く乗って来て、その結果、間抜けなライオネル・エリオスがしょぴかれるなった結末は大笑いに値するだろう。

 

「この成功にルバッタ様はとてもご機嫌なのだ。報酬は魔道具納入代金に上乗せをして貰っている。だから高い酒が買えるというものだ。そら飲め」


 そう言い儂は手に入れた高級酒を手下共に振る舞う。

 どうだ、俺も部下思いだろう?

 

「愉快ですねー。クロスビー様」

「まったくだ。景気付けに女でも呼ぶか。ダスコー、娼館に行って選りすぐりを三人ほど呼んで来い。儂が金を出してやるぞ」


 そう言い金貨の入った革袋を渡した。

 

「さすが、クロスビー様。今夜は破廉恥騒ぎですね!」


 そんな厭らしい笑みを浮かべたもうひとりの手下であるダスコー。

 こやつらにもいい思いをさせてやらんといけないな。

 部下想いである俺はそんな事を考えて、娼館にそれ専門の女を買いに行かせた。

 

「まったく、クロスビー様の作戦がこんなに上手く嵌るとは、素晴らしいです」

「そうじゃろう、ゲスコーよ。所詮、ライオネルなどと言う生意気な小僧は、いつかギャフンと言わせてやろうと思っていたのじゃ」


 儂は親の七光りで商会会長の座に着いたあの若造を妬んでいた。

 儂など親の職業であったこの魔道具師を継いだが、これと言って高い技術を持つ魔道具師ではない親だった。

 そればかりか親父は酒に溺れて体調を崩して亡くなってしまった後、母はこの家を見限って逃げてしまった。

 残されたのは多額の借金と大した技術を生み出さない工房だけだったんだ。

 儂が生きて行くためには卸元であるルバッタ商会の会長の贔屓が必要であり、ルバッタ会長の陰の仕事の請け負う事でなんとこかかまでやって来れたのだ。

 そんな苦労している儂なのに、あのライオネルとか言う小僧は貴族の運営するエリオス商会という場所に生まれてきただけで、良い思いをしてやがる。

 世の中はまったく公平だと思った。

 だから、あの小僧を困らせてやることに罪悪感はない。

 罪悪感どころか、ざまぁ見ろ、と思えてしまう。

 人の不幸を見るのは何と気分が良いものか。

 ああ、久しぶりに酒がうまいぞ!

 

パタン


 突然、荒々しく居間の扉が開けられる。

 

「おお、ダスコー戻ったか、早かったな。どんな女を連れてきたんだぁ?」

「・・・」


 ダスコーからは返事がない。

 そして、ダスコーの後ろには知らない人間が三人、剣を突き付けて、押し入って来た。

 その人間は黒い装束を纏っている。

 そのうちのひとりの女が低い声で語りかけてきた・・・

 

「残念ながら、私が貴方の相手をするのはベッドの上ではないわ!」

 

 

 

 話を少し前に戻そう。

 

 今日の夜半、エレイナ達三人はラフレスタ南側の治安が悪い地域に立地するクロスビー氏の工房兼住居の前にいた。

 これからどのようにして中へと踏み込もうかと考えていたところ、運良く、クロスビー氏の手下であるチンピラひとりが外に出てきた。

 これチャンスとその手下を強襲したエレイナ達は、クロスビー氏達が現在宴をやっている情報を得る。

 好機と思い、捕まえたチンピラを盾にして住居へ正面から堂々と侵入した。

 そして、その中で盛り上がっているクロスビー氏を見つける。

 

「って、てめえら!」


 ここで条件反射的に襲い掛かって来るのは、禿げたもう一人の手下のチンピラ――ゲスコー――を、私も条件反射的にレイピアを抜き、派手に突いた。

 

「ぎゃーーっ!」


 刃先が肩に貫通して、チンピラは苦痛に顔を歪ませて、地面をのた打ち回る。

 呆気ないものだ。

 

「まっ、待て、目的は何だ? 金ならやる!」

 

 クロスビー氏は一気に酔いが醒めたようで、恐れのあまりブルブル震え、金貨の詰まった財布を指し出した。

 

「破ーっ!」


 私は何でも金で解決しようとするその姿勢が許せなくなり、差し出された財布を蹴り飛ばした。

 

チャリーーン

 

 財布が宙を舞い、幾枚もの金貨が地面に転がる。

 それを全く目で追わず、私は下種なこの似非魔道具師を強く睨んでやった。

 

