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「はい!」*




「アトラ遺跡最終ボスステージの四隅が、安全地帯になっているのは知ってるよな?」

 パーティ内会話設定に切り替わって、そんな言葉から始まったぶっちゃさんのお話だった。

 未攻略組三人は、真剣な顔をしてうんうんと頷く。

 前回の悲惨な白百合事件のせいで、私ですら知っているくらいなのだ。他の二人が知らないはずもなく、言葉を挟むことなくぶっちゃさんの話の続きを待っている。

「安全地帯は絶対ってわけでもないけど、他よりも安全なのは確かだ。これが、一つ目の重要ポイントな。次に、二つ目の重要ポイントだけど……このゲームでおれたちが装備できる武器は、種類ごとに攻撃範囲が設定されてることは知っているだろう? そこで、雲海さんとジロチョーさんは物理攻撃職だから、専業スキルは乗らないとしても槍を装備できるってことが重要になる」

「えっ、槍……?」

 ジロチョーが怯んだ様子で呟く。

「そう、槍。持ってないならおれが貸すから心配しなくていい」

「はい……」

「まず、ジロチョーさんはボスステージ突入後にスキルで暁姫を釣り上げて右手前隅へ移動する。おれ、カロン、雲海さんの三人も開幕ダッシュで同じく右手前隅に集結する。次に、ジロチョーさんと雲海さんは槍を装備して、安全地帯から暁姫を牽制しつつ通常攻撃をする。おれとカロンは物理攻撃職の二人に重なる位置で立って立ち位置がズレないように足止めして、全力で援護する。足元に出る赤い円は痛いけど、雑魚武器ほどじゃないし重なって出現することはないから、ゼロ距離でおれが回復できるなら致命傷にはならない。残りの魔法火力は、離れた位置から湧いた雑魚武器を高火力で焼き払う……余裕があるようなら暁姫の気を引かない程度に暁姫を攻撃する。今のところは、だいたいこれで攻略した人が多い。……誰か質問はある?」

「はい!」

 私は最速で挙手する。

「何だよ。カロン?」

「治癒術士のぶっちゃさんが、どうして装備できないはずの槍なんて物を持ち歩いているのかなー?」

「……カロンは……はあ。気が付くのはそこかよ」

「気になるもん」

「はいはい。答えたら良いんだろ。槍は、野良で攻略を手伝う時に便利だから持ち歩いているだけだ」

「ほほう!」

 クリアできなければパーティを抜ける。そんな厳しいことを言っているのに、さらりと「攻略を手伝うため」とか言っちゃうぶっちゃさんのことが私は大好きだ。

 私は思わず、にやぁと笑顔になった。

 にやつく私と入れ替わるようにして、ジロチョーからも手が挙がる。

「おれからも質問」

「どうぞ、ジロチョーさん」

「牽制役をおれだけにして、雲海さんは本職の刀のままじゃダメなんですか? その方が暁姫を引き付けられそうな気がするし、削るのも早そうに思うんですが」

「ああ……言われてみればいけそうな気も。ジロチョーさんは盾だから当然防御力は高いはずだし、おれと雲海さんも問題なさそうか……だけど、カロンが……」

「いやいや、坊主はたぶんおれよりも物理防御力が高いですよ。おれは、物理防御力控え目ビルドの火力盾だから……」

「えっ」

「てへっ」

 ジロチョーの暴露発言? でパーティ内の視線がカロンくんに集中したから、適当に愛想笑いをしといてみる。

 ちなみに、現在の装備はこんな感じ。


 カロン 踊り子レベル25

 体力375(+15) 魔力108

 物理防御力52(+50) 魔法防御力52(+30)

 物理攻撃力20(+2) 魔法攻撃力20(+30)

 活力54 生命62

 器用17(+11) 俊敏73

 知力9 信仰14

 幸運76(+40)


 武器1 リリカルステッキ 物理攻撃+2 器用+1 幸運+30


 武器2 -


 防具1 フラミンゴの聖人服 魔法攻撃+30 物理防御+50 魔法防御+30 回避率+5% スキル継続時間+5%


 防具2 -


 装飾品1 手先の指輪 器用+10


 装飾品2 白鳥眼の首飾り 幸運+10


 マント 絆のマント 体力+15


 アバター -


 乗り物 黄色いアヒルのおもちゃ(カロン専用アイテム) 移動速度+2


 ふふふん(ドヤァ)。

 カロンくんだって成長しているのですよ。

「カロンさんは、魔法火力に混じって回避行動をしながらダンスをするって手もあるんじゃないかしら。回復職ほどではないけれど、私たち魔法火力職にだって回復スキルはあるのよ?」

 これは、えみりー☆さんからの提案だった。

 ぶっちゃさんがえみりー☆さんに答える。

「いや、それだとさすがに暁姫が盾職のジロチョーさんから剥がれると思う。今回は魔法職の二人が高火力すぎるから……」

「あら、それはありそうね。ごめんなさい。余計なことを言ったわ」

「いや、いつものやり方ででクリアできなさそうなら、何回か試すのも良いかも」

「ぶっちゃさんてば、次がラストじゃなかったのー?」

「……カロン……」

 しまった、とばかりに顔を歪めるぶっちゃさんである。

「うひひ。だから私はぶっちゃさんのことが大好きよー」

 照れるノームちゃんは、どこまでもかわいいってものよ。

 つまり、ぶっちゃさんは何回か付き合ってくれる気がある上で、未攻略組三人がクリアできるように退路を断って気合いを促してくれていたわけだ。

 さすがは、ぶっちゃさんです。やりおるわ。

「そんじゃ、あらかた意見がまとまったようなので、おれと……あとは念のために刀で戦う予定の雲海さんも、ぶっちゃさんから槍を借りて再戦といきますか」

 ジロチョーが言って、全員が頷く。

 仕切り直しといこうか。





~天の声~

盾職の物理火力が高いということは、当然それなりの犠牲があってのことになります。

ジロチョーに関しては、物理防御力を犠牲にしての火力ですね。よく言う「当たらなければ問題はない」の一歩後ろで「死ななければ問題はない」がジロチョー氏です。ぶっちゃさんがんばれ。


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