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ラフレスタの白魔女 外伝  作者: 龍泉 武
第三部 ヴェルディの野望
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第十六話 女豹と狼

 ランガス村のイオール商会にて細やかな夕食会が終わり、俺は出された酒でほろ酔い気分になり、宛がわれた部屋に移動し、そこで就寝を取ることにする。

 一緒に来たロディは馬車にて寝泊まりをして貰っている。

 それは荷物の見張りの役割もあったため、仕方のない話だが、今の季節は寒くないため、きっと大丈夫だろう。

 彼には申し訳ないが、ここはエリオス商会代表の権限を使わせて貰おうとしよう。

 イオール商会は今回のようなことが良くあることらしく、客室の整備も良いようだ、寝床(ベッド)は快適である。

 今晩は満月の夜であり、窓からは青の月の光の強い光が指し込んで来る。

 俺がベッドに入り、しばらくした頃、部屋をノックされた。

 

コン、コン

 

「何だ?」


 俺は夜間のノックを怪訝に思い、少し警戒して返事をする。

 ノックした者からの応答は無い。

 俺は警戒が増し護身用のナイフの場所を確かめて、ドアをゆっくりと開けた。

 そうすると、そこには夜着に身を包んだナターシャ―が立っていた。

 

「わっ、と、どうした?」


 昼間の傲慢と自信に溢れた彼女の姿と違い、今は少し潮らしい様子のナターシャだと思った。

 薄い夜着がまた彼女のプロポ―ショーンの良さを強調しており、夜の月灯りの効果か、何とも言えない女性の魅力が増している姿だ。

 彼女は開いたドアの隙間から小走りに私の部屋に入り、そして、後ろ手にドアを静かに閉めた。

 

「未婚の女性が、夜中に異性の部屋へ侵入するなど、あまり感心できませんね」


 俺は敢えて、倫理の高い人格者を演じて、そんな台詞を語ってみる。

 半年前の俺は、それこそ淫行に近い事を毎日続けていたので、何とも恥ずかしい台詞だ。

 それでも今はそんなことを口から出しておかないと、俺は彼女に手を出してしまいそうで怖かった。

 それほどに、この時のナターシャからは雌としての色香を最大限に醸し出していたからだ。

 

 

「ライオネル・エリオス。今晩は『私』という商品を買って貰いたくためにここに来たのよ」


 その台詞だけを聞けば強気の彼女であったが、それでも雰囲気はどこかに余裕のない彼女。

 勿論、俺は彼女を買う気は無い。

 ここでこの女と寝てしまえば、この先が拙いことになる、そんな予感がヒシヒシとあったのだから・・・

 

「何を焦っておられるのですか、ナターシャさん? 女性の身体の安売りは良くないと思いますよ・・・」


 俺からのそんな興味の沸かない冷静な台詞に、ふぅー、と息を吐くナターシャ。

 自分が寵愛の対象となっていないことに気付いたのだろう。

 

「まったく、アナタには色仕掛けがまったく通じないようだわね。本当は不能者なのか、それとも同性愛者なのかしら?」


 そんな諦めのナターシャ。

 

「それは私に対して失礼だろう。私は美しい女性が大好きな正常な男性だ。あっ、一応言っておくが、君の女性としての身体は魅力的だと思う。しかし、私が君を好きになれない・・・ただ、それだけだ」

「・・・あら、そう? 私も嫌われたものね。どうすれば、貴方に好かれるのかしら?」


 腰に手をやり、くねらせて魅力的なポーズを魅せた彼女は、まだ諦めていないようだ。

 

「私に好かれたいのならば、先ずはルバッタ商会からエリオス商会への攻撃を止めるべきです。そうすれば、少なくともマイナスの評価にはならない、ゼロの立場から君の評価を改めよう」

