表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラフレスタの白魔女 外伝  作者: 龍泉 武
第五部 帝皇の罪、銀龍の罪
141/172

第十九話 愚弟殿下の僕ちゃん


「反乱分子を叩き潰すのだ。僕ちゃんに刃向かうとどうなるかを思い知らせてやるのだぁーっ!」

「ハイ。解りました、パロス様」


 部下からの小気味良い返答に満足する僕ちゃん。

 やっぱり偉くなるって最高だぜ。

 部下や領民を顎で使い、自分は黙っていても金や酒、女が手に入る。

 うん、僕ちゃんって偉くなったんだ、って実感がある。

 兄ちゃんからこのグロスの統治を任された。

 僕ちゃんは統治なんて言われても解らない事ばかりで、どうなるかと不安もあったけど・・・

 でも、実際は簡単な事。

 適当に命令していれば、あとは部下がやってくれる。

 僕ちゃんの仕事なんて、バルディ王国が領民から舐められないよう、偉そうにしていればいいだけなんだよ。

 簡単で良かった。


「パロス様。通告のあった建屋に陣取る人物とは本当に反乱分子なのでしょうか?」

「反乱分子に決まっているだろう! 兵士が簡単に(なぶ)られたって通報だったよねぇー? このグロスでまだそんなことできる人間って反乱分子ぐらいしか残っていないさ」

「それが・・・通報者から詳細な報告を聞くと、狼藉を働いたのは旅人の一団だと・・・」

「旅人って・・・素人相手にバルディ王国の兵が負けたのかな?」

「い、いや・・・しかし、稀に旅人には冒険者が混ざることもあります。彼らの剣や魔法の技術は侮れません」

「ふん。だとしても、僕ちゃん達バルディ王国に刃向かっていることに変わりはないよ。見せしめに叩き潰しておかなきゃ、後から兄ちゃん達に怒られるだろ?」

「・・・はい、そうでした」


 僕ちゃんに進言してきた若い部隊長は思い直したようだ。

 兄ちゃんを初めとしたバルディ王国の幹部には厳しい人が多いからねぇ~。

 余計な口出しした結果、反乱分子を増長させるような結果になれば、あとで遠征から帰ってきた兄ちゃん達が怒るだろうねぇ~。

 

「ともかく、態々(わざわざ)行軍訓練中に現れてくれた敵だよ。ここでバルディ王国の兵の強さを見せつけてやればいいんだ」

「はい、解りました。バルミス様! バルディ王国万歳!!」


 若い指揮官は古風な兵士の真似をして、俺に敬礼する。

 うん、実に気持ち良い。

 兄ちゃんからは「時々、兵の強さを誇示するために威力行軍をしておけ」と命令されて、僕ちゃん達はそれを実行していた。

 威力行軍は面倒だから・・・と僕ちゃんも含めて皆は嫌々にやっていたけど・・・今回は偶々(たまたま)行軍行動の近くで騒動の報告を受けたから、全員がやる気満々だ。

 

「包囲は終わったようだね。さっさと魔法射撃始めちゃって」

「ハイッ。魔術師部隊、撃ち方始めーっ!」


ヒューーン、ドンッ、ドンッ


 命令を受けたバルディ王国の魔術師兵が火球を次々と標的の建物目掛けて撃ち込んだ。

 

「うぉーーっ!! いいねぇ~。派手にドンドンと撃ち込めぇ~!!」


 火炎魔法攻撃って派手だよね~。

 このグロスを落としてから派手な戦闘は無かったから、やっぱり久しぶりの戦闘の迫力は興奮するよなぁ。

 特にこの圧倒的な火力で敵を攻撃するのが実に楽しい。

 自分が強くなった気がする。

 いや、僕ちゃんはグロスの統治を任されたパロス様だ、本当に偉いんだぞー。

 兄ちゃん達、バルディ王国の本隊は現在ここから東のタニア領を攻略している最中だ。

 現在のグロス領では僕ちゃんがトップなのさ。

 

「不穏な反乱分子よ。お前達は完全に包囲されている。今すぐ投降せよ。さもなければ、火炎魔法で今すぐ灰にするぞ!」


 若い指揮官は相手に降伏を勧告する。

 何だぁ~!? 面白くない・・・僕ちゃんは火炙りにされて建屋から飛び出してくる間抜けな姿が見たかったのにぃ~。

 そんなことを考えていると、その降伏勧告に応じたのか、建屋の中から敵が姿を現す。

 

「待ってくれ、バルディ王国の兵に仕置きしたのは我々だ。他の人に罪は無い」


 正々堂々とそんな事を言って、両手を挙げて降伏の意を示すのは旅の一団と思わしきリーダーの男。

 何だぁ? 正義のリーダー面しやがって・・・気に入らないなぁ。

 僕ちゃんのこの男に対する第一印象はそうだった。

 

 この男・・・本能的に嫌い。

 

 だから僕ちゃんも先頭に立って敵を威圧する。

 

「我々をバルディ王国の兵と知っての犯行だよねぇ? 反乱は絶対に許さないよ。全員フードを上げて顔を見せろ!」


 正義のリーダー面している男に命じる。

 そして、相手は僕ちゃんの求めに応じてフードを上げたけど・・・見ない顔だ。

 リーダーの男に呼応したのか、他の十人も次々とフードを上げてその顔を周囲に晒してきた。

 

「おおっ!」


 周囲からどよめきが起きる。

 その理由は僕ちゃんにも解るぞ。

 旅の一団のうち四人が女だった・・・しかもかなりの上玉!

