第十三話 増える犯罪者
「おらぁ、立て!」
俺は怒気を露わにして犯罪者を縛り上げる。
俺が初検挙した時から三ヶ月が経ち、犯罪者を縛り上げるのも慣れたものだった。
いや、こんな事に慣れるというのは少し異常事態とも言える。
平和な村だったランガス村で最近の犯罪の検挙数が異常に多いのだ。
空き巣、強盗、強姦、窃盗、詐欺・・・・・・まるで犯罪者のお祭りでも始まったように毎日問題が起きやがる。
そして、異常なのは検挙する数も多かったが、それ以上に釈放されてしまう事も多いのだ。
逮捕して罪が認められたのは全体の一割にも満たない。
それ以外は嫌疑が立証できないとして『釈放』となるのだ。
そして、その釈放の採決をするのがエリック副隊長。
彼が指摘した釈放の理由、それは、証拠不十分、未遂、調書書類の不備など様々だ。
当然、隊員達は納得がいかない。
俺もそうだが先輩達も事ある毎に副隊長へ抗議している。
それはそうだろう、自分達がしょっ引いた悪者を処断できないなんて、警備隊の存在意義に関わる問題だと思うぜ。
しかし、最後にはエリックの野郎の意見が通っちまう。
それはプリオニラ隊長がエリック副隊長の味方をするからだ。
何故だか解らんが、奴は上役からのウケがいい。
それに加えて、最近はウェイルズ副村長もその採決に口を出してくる。
最終的な罪の判断は村長や副村長が決めることになっているが、その前の段階で口を出してくることは明らかな越権行為だと思った。
しかし、奴らはこのランガス村の、言うなれば幹部達だ。
彼らが首を縦に振らなきゃ、いろんなことが前に進まねぇのも最近は解ってきた。
結局、この村には長い物には巻かれろ的な雰囲気もあって、先輩達も強く言えねぇらしい。
まったく、ムカつく話しだぜ。
それに俺を苛立たせる事はまだ続く。
それはシエクタの飛び級が決まったらしいって事だ。
この事は直接本人から聞いた話しじゃねぇ。
友人のライゴンがエルアから聞いた事を俺に伝えてくれたのだ。
確かにシエクタは勉強ができて、飛び級になっても別におかしな事はないと思う。
俺だって、彼女の実力は認めてやる。
それだけならば、俺はその事実を歓迎したいし、何時ぞやの警備隊の入隊試験に合格できたお礼と共に、彼女へ賞賛の言葉を伝えたいさ。
しかし、今はエリックがいる。
正当な彼氏を前に俺がそんな事をシエクタに伝えるのが、いいのか、って雰囲気だ。
そして問題なのは、飛び級って事は、あと二ヶ月もすればシエクタは高等学校を卒業しちまうことだ。
卒業・・・つまり彼女が十九歳の誕生日を迎える時、結婚して人妻になっちまうことだった。
それも、あのエリックとだぁ!
このやるせない気持ちを感じている俺は、エリックへの逆恨みをしているのか?
不快で、嫌な上司・・・そんな奴が幸せになるのを俺が妬んでいるのだろうか?
そんな考えが俺の心の中に芽生え、俺はとても自分が小さい人間なのだと再認識しちまった。
くっそう、面白くねぇぜ。
この前も警らで行軍しているとき、偶然にシエクタと会ったが、俺の顔を見るや否や、いきなり逃げて行きやがった。
何故だ!? 俺は何か嫌われる事でもしたのか?
もしかして、エリックの野郎から散々俺の悪口を聞いて・・・い、いや、これこそ逆恨みだな・・・
そんな気持ちでいた俺の顔色は悪かったのだろう。
今、しょっ引いたコソ泥は俺の顔色をチラチラと伺ってやがる。
「おい! てめえ、俺の顔に何かついているのかよ」
「ひ、ひぃーーー」
コソ泥は俺の顔にまるで鬼の角でも見えたかのように震え上がりやがった。
今日は短かったので、次の話しを12時頃に投稿します。お楽しみに!