「だから、アレは父のやっていることで、私には関係が無いって言っているじゃない!」

「おっと声が大きい、ヒステリーを起こすな! 貴女だって、今の姿は他の商会連中には知られたくない行為でしょう?」


 俺がそう指摘すると、ナターシャは口を手で押さえて仕舞ったという顔になる。

 やはり、今の彼女は何処か余裕の無いようだ、探ってみるか。

 

「どうしてこんなことをするのですか? 貴女は裕福な家庭に生まれ、何一つ不自由のない生活がしているのじゃないかね?」

「そうね。今までは、ね」

「今までは?」

「ええ、私、結婚させられるの」

「それは・・・・おめでとう」

「全然、めでたくないわ! 私、あの(・・)、グリュー商会の次期会長と結婚させられるのよ」

「そうか。しかし、君がどこの誰と結婚しようと、私には関係のない話だ。末永く、お幸せに」

「だから、私がグリュー商会のバカ息子と結婚しても、幸せになれる訳ないじゃない!」


 俺はここでまた声が大きいと彼女にジェスチャを入れる。

 ナターシャも自分が興奮していたことを忘れていたようで、一応、俺の注意で、声のトーンは少し下がった。

 

「相手があの(・・)、グリュー商会よ」

「だから、俺は知らんと言っている」


 俺にとって、実にどうでも良い話だな。

 グリュー商会がどんな相手かは解らないが、このじゃじゃ馬女を引き取ってくれるならば、それが社会の為になるというものだ。


「まったく・・・」

 

 俺のどうでも良い態度に呆れたのか、ナターシャからはそんなため息が漏れた。

 

「あんな駄目商会のところに嫁いでも、未来なんて見えているわ。私の人生が衰退していくのは確実よ」

「グリュー商会の力が無いのならば、それを何とかしてやるのが女房となるお前の役割だと思うがな」

「そんなの嫌よ。私の夫となる人物は強くて財力がある人でないと駄目! それこそ、ラフレスタの経済界でトップを狙える人物でないとね」


 我儘を言うナターシャ。

 

「だから、私はアナタにそれを見込んでいるの、ライオネル・エリオス。貴方ならば、これからどんどんと大きくなる。私の勘がそう言っているわ」

「それは、どうも。その勘は正しいと思うぞ。私は部屋の隅で自分の運命に臆してブルブルと震えて怯えるのが耐えられない男なのでね・・・」

「そのようね。貴方は狼なのよ。孤高の狼のような男だわ。私がそう評価してあげる。だから私と組みましょう。私と組めば、貴方ならばラフレスタの経済界に君臨できるわ」

「君臨をして、次に何をする。その後のナターシャは何がしたいのだ?」

「何って・・・」


 ナターシャは俺の問いかけに直ぐには答えられなかった。

 経済界の支配者と成った後のビジョンを彼女の中でも考えていなかったのだろう。

 

「ぜ、請託な暮らしができるわ。それに自由と悦楽よ。私も、こう見えてベッドの中では、すごいんだから」

「だったら、そのグリュー何とかと贅沢な暮らしを目指してくれ、私はもう間に合っている。ちなみにベッドの中の技術はお前には負けん!」


 そこだけは豪語してやった。

 俺とは経験値が違うのだ。

 

「だから、グリュー商会のボンクラでは無理だっつうてんだろう!」


 声が荒々しくなった。

 品の悪い彼女の素が出たようだ。

 

「決めつけてやるなよ。少なくとも相手側にも結婚の意思があるのだろう? それならば、そこを立ててやるのも女の甲斐性だと思うぞ」

「ダメダメ。アイツは酒と女にしか興味の無い男よ。私の父よりも更に小者の悪党だわ」


 その論理だと、自分の父は大悪党だと言う事を認めているのだろうか。

 

「残念ながら、私は君個人にまったく興味がない。私には女性は間に合っているのでね」

「それは、あのエレイナ・セレステアって女ね。ルバッタ商会でもエリオス商会に美人秘書が入ったって話題になっていたわ」

「エレイナとはそんな関係じゃない」

「嘘!」

「本当だ。彼女はそうだな。俺を監視するだけの存在だ」

「監視?」

「いいや、これはちょっと口を滑らせた、このことは忘れてくれ」


 俺は余計な事を言ってしまったと後悔し、前言撤回する。

 

