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ラフレスタの白魔女 外伝  作者: 龍泉 武
第二部 蒼い髪の魔女
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第十話 刺客、対、リーナ

 

 「う・・・飲み過ぎだ・・・」

 

 私は頭がフラフラする中、そんな事を呟いた。

 

 「グレイ、まったくお前は・・・酒、弱過ぎだ!」

 

 現在進行形でヒューゴからそのように罵られているが、私からは反論の余地もない。

 ヒューゴにとってはちょっとでも、私にとっては限界以上なのだ。

 人それぞれ、それでいいと思う。

 うむ。

 

 「そんな、フワフワとした顔をして・・・今日はともかく、もし何ならば、明日もゆっくりされる方がいいでしょう。私とヒューゴ様がいれば仕事は止まりませんから」

 

 そんな優しい言葉をかけてくれるアランが嬉しかった。

 

 「そうだ。俺はまだ飲み足らん。アラン、次に行くぞ!」

 「えっ私ですが・・・それじゃ、リーナ、グレイ様を頼む」

 

 そんなことを言い残し、アランはヒューゴに抱えられて店を出て行った。

 残されたのは私とリーナだけ。

 私はフラフラする中、リーナに引張られる。

 

 「まったく、グレイ様は・・・酒にも弱い。腕っ節も弱い」

 「そんな事を言うな。人間には得手、不得手があるのだ。だから協力する。それが社会だぞ」

 「何を尤もらしい事を言っているのですか。ほら、帰りますよ」

 

 情けなくもあるが、私がいろいろなものに弱いのは今、始まった事ではない。

 

 「あ、こら! どこを触っているんですか!」

 「どこって、腰だろう?」

 「腰はもっと下ですよ。そこは・・・」

 「え? じゃあここかな」

 「こら! そこはもっとダメです。わざとやっているんですか? 叩きますよ!」

 「うーむ、わざとじゃない・・・うっ」

 「あー、もうどうでもいいです。そよりも絶対に吐かないでくださいね!!」

 

 そんなフラフラの私はリーナに介抱して貰いながら酒場を後にした。

 これは参った。

 明日、何かの埋め合わせしよう。

 そんな事を思いながら、私達は夜のマースの街の中を進む。

 そして、人通りの少ないところでリーナの歩みが止まった。

 

 「ん? どうした?」

 

 私はリーナの雰囲気が変わったことに気付き、誰何する。

 

 「黙っていて・・・どうやら尾行されています」

 「びぃっ、尾行ぉーっ?」

 

 私はそんな少しご機嫌で間抜けな声を発してしまった私だが、リーナは真剣だった。

 

 「出て来なさい」

 「・・・」

 

 そんな声が響き、しばらくは沈黙だったが、しびれを切らしたのか、相手が姿を現した。

 全身黒尽くめで顔にも布が巻かれている。

 所謂、暗殺者風貌の相手だった。

 その相手は銀色に光る短刀を静かに抜き、私達に襲い掛かってきた。

 

 「危ない!」

 「何っ!」

 

 反射的に動いた私と暗殺者の短い声が重なった。

 あまり回らない頭で、相手の暗殺者が女性の声かとも思う。

 その直後に私の左腕に刺されたような痛みを感じた。

 いや、実際に刺されたのだ、血がドクドクと流れて、気が遠くなってくる。

 私はどうやら暗殺者に刺されてしまったらしい。

 そして、毒かな?

 この気が遠くなってくるのは・・・

 私の意識は・・・どんどんと深みに落ちて・・・行った・・・

 

 

 

 

 

 

 私はリーナ。

 本当の名前はそうではないが、今はリーナだ。

 そんな私は今の自分の雇い主に肩を貸し、彼の宿に戻ろうとしている。

 酒も弱く、腕っ節も悪い。

 本当に情けない男だが、それでも頭はとても良いし、優しい。

 良い人だと思うし、私に甘いモノを与えてくれる。

 私に甘いモノをくれるのは良い人に決まっているわ。

 それが私の中の信条であり、今までそれが間違ったことは無い。

 貴族で偉い人らしいのだが、そんな身分の違いなど私にはあまり関係のない話し。

 何故なら私は・・・

 そんな事を思っていたら、私達の跡を尾行する存在に気付いた。

 敵意の魔力をビンビン匂わせていたから、私はすぐに解った。

 そして、仕掛けて来るならば、あの暗がりだろう。

 果たしてそのとおりになった。

 

 「出て来なさい」

 

 その声に応じて姿を現したのは、ひとりの刺客姿の女性。

 そいつはいきなり短刀を抜いたかと思うと、魔法で加速してきた。

 風の魔法、そして、無詠唱。

 私は素早く相手の技を看破して対抗するための魔法障壁と物理障壁の魔法を平行して行使する。

 普段からは隠しているが、無詠唱で防壁を張るぐらい私だってできるぞ。

 

 ガキーン

 

 魔法の壁が相手の攻撃を阻害した音が響く。

 しかし、今回はちょっと計算が狂った。

 グレイ様が私を庇おうとして少しだけ動いてしまったため、彼の左腕が切られてしまったのだ。

 まったく、弱いのに・・・格好つけて、もう。

 私はちょっと嬉しくなりながらも、彼を後ろに下げた。

 相手の刺客―――女魔術師―――は、「何っ!」と驚きの声を挙げている。

 彼女も私が防御魔法を最速で行使したのが驚きだったみたい。

 

 「はん? 殺る?」

 

 私は少しだけ凄んで見せた。

 いつもはおっとりと猫を被っていたので、驚いたでしょ?

 んん? この(ひと)、どこかで会ったかな。

 そんな事を思っていると、相手は私の魔力の変化に本当に驚いているようで、慌てて後ろに飛び退いた。

 

 「・・・止めとくわ。でもその彼、もう命はないわよ」

 

 そんな女の言葉に私はハッとなる。

 後ろにやったグレイ様の顔を確認すると、血の気が失せていた。

 

 (拙い。毒を受けたか)

 

 私がそんな事を思う隙に刺客の女魔術師はもう現場から去ってしまった。

 風の魔法を使い、鮮やかな離脱の技。

 それでも、私が本気になれば・・・いや、今は止めておこう。

 それよりもグレイ様の助ける方が先決よ。

 私はそう判断し、グレイ様の刺された患部に指を当てる。

 

 「治れーっ。ふふん!」

 

 そう気合を入れると治癒魔法が発動する。

 本来ならば治癒行為は神聖魔法使いの方が得意分野らしいけど、私を舐めるなよ。

 これぐらいできなくて、どうなるさ。

 そう思い、強い魔力を込める。

 普通の魔術ならばあっと言う間に魔力切れになるぐらいの膨大な魔力をグレイ様の受けた傷に込めた。

 そうすると傷口はあっと言う間に塞がり、解毒も成された。

 こうして瞬く間に魔法による治癒は完了したが、それでもグレイの身体は既に冷たくなっている。

 

 (あの毒・・・冷却の魔法も付与されていたようね)

 

 私はグレイの身体に残る魔法の残滓から毒に加えて魔法が込められていた事が解った。

 このままでは体温を奪われて死んでしまう。

 彼の身体を温めないと・・・

 普通の温める魔法・・・それじゃ間に合わない。

 彼の身体の内側から温めないと・・・えーい、しかたない。

 私はとある決心をする。

 そして、グレイ様の身体に軽量化の魔法をかけて、彼の宿所まで急いで運ぶことにした。

 

 



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