 このグロスでなかなか見られない美人だ。

 そして、そのうちの一人が超美人のエルフだったから余計に嬉しい!!

 僕ちゃんは自分の性欲が沸き立つのを感じた。

 

「お前達、グロスで見ない顔だよねぇ~」

「俺達は『放浪の旅人』という冒険者のパーティ。世界の方々を旅する者だ。今回は食事処を利用中に、グロス兵の狼藉を目にして()(おえ)えず手を出した。下級兵の風紀が乱れているぞ! アナタが誰だかは解らないが、上の者は部下の襟を正す必要あるんじゃないのかな?」

「何を偉そうに・・・僕ちゃんに意見するのなんて百万年早いよぉー!」


 この生意気な敵を成敗するよう部下に目で合図をする。

 察しの良い若い指揮官は手練れの兵士に指示を出して、一斉に襲い掛かろうとする。

 

「破ーーっ!」


 その時、リーダーの男の脇にいた女が突然、長大な剣を振るって地面に叩きつけてきた。


ドーーーン!


 今まで聞いた事も無い大きな音がして、兵の動きが一瞬で止まる・・・

 な、何が起こった!?

 そして、敵のリーダーの男が虚を突かれた僕ちゃん達に冷静な口調で語り掛けてくる。

 

「俺達は決して争い事を好まないが・・・それでも冒険者としての誇りがある。精々に抗ってやるぞ。ひとりひとりが十人の兵に匹敵する強さを持つから、俺達は簡単には討伐されない。覚悟してかかって来い!」


 そんな歯の浮くような気障(キザ)な台詞が終わると、彼らも戦闘態勢を取る。

 その手慣れた姿から、敵は素人ではないと解った。

 その認識は現場で戦ってきたバルディ王国の兵達も、僕ちゃんと同じように感じ取ったようで、一瞬にして緊張が走り、動きが止まってしまう。

 

「お前達、ビビってる場合じゃないよぉ。こちらは百人以上いるんだよぉ~! 一斉にかかれば勝てる筈~」


 一瞬でも浮足立つ部下達にそんな鼓舞をかける。

 どうせ相手もハッタリだ。

 もしかすれば、歴戦の冒険者かも知れないが、それでも数は圧倒的に僕ちゃん達の方が上だ。

 僕ちゃん達が負ける筈は無い。

 

「ヒャハハハーッ。僕ちゃん達と正面からやり合おうなんて莫迦どもめ。全員殺して・・・いや、女は殺すな!」

「へへへ」

「グフフフ」


 僕ちゃんの命令の意味を理解した数人が厭らしい笑みをする。

 こいつら・・・解っているなぁ~、うん、うん。

 いいだろう、俺ちゃんが使用した後に、あいつらにくれてやろうじゃないか。

 しかし・・・上玉のエルフ女は一回じゃ終わらないぞーっ。

 そんな厭らしいことを想像していると、横から俺の足元に新たな火球魔法が着弾した。

 

ドーーーンッ!

 

「ぐわっ!? 何だ? 何だ?」


 多少服が焦げたが、それでも被害はそれだけ・・・

 ホッとしたのも束の間、優秀な僕ちゃんは攻撃した相手を探す。

 魔法の射線を確認して、路地の隙間から攻撃されたのが解った。

 そして、その路地から覗いている顔・・・その施術者の顔は見覚えがある。

 

「豊満のメリージェン! 貴様かッ!」

 

 僕ちゃんは反乱分子のリーダーの顔を忘れたことが無い。

 その女は僕ちゃんの中で、今一番に(おしおき)してやりたい女ナンバーワンだから・・・

 

「相変わらず、助平で気持ち悪い顔をしているわね、パロス! でも安心して、お前の命運は今日までだから!」


 メリージェンがそう喋ると、それに応えるように魔法攻撃の乱れ撃ちが来る。


ドン、ドン、ドン!


「「ギャーーーッ!」」

 

 狙いのつけてない魔法攻撃だが、それでも僕ちゃん達は密集している。

 運悪く、当たってしまう奴もいて、被害は結構出ているぞ。

 くっそう、反乱分子めぇ!

 僕ちゃんを怒らせるとどうなるか教えてやる・・・

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