「怪しいわね・・・まぁ、いいわ。ライオネル・エリオス貴方がフリーだということで理解してあげるわ」


 ナターシャからもここでの余計な追及は無かった。

 少々ホッとする。

 俺がヴェルディと言う事をあまり知られたくない。

 もし、そのことをこの強欲の女に知られると余計な事に発展しそうだと思ったからだ。

 

「フリーかと問われれば、否定はしない。しかし、今は女性と付き合いたい気分じゃない。ただ、それだけだ」

「そんなもの・・・これほど魅力的な女性が目の前にいるというのに、通用するかしら」


 ナターシャは身をくねらせ、薄い夜着を通してメリハリある自分の身体の起伏を誇張してくる。

 大きくはち切れそうな乳房、括れた腰、大きな臀部は、月明かりの効果もあって、俺に魅惑の魔法を投げかけて来る。

 一瞬、自分の股間にグッとくるものを感じてしまったが、ナターシャは俺のそんな反応を見逃さなかった。

 ここが攻めどころだと身を寄せてきた。

 身体が接近し、彼女の悩ましい指か俺の顔に触れる。

 俺は拙いと思い、いつぞやの馬車で迫られたときのように身を躱す。

 しかし、今度のナターシャは俺をここで逃がす気が無いようで、俺は窓際へと追い詰められた。

 

「逃げないで。私の良さを教えてあげるわ。そして、私と結婚して頂戴。貴方はルバッタ商会の資金を自由に運用できる。それで自分の欲望を叶えればいいの。私はグリュー商会に嫁がなくても良くなる。未来のある貴方に賭けた方が利率はいいからね。それに毎日ベッドで満足させてあげるわ。お互い良い事尽くし(ウイン・ウイン)の関係になるじゃない。一体、何の不満がある訳?」

 

 そう言い、俺の身体を悩ましい指で撫で回してくる彼女。

 まるで魔女からの誘いだ。

 この女豹め!

 俺は、フン、と息を吐き、彼女の身体から発せられる妖艶な淫香を吐き出すようにして、心を強く保った。

 未だ自由だった左手を使い窓を開けると、そこからサッと外へと飛び出た。

 

「何よ。逃げるの? 私にここまでさせておいて」


 ナターシャは妖艶にそんな台詞を吐く。

 彼女の瞳の奥には女性としての懇願があるのが解った。

 しかし、俺はここで情欲に流れないようにして、心を強く保った。

 

「ああ、逃げてやる。俺は生まれながらにして孤高の狼だ。安全な人生を送るために群れるのは性に合わないんでね」


 そう格好をつけて、二階の窓から外に出た俺は屋根伝いに彼女から逃げた。

 そして、縁まで進むと二階からパッと飛び降り、一階の地面へと上手く着地する。

 ここでの俺の軽い身の熟しにナターシャは驚いているのが解った。

 俺は身体を動かす事もそれなりに学校では成績が良かった、体力もある秀才だ。

 これぐらいの身の熟しなど訳はない。

 こうして、女豹の夜這から俺は上手く逃げ出せた。

 イオール商会の玄関近くにある厩舎に向かい、そこに留めさせて貰っているエリオス商会の荷馬車の幌を開けた。

 

「わっ! 何だ? ライオネル様ですか?!」


 中で寝ていたロディが驚く。

 しかし、直ぐに俺だと解り、夜中、必要以上に騒ぐような事にはならなかった。

 

「ロディ済まない。俺も今晩はここで寝かせてくれ」

「ええ? ライオネル様の寝所はイオール商会の客間だったのじゃないですか?」


 この場所は俺にふさわしくないとロディは言う。

 

