暁姫ちゃんとは三度目の再会です
始まりましたよ、暁姫ちゃんとは三度目の再会です。
今回はさすがにムービーを見たい人はいなかったらしくて、ボスステージに突入するなり戦闘が始まった。
カロンくんは、開幕ダッシュで右手前隅に集合して、と。
うっし、到着した。ここで……あー、あれ? ここってもしかしなくてもあれだよね。不本意ながら、この角度からの景色にめっちゃ見覚えがあったりなんかしますよ。
密かにやさぐれた気分になっているうちに、暁姫を釣り上げたジロチョーが右手前隅に合流する。
ぴかっ、ぴかっとぶっちゃさんの範囲スキルらしきものが輝いて、カロンくんが硬くなったり強くなったりで強化される。
そんな中、私はやっぱり開幕は攻撃力アップかなって、情熱ダンスを踊り始める。
そこから始まった、槍でつんつん戦法……えーと。うわあ、なんぞこれ。
ジロチョーが注目スキルを使いつつもせっせと槍を動かして、つんつんする。
雲海さんは刀技で暁姫の体力ゲージを削って、たまに攻撃されては死にかけてぶっちゃさんに回復されている……カロンくんも攻撃を受けているけれど、雲海さんのように死にかけてはいない。
これたぶん、雲海さんよりもカロンくんの方が物理防御力が高いってことなんだろうな。
なるほど、フラミンゴ衣装の防御力は偉大だわ~。
ふふふ~ん♪ と呑気に踊っていると、暁姫の体力ゲージが半分になって、足元の赤い円陣と武器が出現。魔法火力勢の撃ち洩らした雑魚武器こと短剣がどすっとカロンくんに突き刺さった。
「おうっふ!」
痛いよ!?
油断しきっていたところに不意打ちでぴりっときて、変な声が出たし……ダンス中断しちゃったし……。
「! 来る。カロン、防御おね」
ぶっちゃさんのリクエストを聞いて、私は即座に防御力が上がる安全ダンスを踊り始める。
ぶっちゃさんがカロンくんの体力を回復して、範囲スキルで仰け反り防止効果スキルと防御力アップスキルを重ね掛けする。
その時だった。
暁姫の剣状になったドレスの裾がしゃきーんと真横に広がって、回転発射される。と、同時に雑魚武器が出現して飛び交い、皆の体力ゲージが見る間に減っていく。
だけど、ぶっちゃさんはこれにも動じない。
暁姫の攻撃を予測していて、詠唱待機していた範囲回復スキルを発動。スキル範囲から漏れていたらしいえみりー☆さん以外の体力ゲージが全快した。
ジロチョーが言ったとおりだったよ。ぶっちゃさんはすごい。これは、カッコいい。
ここでこの効果が欲しいっ! 回復して欲しいっ! と思うところでスキルを使ってくれる。少しくらいヘマをしても、ぶっちゃさんがどうにかしてくれるだろう、回復してくれるだろうという安心感がある。
そうこうするうちに、治癒術士の支援効果スキルの効果時間はどうやら40秒であったらしく、ぶっちゃさんの仰け反り防止スキル効果が先に終了する。
変わらず踊り続けるカロンくん。カロンくんのダンスの効果時間は63秒だ。運良く攻撃されてダンスが中断しなければ、まだまだ効果時間には余裕がある。
ゲームセンターなんかで見かけるパンチングゲームっぽい経験値アップの思い出ダンスとは違って、情熱ダンスや安全ダンスは一度踊り始めるとできることが限られてしまうのが特徴で……具体的に言葉にするならば、横移動が少ないがために立ち位置の調整が難しいのだ。
でもこれって、すごいことだよね。なぜといって、踊り子スキルの範囲と時間を予測して、利用することでパーティメンバーたちが戦闘を有利なものに持っていく……これは、踊り子スキルを理解していなければできない芸当だ。
かつてはジンギスカン協会のパーティで感じ取った感動を、私はここでも感じることができたことが、嬉しくなった。
治癒術士のバフ切れから10秒が経過したところで、ぶっちゃさんが再び範囲スキルで防御力アップと仰け反り防止効果を重ね掛けする。治癒術士のスキルは、効果時間40秒の再詠唱時間10秒ってことかな? 10秒の空白がスリリングだわ~。
と、ここでカロンくんの安全ダンスが終了した。
次に踊るのは……全ステータス+2の活力ダンスだろうな。正直言って効果は微妙だけれど、残りは経験値アップの思い出ダンスだけだからなあ。ま、気にしても仕方がない。ないよりはマシでしょ。
てことで選択の余地もなく、私は活力ダンスを開始する。
武器が飛び交い、スキルが炸裂する。後衛魔法火力の二人が派手なエフェクトや音とともに入れ替わり立ち替わり動いて攻撃して、雑魚武器を手早く処理していく。
暁姫自体はあまり強くないと言ったのは、あれは誰が言ったことだったのだろうか。
本日一回目のアタックで、アトラ最終ボス暁姫の体力ゲージが1分程度で半分を割り込んでいたことからもわかるように、二回目のアタックの展開はあまりにも早いものとなった。
視界右上のカウントを視認すると、ボスステージへの入場からもうすぐ5分が経過するというところで、暁姫の体力ゲージはすでに2割程度を残すのみとなった。
「1/5! たたみ掛けるわよ!」
えみりー☆さんの、指示が飛ぶ。
事前の打ち合わせでは特に言及していなかったけれども、「たたみ掛ける」ってことは意味は一つしかないはずだ。
滑るようにして暁姫の背後へと走り寄るえみりー☆さんとすき焼きさんを視界の端で捉えつつ、私は活力ダンスを中断し、満を持して使用可能状態になった情熱ダンスへと切り替える。
いけるかもいけるかもいけるかも!
