「ヒャッハー、皆殺しだぁ!!」
翌日、仕事終わりの週末ってことで張り切ってゲームにログインした私は、さっそく昨日稼いだ? ゲーム内通貨で買い物をすることにする。
色々と謎すぎて意味がわかんないだけど、5400Gはたぶん大金。きっと何かは買えるはず。アバターはノーム(男)でも、中身は一応乙女なんだ。見るからに初心者装備っぽい茶色い地味ダサ服とか辛い。
てことで、服屋っぽいのを探して街を彷徨い歩くカロンくん……。
その時だった。
爆音とともに赤いエフェクトが天高く吹き荒れたかと思えば、それは少しずつ近付いて来るようで、私は音の方向を振り向く。
「ヒャッハー、皆殺しだぁ!!」
「ごふっ」
ちゃららら~ん♪
――カロンは死亡しました。
なんですと!?
文字と音声による念入りなアナウンスのあと、視界が切り替わって、死亡通告文字の後ろにいるふよふよした死に神がふへへへって笑っちゃってたりなんかして。
えええ……死んだし……。
って、何事ですか!?
え、今のって……もしかして辻斬りとかいうやつなの? 本当にそうなの?
視界に表示された「蘇生しますか?」に対して思考で答えて、何も起こらず首を傾げる。考え込むことしばし、このゲームが音声もしくは行動入力方式だったことを思い出して、「はい」を指で選択する。
荘厳な音楽が流れて、ぴかっとなって、私は元の場所に戻った。
うわあ、道沿いにありとあらゆる惨殺死体が転々と……焼けこげたり血を流してぴくぴくしてるし……てか、手足が千切れて断面までわりとリアルに作り込むとかどんだけなんだ、このゲーム。
がんばるのは明らかにそこじゃないでしょう、開発さん!!
ぴこーん。
――称号『最速の蘇生者』を獲得ました。
効果 生命+1
えええ……。
これって喜んでも良いのかな??
ちなみに、デスペナルティは30分。街エリアでは行動できるけど、静養のために街から出られないという設定らしい。
俗に言うところの死亡と復活を利用してのゾンビアタックを禁止するための措置であるようだ……いや、そもそも街中での戦闘を禁止するべきなんでは……まあ、良いか。
私が災難を忘れられるようにと努めていると、周囲の人々も次々と復活し始める。
あちこちでざわざわと相談し合っていて、何やら彼らの頭上には「クソザコ討伐部隊」なる吹き出し表示が散見し始めた。
「よし、情報きた! 南にいるらしい」
「西にも一匹いるってギルドの人らが言ってる」
「回復とバフが欲しい! 特に回復! 協力してくれる治癒術士か回復持ちはいないか!」
「魔法範囲火力募集! あいつらミンチにしてしばらく牢屋にぶち込んでやる!」
「マジでクソゲーすぎるだろ。いいかげん運営わかれよ……」
「あいつらのアジトってどこだっけ?」
「アジト言うてやるなよ。ギルドハウスって言うてやれよ。妖精同盟は確か……」
……んんん。まさに、カオス!
て、そういえばこのゲームのタイトルはカオスティック・オンラインだったね……さすがは私が愛するカオスティックです。
そんなこんなで過酷だったログイン二日目は、このあともさらに5回ほど死んだことによりいつまで経ってもデスペナルティが継続するという不治の病に苦しみながら終わったのでありました。
街中マップの三分の一くらいを歩くのに一時間とか……私の週末が……マジでクソゲーですね。カオスティックのタイトルに偽りはありません、大好きです(良いぞおもしろいからもっとやれ)!
~天の声~
称号『最速の蘇生者』
街から一歩も出ずに初ログインから現実時間で一週間以内にPKにより死亡することで獲得。
以降、称号については……意味深に沈黙(忘れてくれて良いです)。
どうでも良いことですけど、日本ではPKが流行らないらしいですね。
私的には人間模様が複雑化したり、濃い人がいたりしておもしろかったんですよね。広場で座禅してたアイドル氏は元気かな~。