「あそこは駄目だ。ナターシャがいる。妙な、既成事実を作られても困るんだ」


 俺は朝起きた時に、同じベッドの中、全裸で寝ているナターシャの姿を想像してしまった。

 そして、朝起きた時の彼女は勝ち誇ったようにこう言うだろう。

 「ライオネル、昨日は良かったわ・・・」と、そして俺に男としての責任を迫ってくる話の流れとなる。

 その事実があろうとも無くとも・・・

 一瞬だけ彼女の豊満な裸身を想像してしまい、情欲に身を任せて一晩ぐらい相手しても良いじゃないかとも思ってしまったが・・・

 直後にそれは駄目だと思い直す。

 もし、彼女と寝てしまった場合、それを盾に取り付きまとわれることになるだろう、そして、エリオス商会まで絶対に図々しくやって来るはずだ。

 あの女豹はエレイナに向かって「自分はライオネルと寝た」と主張する筈だ。

 その後、どうなってしまうのだろうか・・・

 エレイナは怒らない(怒られる理由もない)だろうが、俺を蔑むような視線で見るだろう・・・それは、俺には耐え難いと思う。

 そもそも、ナターシャはルバッタ商会で敵側の娘なのだ、私と相容れることはない・・・そう強く言い聞かせて、迫られた際に鮮明に魅せられた悩ましい姿を忘れるように苦労した。

 

「ナターシャさんがどうしたのですか?」

「それはな・・・」


 俺はナターシャから肉体関係を迫れている事実をロディへと伝えた。

 

「・・・だから、私はあの部屋に帰れない。私の貞操の危機だ」

「ライオネル様の貞操って・・・」


 ロディは俺の物言いに呆れつつも、男としては羨ましいと思ったようだ。

 

 

「ライオネル様、モテますね。羨ましい・・・」

「羨ましいものか、私は迷惑しているんだ」


 何が悲しくて、俺は敵側の女と肉体関係を迫られなくてはならないのだ。

 ここで俺は少しだけ、女性の強姦される気持ちが解ったのかも知れない。

 

「今晩はもうあの部屋には戻れん。今晩は私もここでロディと一緒に荷物の番をするぞ」


 こうして、俺は男と一緒に寝ることになった。

 そう言う訳で、ロディとは、ここでいろいろな身の上話を聞かせれることになる。

 ここで俺が知ったのは、ロディはどうやら一緒に商会に入った新人女性に興味があるらしい。

 

「・・・だから、俺、サリアの事が気になっていたんですよ」

「そうか、我が商会は社内恋愛を禁止していないから遠慮なく、付き合えばいいぞ」

「でも、もし、サリアに嫌われたらって考えたら怖くて、告白もできないんです」

「莫迦を言うな。女性なんてものはなぁ、それなりに誠意のある男性相手から『好きだ、ヤラせて下さい』と何回も懇願されるとなぁ、いつかは『いいんじゃないかな』って思ってしまう生き物なんだよ。相手から本気の好意を伝えられて、それを嫌がる女なんているものか」


 俺の経験からそんなアドバイスをしてみる。

 勿論、本心で嫌だと思われる相手から、そんなことを伝えられれば、身の毛のよだつ、ように思えらしいが、そんな状況は気持ちを伝える前になんとなく解るものだ。

 俺の見立てでは、サリアは現時点でロディの事を何とも思っていないと思われる、それは好きではないが、嫌いでもないという意味である。

 この先にロディが積極的にアプローチすれば、彼女もロディに興味を懐く可能性は十分にあると考えられた。

 俺は「負けずに頑張れ」とロディを励ました。

 そんな人の恋路の話をしていると気が紛れた。

 一時はナターシャの妙な魅惑に毒されていた俺だったが、今は普通に戻って来た。

 

「あいつ、もしかして、アイツは催淫効果のある媚薬を香料にでも使っていたのかも知れないな」


 俺はそんなことを疑った。

 まるでその呟きに呼応するようかのように、月の光が降り注ぐ夜の闇に、何処からか狼の遠吠えが聞こえた。

 こうして、ランガスの夜が進んで行く・・・

 

 

 

 

 

 