単純な言葉しか吐き出さなくなった思考回路が暴走して、興奮と希望が入り交じって頭の中を塗りつぶす。
気が付けば、ぶっちゃさんは抜かりなく支援スキルを重ね掛けしてくれていて、仰け反り防止効果を得たカロンくんは万全の態勢で踊り始めることができた。
位置取りは――完璧っ!!
楽しいっ。
もう少しだけ長く……そんなことを考えてしまうほどに、目が眩むような刹那の瞬間に酔いしれた。この贅沢な時間が永遠に続けば良いと思うのは、勝手が過ぎるだろうか。
ジロチョーが注目スキルの発動後、手早く盾と片手剣へと装備変更して、ステージ中央へと踊り出て叫んだ。
「いっけえぇぇ!」
ジロチョーが得意とする片手剣での連続技が決まって、斬撃の効果音とともに必殺のスキルが華奢な暁姫の胴体へと叩き込まれる。
果たして暁姫は……崩れ落ちるように膝をついて、静止する。
そうして視界が切り替わり、アトラ遺跡最終ステージのクリアムービーが始まった。
『闇神よ、なぜ……妾は、友人が欲しかっただけなのです……』
横たわって目を見開いて血を流し続ける暁姫の傍らに、半透明の1ボスこと土塊人形の巨体が現れて、跪く。
『そなたは……』
続いて2ボスこと愛玩人形が現れて、暁姫の傍らに佇む。
『妾は……妾は……もう一人では、ない……』
寄り添う二体の人形に見守られる中、暁姫は呟いて動かなくなる。
こうして一人と二体の人形たちは、ひとかたまりの淡い金色の粒子となって霧散した。
だが、クリアムービーはまだ終わらない。
暁姫たちに入れ替わるようにして現れたのは、3ボス……通称ヘタレ貴族だった。
相変わらずどこか人を食ったような態度と出で立ちで、貴族めいた豪奢な衣装とステッキが嫌な意味で似合っている。
ヘタレ貴族の3ボス時での表示は「青年貴族」とだけあった。あらためて考えてみれば、少しだけ違和感の残る書き方だ。
ヘタレ貴族は気障な仕草で暁姫が横たわっていた辺りへと歩み寄り、靴底で念入りに踏みにじる。
『やれやれ、やっと身体が自由になった。忌々しい小娘めが。よくもこの私を縛り付けてくれたな。だが、それも今日までのことよ。愚かな人間どものおかげで私は自由になった。嗚呼アァ……闇神様……闇神様、私めは貴方様の忠実なる僕でございます』
どくん、と心拍音がして、ヘタレ貴族の細長い身体が不気味に揺れ動いた。
どくんどくん、どくんどくんどくん……。
少しずつ視界がブラックアウトして、何も見えなくなった。
ごぼっ。
真っ暗な中で不吉さを思わせるような音がして、しばらくすると静寂を切り裂くような派手なファンファーレっぽい効果音が鳴り響いた。
ダンジョン『アトラ遺跡』踏破達成!
暗闇に燃え光る文字が横走って、エフェクトが揺れ動く。
続いてクリア報酬の一覧が表示された。
闇神使徒 暁姫 討伐成功報酬
獲得経験値 300000exp
獲得金額 1000000G
ボーナスポイント 3
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ワールドピース ×1
暁のブローチ ×1
小石 ×33