「私が欲しいのは貴方達の不正の証拠よ!」

「ひっ!」


 声変わりの飴を用いたことで、低くなった私の声はよけいに迫力が籠っていたのだろう。

 クロスビー氏の慄きは深くなった。

 

「ふたりとも、こいつらを縛って」

「「はい」」

 

 ジェンとアタラに指示して(こいつら)を荒縄で縛る。

 自由を奪った私達は(こいつら)の住居兼工房となっているあちらこちらを物色した。

 やがて・・・

 

「姐さん、ありました!」


 予め決めていた私の呼び名(コードネーム)でジェンから呼ばれて、彼が探し出したものを確認する。

 

「あまりしたね。それは改ざんされた魔道具です」


 私は以前エリオス商会でクロスビー氏が購入した『光の炎』なる魔道具を確認した。

 その内部を確認してみると意図的に改ざんを加えられた痕跡が認められて、これを以て詐欺の物証となる。

 

「こいつら、他にもいろいろと言い逃れできなさそうな禁制品の魔道具を製造していたようですよ」


 私はその問題ありの魔道具をここで指摘してやる。

 

「これらは違法薬物を生成する魔道具ですよね」

「ち、違う・・・頼まれて作っただけで・・・」

「あら? 誰から頼まれたと言うのですか?」


 私のその答えは凡そ予想できたが、敢えて聞いてやった。

 

「それは・・・・」


 当然だが、クロスビー氏は答えられない。

 

「・・・答えませんか、まあ、いいでしょう。それを問うのは我々の仕事ではありません。街の警備隊の仕事ですから」


 現在、私の使命はライオネル様の身の潔白を証明する事。

 それ以外は優先順位が下がる。

 追及を止めることにした私の態度に一瞬ホッとするクロスビーだが、私はこんなもので許すつもりは無い。

 ここで、レイピアを抜き、男達に向かってそれを高速で振るう。

 

「破ーーーっ!」


ビリビリビリーーーーッ


 私は目にもとまらぬ速さでレイピアを振るった結果、男達の上下の着衣をズタズタに斬裂いた。

 縛られた男達はこの技に悲鳴すら上げる事もできない。

 それはここで私の眼に復讐の怒気が宿っていたからだ。

 

「さぁて、これから少々私刑(ふくしゅう)をさせて貰います」


 男達は既に私の怒りと剣技に恐れをなしており、裸にひん剥かれて、下半身のソレは文字どおり縮こまっている。


「〇チンども、覚悟をしなさいっ!」


 淑女(レディ)にあるまじき汚い言葉を発した私。

 ここで味方である筈のジェンさんとアタラさんが目を逸らしたのは、気付かなかった事にしましょう。

 私は黒衣の内側に隠し持っていた鞭を取り出す。

 

パシーーーン


 それを地面へ力任せに打つが、その甲高い炸裂音に男達が恐怖の顔をする。

 しかし、私はここで残忍な顔で仕返しを決行した。

 

「これで何処を打たれるか? 覚悟ーーーっ!」


パーーーンッ!



 ここで、男の急所目掛けて、力一杯鞭を打つ。

 そこに慈悲の感情は沸かず、私は地獄の悪鬼のように彼ら罪人へキツイお仕置きをした。


「ぎょぉあぁぁぁぁーっ!」


 三人の男達の切ない悲鳴が夜な夜な響くが、ここはラフレスタの南地区、治安が悪い事で有名である。

 多少の男性の悲鳴が響いても、付近の住民から通報されることは無かった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 次の日の午前中。

 俺は警備隊の独房で目を覚ます。

 昨日、何箇所か殴られたところは痛んだが、それでも俺は気丈に振る舞う。

 それは誰かがここに近付いて来たからだ。

 弱っている姿は見せたくない。


「んん? メシの時間かな?」


 俺は少し強がって、訪れたその人物に応えてやる。

 

「食事の時間ではない。ライオネルさん。君は釈放される。ことになった」

「ん? 貴方はアドラント・・・スクレイパー?」


 俺は目覚めてまた呆けている目を擦りながら、自分の元を訪ねて来た男の顔を再認識する。

 

「そうだ。君を訴えていた者の証言が怪しくなってきたので、一旦釈放することになった。今まで不当に拘束して申し訳ない」

 

 私の前に姿を現したアドランド・スクレイパー警備隊管理局局長はそう宣言して、俺を独房から解放してくれた。

 独房から出された俺は、突然の待遇に理解が追い付かないが、それを察したアドラント・スクレイパー氏が説明をしてくれた。

 