 結局、俺は荷馬車の中で一夜を過ごす事になった。

 流石にそこまでナターシャがやって来て、襲われることはなかった。

 翌朝、俺は少し疲れた気分で朝食を取るためイオーネ商会の食堂へと顔を出す。

 そこには当然ナターシャの姿もあり、俺に熱っぽい視線を送って来る。

 やばい、このまま、この行商隊で行動を共にすれば、いつか食われる・・・そんな悪寒が走った俺は、このままでは駄目だと思った。

 

「何ですか、アナタは!」


 ここでイオール商会の中に慌ただしい声が響いた。

 

「うっ!」


 かぐわしい肥料(・・)の匂いが、商会の中へと充満し、誰もが眉を顰める。

 朝食事時間には相応しくない匂いだ。

 匂いと騒ぎの元を辿ると、それはイオール商会の店頭。

 そこには筋骨隆々の若者と彼が持って来たであろう荷車があった。

 匂いの原因はその荷馬車から来ている。

 

「俺はロイだ。その・・・シエクタに世話になって・・・おかげで警備隊の入隊試験に無事合格ができたんだよ。それでそのお礼に自慢のトウモロコシを持って来たんだけど」

「そうか、それはおめでとう」


 応対しているイオール会長はあまり歓迎しない口調でそう応える。

 その若者は熊のように大きい身体だったが、それでも堂々としており、私は好感が持てた。

 どうやら彼は、ここの商会のひとり娘に気があるようで、貢物を持って来たのだろう。

 その貢物を見ると、どうやら自分の畑で獲れたトウモロコシのようだ、それも肥料に匂いが精一杯残っている。

 商品としては、後処理がされておらず、全くの駄目だ。

 しかし、俺はコレだと思った。

 

「そのトウモロコシ、すべて買いましょう」

「えっ?」


 驚きの視線が全員から注がれた。

 そりゃ、そうだろう、こんな商品価値の無いトウモロコシを買うなんて、莫迦な奴だと思われたに違いない。

 しかし、この状況は、俺にとって渡りに船だ。

 

「美味いトウモロコシとは臭い肥料で育つと聞いています。私はこれを最高級品だと思いました」


 そんな口から出任せを言ってみる。

 

「私はこの商品を一刻も早くラフレスタに持って帰りたい。急で申し訳ありませんが、グローナットさん、エリオス商会はここで行商隊を抜けさせて貰います」

「それはライオネル君。困る」


 商会ギルド長は俺の勝手な行動に困惑している。

 しかし、ここで意外な人物が俺の行動を賛同してくる。

 

「いいのではないですか。こんな若造、帰りたいと言うのであれば、好きにさせれば」


 見るとあの太った商人だ。

 どうやら、俺が今まで活躍しているのを面白くないと思っていたのだろう。

 俺がナターシャから気に入られているのも面白くなさそうだ。

 ナターシャからの熱い視線を、この商人は気が気でない想いで観察していたのを俺も解っている。

 自分こそがナターシャに気に入られたいと思っているのだろう。

 俺は遠慮せず、その役割を譲ってやると思った。

 

「グローナットさん、申し訳ありませんが、途中で帰る私を許してください」

「そこまで言うのならば、仕方あるまい。ただし、単独で返る場合、護衛はつけられんが・・・」

「それは構いません。これは私が勝手で言っているのですから、警備は私達で何とかします」


 そうは言ったものの、この行商隊(キャラバン)に同行している傭兵は初めからあまり宛てにしていなかった。

 特に警備担当の隊長のエリックと言う若者は偉そうにしているだけで、統率能力がまるでなく、腕っ節も私より弱いと、俺は見立てている。

 そんな護衛の傭兵など、居ても居なくても、私が自ら戦えばそう大きく変わるまい。

 そんな結論により、私はこの行商隊と別れることに成功した。

 よし、これで、ナターシャの魔の手から逃れられるぞ。

 これで、私は安心して、ラフレスタに帰る事ができた。

 

 



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