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アトラ遺跡1ボス




 一度目にこのアトラ遺跡1ボスステージに入場した時は、ほとんどスルーパス状態だった。

 じゃあ二度目はどうなの?

 答は――。




 ダンジョンの少し拓けた場所に足を踏み入れると、前回と同様にストーリームービーが始まった。

 今回は、ジロチョー&すき焼きさんコンビが相手なら引け目なく遠慮もしなくて良いだろうと勝手に判断して、一回だけストーリームービーを視聴させてもらうことにする。

 最終の暁姫だけ視聴しちゃった私としては、実はわりと気になっていたんだよね……。


暁の思い出 土塊人形ハードクレイゴーレム

 ごごごごごご……とダンジョンが胎動して、円形闘技場のようなドーム型の石畳ステージが現れた。ステージの中央には、うずくまった褐色の巨人が震えている。

 それは、一人の少女の中から生まれ落ちた思い出の残骸だった。

 少女は主人のことを想い、丹念にそれを作り上げたはずだった。

 主人が喜ぶ顔を見たい、主人を笑顔にしたい……けれども、目的は叶うことなく忘れ去られて、やがて少女の思い出が意志を持ち、肉体を持つに至ったのだ。

『………………』

 それは語る言葉を知らず、伝える声を持たない。

 ただアトラ遺跡の奥底で眠る一人の少女のことを守るためにだけ、それは存在し続けたのだった。


 入場時の開幕ムービーが終わって、戦闘ミュージックに切り替わる。

 ――大きい。

 私が1ボス……土塊人形ハードクレイゴーレムを見てまず思ったのがそれだった。

 ジンギスカン協会の時は初めてのボス戦だということで、緊張と焦りとパーティメンバーが強すぎて巨躯を実感する暇もなく終了したのだけれども、今回は違う。巨人を巨人だと感じるだけの余裕が残されている。

 巨人の踏み込み一つで簡単にカロンくんが潰れてしまいそうだった。

 カロンくんがノームだから余計に大きいと感じるのかな? ノームの視点に固定されている私には、それを判断することができなかった。

 ジロチョーとすき焼きさんが勝手知ったる様子で配置につくのを横目に、ビビりの私は巨人から一定の距離をとって問いかけた。

「私は何をするのー?」

 あんまりにも二人が自然体だったから、迂闊に聞き忘れちゃってたよ。

 少しくらいは気を引き締めねば……。

「あ、そうだったわ。えっと、坊主の役割はだな。一回目はおれらの直線上以外の遠くからやり方を観察して、二回目からは適当に参加しとけばおけ! あとは、危なくなったらボスステージを出て仕切り直しでおねっしゃす!」

 さすがはジロチョーだった。説明が最初から最後までざっくりと適当だな!

 ジンギスカン協会や白百合のエリスさんとの違いがありすぎて、説明を聞いたこっちがびっくりだったわ。

 でもなんっか親近感がわいたのは、なぜだろう……。

「了解です!」

 きりっとした顔を意識して、でっかいボスから離れて全力で壁際へと逃げる。

 出来る限りの距離を置いて見守る構えだ。

「カロン、が、遠い……」

「ぶほっ」

 すき焼きさんが気が付かなくても良いことに気が付いて、それを聞いたジロチョーが吹き出す。

 右、左、右、左……後退しながらくねくねと踊るようにステップをするジロチョーは、器用に強大な敵の攻撃を盾で防いでは受け流す。

 褐色の巨人から繰り出されるのは、巨人と同じくらい大きな石鎚ハンマーから放たれる衝撃波のような単純攻撃ばかりだった。

 巨人が立つ直線上に赤いエフェクトが石畳を這うようにして走ると、ジロチョーはひょいと横にステップして巨人から距離を取り、タイミングを見て攻撃スキルを使っているようだ。ジロチョーがスキル発動直後にすき焼きさんが魔道書を開いて攻撃魔法を発動する。

 二人とも、相対する人は違えど何度となく繰り返してきた上での連携だったのだろう。

 初めてとは思えないような動きで――わ、ジロチョーが攻撃した。

 あれ? 盾騎士って……あれ??

 すき焼きさんほどではないけど、ジロチョーの攻撃でざくっと目に見えて1ボスの体力ゲージが削られたのは、私の見間違いですか?

 白百合のちょびさんもジンギスカン協会のジョバンニさんもこういうのはしていなかったような……これって、どういうことだろう?

 ジロチョーに詳しく聞きたいけど、今は我慢する。

 すき焼きさんもジロチョーの攻撃力に驚かされたらしくて、次の攻撃のタイミングがずれて連携が崩れる。

 でもそこは、すかさずジロチョーが立ち回って位置取りを調整した。

 ――上手い!

 原因はジロチョーでも、フォローできる自信があるから詳しいことを言わなかったんだって思えた。

「じろさん、ステキ!」

「もっと褒めろよ!」

 調子に乗ったジロチョーは、またもや何やらスキルを使って巨人へ攻撃する。

 ジロチョーの片手剣がスキル発動で白く光りを帯びて、派手なエフェクトが場を演出する。

 かーんと音がして、これも大きく1ボスの体力ゲージを削ることに成功した。

 ……が、その拍子にうっかりとカロンくんがいる方向に向かって巨人の攻撃ハンマーが振り下ろされる。

 石畳の上を走る赤い補正エフェクトが、レッドカーペットのごとくカロンくんへと真っ直ぐに線引かれて、直後、赤い閃光のような巨人の攻撃がカロンくんを貫いた。

「ぶへっ」

 あ、かわいいカロンくんに似合わない変な声が出た……あっれぇ? でも、死んでないぞ……?

 カロンくんの体力ゲージは8割ほど減っていて、でもぎりぎり一撃死はでなかったようだ。

 これは、もしかしてあれか。

 道化師の服が持つ謎の高防御力が発揮された結果だとか、そういう……。

 せっかくだし、カロンくんが攻撃しなくてもここでリリカルステッキを持って装備を完成させるべきだろう。

 イベントリから選択して、っと。

 出でよ、意味わからんレア装備よ!

「私は大丈夫! じろさん、すき焼きさんがんばー!」

 意味もなくリリカルステッキを振り回して応援したった。

 すると、もはやお約束のように挙動モーションのスイッチが入ったらしくて、壁際で無意味きわまりないダンスがお披露目されてしまう。

 私がうっかり事故しながらも無事をアピールすると、二人がなぜか真顔になってボスへと集中する。心なしか、さっきよりも動きが良くなったようだ。

 大活躍のジロチョーを相手に、すき焼きさんだって負けていない。

 構えた魔道書から放たれる極彩色のスキルの数々は、見る間に1ボスの体力ゲージを削り取っていった。

 さっきと違って一度ジロチョーの攻撃を見ているから、動揺もなく連携を崩さない。

 息の合った二人は、まるであらかじめ取り決めてあったかのように制限時間の30分手前で1ボスの体力ゲージを削りきり――ついに、褐色の巨人ががくりと膝をついたのだ。


 ボスステージクリアのクリアムービーが始まった。

 上からのカメラワークで回転しながらステージの中央に寄っていく。

 力尽きた思い出の残骸は再び膝をつき、その膝をついた体勢のまま少しずつ形崩れて、砂のようにさらさらと風化していく。

 崩れ落ちたそれはなおも暁色の足元に目を向けて、巨人は最期まで語ることなくじっと見詰め続けるのだった……。




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