「君を陥れたクロスビーとか言う魔道具師は全員捕まったのだ」

「捕まった?」

「そう。主たる容疑は違法薬物の魔道具製造の罪だ」

「違法薬物の罪!? それが、どうして私の解放につながるのです?」

「詳しく話すと長くなる・・・実は、今朝、彼らが裸にひん剥かれて街の広場で縛られていてだなぁ・・・・」


 その後のアドラント氏の説明によると、クロスビー一味は町の広場において裸で拘束された状態で発見されたのだ。そこにはこんな書置きが残されていたらしい。

 

――彼の者はエリオス商会に虚偽の申告で汚名を利かせ、自ら改ざんした魔道具を不良品として(いつ)わりを流布し、ライオネル・エリオス会長の社会的地位を作為的に貶めた。その報いとして、正義の鉄槌を下した。更に、彼らの住居を調べると、もっと悪意ある品物が見つかるだろう。それを製造することは彼らが悪の手先として言い逃れできない証が発見できる筈だ。彼らに正義の鉄槌を下した我らは、月光の聖戦士(パラディン)――


 そんな書置きと共に彼らが手を加えたとされる『光の炎』の魔道具が置かれており、これを発見した市民の通報により警備隊組織が動いて、アドラント氏の耳にも入ったようである。

 彼らがあまりにも目立つように晒されていたため、ルバッタ商会とつながっていると思われる第二警備隊ももみ消す事が敵わず、アドラント氏の管轄する管理局が主となり調査の手が入った。

 そして、捜査した結果、クロスビー氏の工房からは違法薬物を生成する魔道具が多数発見されて、彼らが有罪者(クロ)であることが明らかとなり、そして、俺を不当に拘束している確信へとつながったようだ。

 こうなって仕舞えば、第二警備隊で話をもみ消す事もできない、俺は晴れて無罪釈放が言い渡され、俺を不当に拘束していた第二警備隊の隊長は、いろいろと疑われる立場になって、現在は更迭されているらしい。

 

「大変申し訳なかった。君は釈放になる。多少納得いかないところもあるとは思うが、ここは私が頭を下げることで何とか納めて欲しい」


 そう丁寧に述べて、俺へと謝罪をする管理局長のアドラント・スクレイパー。

 彼はこのラフレスタの警備隊組織でナンバーツーの存在なので、本来ならば過分すぎる謝罪行動であった。

 

「これは、これは過分な謝罪です。私のようないち商人には勿体ないことです」


 俺はそう言って謙遜する仕草をする。

 それが、このライオネル・エリオスという身分ならば正しい姿だ。

 

「ありがとう。ライオネル・エリオス君・・・この事件の黒幕は私がきっちりと処分するつもりだ」

「それは・・・・ありがとうございます」


 私は、それはアドラント氏には無理だと思ったが、そう答えておくに留める。

 何故なら、この事件の黒幕を辿ればそこはジョージオ・ラフレスタまで行くだろう。

 そこに手を出してはいけないと思う。

 そうなれば、彼はラフレスタ家の下らない覇権争いに巻き込んでしまう。

 アドラントは俺がヴェルディだった頃の数少ない友達である。

 

「でも、無理強いはしないでください。私はこの程度の仕打ち、慣れていますから・・・」


 別れ際にそう述べ、俺は第二警備隊の詰所から逃げるようにして帰ってきた。

 

 

 

 徒歩でエリオス商会に戻る。

 俺が戻って来た事は軒先ですぐに明らかになり、エリオス商会総出で出迎えてくれた。

 

「ライオネル会長、お勤めご苦労様でやぁしたぁーっ」


 強面のベンからそんな労いの言葉が出る。

 これはまるで、私が反社会組織の親分を彷彿させるような出迎えの言葉だ。

 少々頭痛くなったが、それでもこれがベンだと思い、許す事にした。

 そして、私の帰還を心から歓迎してくれたエレイナが笑顔の花を咲かしている。

 

「ライオネル様。お帰りなさいませ」

「エレイナ。すまない、少々遅くなってしまった」


 私は詫びの言葉を述べる。

 これにエレイナは「いいえ」と短く応えてくれた。

 こうして、俺は久しぶりに戻ったエリオス商会の面々から暖かく出迎えられた。

 ここで少々気になった事と言えば、ジェンとアタラが股間を守る仕草だったが、彼らの顔はこれを追及してくれるな、との無言のメッセージがひしひしと伝わって来たので、俺は気付かないフリを続けることにする・・・

 


「女王様とお呼び!」

パシンッ!

 

 エレイナ姐さんを怒らすと、チ〇コ鞭打ちの刑となります。(下品でスイマセン)



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