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フリル紳士の一張羅




 珍しく仕事が早く終わった。だから私は早く帰って、玄関の扉が閉まるなりすぐさま家事に取り掛かる。

 一人暮らしだから、家事をなまけて油断するとすぐに汚部屋になってしまう……女子力に欠ける自覚があるにしても、そこだけは女として踏み止まりたいと思っている。これは、女であるというアイデンティティの問題だった。

 しばらく家事に勤しんで、ARアプリのペットにも日課の餌やりをして、ある程度の家事を済ませてからカオスティック・オンラインにログインする。

 昨日は久しぶりに友人と会ったりしてゲームにログインできなかったから、一日空いてのログインになった。

 そんな感じでカオスティック・オンラインの世界に戻って来た私は、一昨日入手したばかりの服をさっそく装備してみることにする。

 一昨日は悪徳商人顔のエキサイトおっちゃんに付き合ったせいで疲れちゃって、入手した装備の説明はまだ読んでなかったのよねー。


 道化師の服 魔法攻撃-30 物理防御+50 魔法防御+50 幸運+30

 カラフルでパワフルな道化師の古着。長年道化師の汗が染み込んだ生地は、予想外の幸運を呼び込む。


 フリル紳士の一張羅 物理防御+8 魔法防御+17 物理攻撃+2 知力+5 幸運+20

 フリルが贅沢に使われた紳士のためのブラックフォーマル。清く正しく美しい紳士に好感を持たない者はいない。


 ブラックタイツ 物理防御+0 魔法防御+0 物理攻撃+22 器用+22

 顔以外の全身を隠すことができる謎多き全身服。人はこれをロマンと呼ぶのかもしれない。

 

 よくわかんないけど、とりあえず全部が良さそうに見えるよね。良い買い物したわーって言いたいところだけど、違うんだなこれが。

 三着も入手したんだよ。

 でもさ、な・ん・と! お値段は驚きの0G!!

 顔が恐いおっちゃん曰く「次からはお金払ってね~」だそうだ。さすがはユニーククエスト報酬。太っ腹~♪

 とりあえず、三着もあるとどれを着るか迷っちゃう……なんてこともなく。

 迷わず私が選んだのは、唯一街中を歩けそうなフリル紳士の一張羅だった。私は思ったものだったよ。これを選んどいて良かったー! てね。

 いくらゲームだってもねえ? 街中でピエロ服とか全身タイツとか難易度が高すぎですよ。全部おっちゃんが選んだ通りにしときゃ良かったのに、昨日の私ってば無駄に反抗なんかするものだからさあ。

 選ぶ余地なんてねえよ。全身タイツとかネタ装備に走ってんじゃねえよ。

 という服選びに落ち着いてしまいました。

 その点、唯一おっちゃんがお勧めするままに選び取ったフリルなブラックフォーマルならば、カロンくんの魅力を引き出してくれるし良いことずくめだよね。次に服屋のおっちゃんの店へ行ったら、絶対に鏡でカロンくんのかわいい姿を見るんだー。スクリーンショットも撮りまくるんだー。

 さって着替えたことだし。次は何をしようかな。

 異世界設定の街中だし、景色や人を見てるだけでも観光気分になれるから、充分に楽しいんだけどね?

 てことで、とりあえずはノーム視線で世界を眺めながら街を散策することにする。

 本物の子供になったつもりになって、あっちへふらふらこっちへふらふら。

 たまーに屋台の売り物を私が物欲しそうに見上げていると、あれよあれよと店主やらお客さんやらからの押し売りと貢ぎ物が……右手に肉の串焼き、左手に魚の串焼き、アイテムボックスに他にも色々と……全部受け取ったらおごりやら何やらで所持金が500G減ってた。たぶん、一個100Gってことかな? 安い! さすがはゲームだ。設定が甘いな。

 肉の串焼きにかぷっとかぶりついてみれば、口の中にじゅわっと芳醇な香辛料の香りと肉汁がひろがる。

 うまっ!

 あまりの美味さに、一気食いしてしまった。でも大丈夫、ここはゲームでありますよ。どんなに食べても太らない!

 てことで、お肉に続きましてお魚の串焼きも大口開けて、あーん。

 んー? 臭みもないし、これは海の魚っぽいかな。さっぱりした鯛みたいな味だった。美味いなー。

 こういうのが売ってるってことは、もしかして海が近いのかなあ。現実だと海なんていつから行ってないんだか。

 よっしゃ決まり。

 ゲームの中で海を探そう。見に行こう。





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